こはぎちゃんとお茶しませんか?短歌・歌人紹介
https://gyazo.com/02883ae9826f88a7659ff10b50ac9e97
取り上げる本
日時:12/1(火) 20:00~
VCでやるよ
ざっくり
千原こはぎさんは、イラストレーター・デザイナーを職業としており、その一方で中学生の頃からおばあちゃんの影響で短歌に興味を持ち創作も行ってきました。 このちるとしふとには、イラストレーター/デザイナーとしてのOnのこはぎさんと、ひとりの恋をする女の子であるOffの姿のふたつが描かれています。
読むとなんだかこはぎちゃんと呼びたくなるような、親しさを感じられる一冊です。
作品紹介
2番線ホーム
おかえりと言う人のいない毎日にまたひとつ増えてしまうぺんぎん
殴られた方が笑ってはいなければいけないらしい沁みろサイダー
それはさておき
春いまだ遠くひとりのリビングでわたしの旬はわたしが決める
結婚はできない派でなくしない派でそれはさておき買う抱き枕
Ctrl+Z(アンドウ)
一本の髪のラインを引くために何度目だろうこのCtrl+Z(アンドウ)は
誰ひとり気づきはしない0.2ptフォントサイズを下げる
保存してないイラレと凍りつくわたし一瞬で失くす四時間
いつの間にか夜になるから黄昏を感じることもなく生きていく
息を吐く、息を吸う、席から立って、歯を磨く 人間であるため
触れないドア
ぺたぺたぺたカツカツカツと並ぶ音 あぁ女子力の差というやつか
こいびとととりあえず呼んでいいですかほかの呼び名が見つかるまでは
スカートを汚すシーソーいつだってわたしばかりが好きなんだった
宇宙語
かなしさの逃げ道としてびりびりとストッキングを裂きながら履く
家族席で君と牛丼食べている家族になろうと言いそうになる
内耳の雨
息白く見知らぬ駅で待っている わたし、だいじにされてなかった
きれいな声で
五杯目となるカプチーノ ファミレスでさよならなんてやめてください
この夜をずっと覚えてますように一番きれいな声で、さよなら
繭
濡れそぼる舗装道路の懐かしい匂い わたしね、ひとりになった
もう過去になるものばかり抱き寄せてベッドの隅で繭になりたい
いつからか蓋が開かない箱がありたぶん開けたら壊れるわたし
笑っておいた
「うちの子も絵が大好きで」「そうですか」なりたい人であふれる世界
「どうしたらなれますか」には曖昧に運ですねって笑っておいた
美容院のポップはつらい 誤字脱字、センター揃えにするなよそこは
ジャムの壜
「よく笑うひとなんですね」笑わせてくれるひとから言われてしまう
途切れない会話(おかしい)人見知り(おかしい)こんなに笑う
しゅわり
驚いた顔も知りたくなったから白いレースのスカートで行く
ち、よ、こ、れ、い、とで追い抜いて見慣れない君のつむじをきれいと思う
S音の苦手なひとの告白がしゅわりと溶けてゆるむ耳たぶ
ほんとうにわたしでいいの下顎骨のラインを異常に愛するような
星のピアス
今わたし無敵なんですこのあいだもらった星のピアスをつけて
傘を待つ
シロナガスクジラに乗って布団まで運ばれている夢を見る夢
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おかしな名前
手を繋ぐ、歩く、言葉を交わし合う かけらかけらを奇跡と思う
今わたしぜんぶに満ちるしあわせのきっとかけらも伝えていない
宇宙に雨を
すきすぎてきらいになるとかありますかそれはやっぱりすきなのですか
癖
そうこれは癖です近付き過ぎたあとそのぶん離れようとする癖
絆創膏
距離を置く作戦実行中ですが月がきれいで話がしたい
スカートばかり
「終わったら連絡する」のひとことできみの特別だと自覚する
きみに会うときはスカートと決めていてスカートばかりはきたい日々だ
失礼なことばかり言うふたりです「いぬみたい」「くまみたい」ラッコだ
ペンギンのブックマーカー二つ入り半分こして記憶を宿す
香水はつけない肌をつよくつよく擦り寄せきみの匂いがほしい
うぶ毛のような
「吐きそうなくらい会いたい」対立の果てにあなたが絞り出す音
あいたいとせつないを足して2で割ればつまりあなたはたいせつだった
おしまいはいつも「じゃあね」と言うきみに「またね」と返す祈りのように
春のひなたに
なんにでも好かれてしまうこいびとの眠るまぶたに集うひだまり