ベランダの風
#短歌アルバム
前こんにゃく指輪
1ラーメンを食べに行きたいね、と言うと、どこに行こっか、と誓いを交わす
2ごみ捨ての網にかかった福笑い 草花たちと見つめ合ってる
3丁度いい息苦しさに溺れてる きらきらひかる歪な無邪気
4つもりだけ 注いだ水で枯れるなら 知らないままで空だけ見たい
5お布団で駄々をこねてもどうせまた明日が私の襟を引っ張る
6そういえば昨日君が生まれて今日はもやしの消費期限日
7懸命に眺める君の目に映る線香花火が燃えて、燃えて。
8いたずらに時間が過ぎる ハロウィンなんて甘味を忘れ
9夢見てた 急に寒くて目が覚めた もう少しだけ布団にすがる
10船を漕ぐ息継ぎをする夢の中 流れ着くのは無人の布団
11ちり紙やマスクが溢れ情けない心みたいだ私はいつも
12赤でしか描けなかった夕焼けを白紙にしたい心があって
13きっといる サンタクロースを経由して家族らしくなる親子のやりとり
14かつお節踊る大地に身を投げる真っ白にする罪悪感で
15歯に縋る甘ったるさを飲み下す 死体の君に口づけをする
16無意識な――が引かれたこの街で守られていた心があった
17生きてきた誰も知らずにそうやって都合よく泣く死なずに居てと
18空っぽの財布の中を笑い合う貧しいだけのただの友達
19天気予報ぐらいに君を信じてる晴れてもいいし雨でもいい
20いらないと応える余地をください ベタベタしてる心や飴より
21バカにしたB級映画 画面越しつまらぬ顔をあざ笑ってる
22ひねり出すマヨネーズだった僕らは 泥を食わざるを得なくなった
23壁掛けの心臓が鳴く教室 チャイムの音が緊張を割る
23ラピトリの搭載された瞼が反復してるWとS
24大切な思い出だから傷がある 愛しているからたまにぶつかる
25柔い空 筆圧感知の電線 水彩の暮れ ぼんやり耽る
26行きつけの美容室でのおしゃべりを君とするにはいくら掛かるの?
27分岐路を通り過ぎれば走るだけ 翼は燃える 耐える 還る
28歌うのが下手くそだからやめられない 生きているのもそれに似ている
29押しボタン、推し続ければ青になる あなたも笑う おそらく、きっと
30不良品 騙してくれよ誠実に きっと私が必要ですと
31世の中に恋をしている。クズだから〜、将来が〜、とか、冷めさせないで。
32今日は雨、うなだれているアスファルト ゴミ収集車の鳴き声がする
33石ころを家まで蹴ってドアの前 僕の部屋には君を置けない
34片想いが楽しいから こそこそと宛先のない恋文を書く
35夕空を泳ぐイルカはいたずらにぼくの唇だけを濡らした
36味のない飴を転がすだけの日々砕けないから溶けるのを待つ
37新月に響いた弦が照らしてる 君の歌声 孤独な人を
38たんぽぽが静かに照らすアパートのやさしい暮らしを知らないけれど
39暑いから夏だと言いきるあなたと短パンをはき そうめんを買う
40君宛に青空だけを切り取って きれいだね、が狭く寂しく
41夜中なら一人でだって渡れる 赤い視線にさらされなければ
42丁寧に暮れゆく空と滲む影ふやけた風が背中を揺らす
43フライング 人混みを割る おばちゃんの陽気なチャリは町のパレード
44青と白 幽体離脱 褪せる僕 片付けられぬ毛布にこもる
45二番線 冷めた寝息を抱いている 地上を目指す使命を忘れ
46来週が寿命だったら寂しいと鳴けるのかもな 叫べたかもな
47朝焼けに僕の亡霊を引きずって何もできずに漂白されろ
48どれだけ月に祈ろうが太陽は成仏なんてさせてくれない
49思い出の車輪をこいで口ずさむ ラムネの空とわたがしの雲
50この壁は真っ白だった今はただ白いペンキを重ねてるだけ
次明日カセット