こんにゃく指輪
1好きだった 冗談めかした春を告げ 夏を迎えるひとりのまま
2曖昧な季節のような恋でした ぬくもりだけでわかったような
3悲しさを表す言葉を覚えても 抱きしめてくれと言えないならば
4撫でてみた君を消しゴムマジックで そこにのこったぼやけた背景
5こんなんで喜ぶ君のことだからカーネーションが咲いているのだ
6街中が青信号に急かされる 追い越したって意味がないのに
7心に膜をはってみた 下手くそで気泡ができた剥がせば汚い
8汗をかくソルティライチのひとくちめ 細胞の川踊るせせらぐ
9研究者バイアスでググる 泥水ですすぐ脳みそ うんこみたいだ
10偽物でいいから君に並びたい まちがい探し過ちはなし
11ひだまりのホットケーキに寝そべった バターになって溶けてゆきたい
12生き方がわからないから殺してよ 音楽なんて才能みたいに
13釣り上げた言葉はもがく 戻れない心へ向う 風になるまで
14口ずさむ君も知らない英単語 ずっと消えない魔法の光
15さようなら沈む夕日は巡るだけ 君も誰かとまた出会うだけ
16あの夜に君が結んだ星たちを たまに結露で描いています
17毎日のログインボーナスあぶく銭 スクロールする快楽の波
18砕いた 心がいつか 拾われる 波打ち際で あなたの指で
19あなたが好きだと言ったぼくのまま 生きていたい、四ヶ月後も
20粗茶ですがみたいに添える 私ってブサイクですか?承認欲求
21抜け殻になりきれぬまま 産声は遠い耳鳴り頭にひび
22脳みそにたまる湿気で目はふやけ 二度寝が出来ずベトベトしてる
23オレンジだ 1%の果汁だけ その甘さだけすべてと思う
24擦り切れた吊り橋渡る子どもたち 赤い目をしたサメの交通
25はりつめた言葉は置けず引き出しに 改行したら伝わったかな
26光視症伏せ字が脳を這いずった 変哲もない網膜を見る
28開かぬようふんばり続けたドアノブがいかれちまって閉じ込められた
29シュワシュワと飲み干す日々に透明な取り出せなかった憧れがあり
30不自然に植林された陽だまりで空気がうまいと思ってしまう
31小うるさい赤信号を避けてたらテーマパークは閉園してた
32黒猫が電信柱の影になり 立ち止まっては二度見してみる
33おもむろに触れたニキビが大きくて 鏡を見たらささいなものだ
34道端に転がされてる虫けらを 助けたほうがよかったのかな
35この星の細胞になり駆け巡る 浮足立って酸素を運ぶ
36炒めれば野菜はしおれ艶が出る いらぬ不安も熱さえあれば
37耳たぶを噛み合う二人見つかって 背高草は抱き合っていた
38この街は更新されて廃れてく あの日のログは実行できず
39空腹と眠気に従え いらないよレイアウトとかダイエットとか
40フレットで星座を結ぶ 繋がりを私の座標で観測する
41街灯に蠢くものを見つめてる 同族嫌悪 蝕まれてる
42不自然なコントラストの夕焼けは 風通しの悪い窓際
43恋をする 憧れていたビー玉があなたがくれたビー玉になる
44よく噛めば甘みが出ると教えられ 甘みが出るまでかみ続けてた
45秋風を吸い込んだ穂が揺れている その優しさを噛み締めている
46朝食をしっかり食べる 日を浴びる 首をかしげるささやかな花
47久しぶり、はじめましてがとりどりに光を放つひだまりの中
48太陽が照りつける朝 エメラルド 輝く、駆ける、光の方へ
49死ぬまでに絶滅危惧種な感性を標本にしてあなたも殺す
50大至急 洗濯物を取り込んで 波打ち際を裸足で駆ける