「お父さんの娘」
IHIホームページ 空想ラボラトリー
http://www.ihi.co.jp/brand/laboratory/story_11.html (waybackmachineで当時のサイトにリンク、激重注意)
父親の開発したシールドマシン♀が意思を持って逃げ出し、シールドマシン♂で追跡させたら捕まえたものの、子供が産まれて広大な地下空間が出来た、どう利用しようか、という子供向けの極めて平易なSF
非常にわかりやすいながらも、どこか円城塔らしさが漂う作品
わかりやすいところだと、台詞回しが完全に円城塔
題名も、姉(あるいは妹)じゃなくて「お父さんの娘」とするあたりとかも
明らかに子供向けのSFなので、この作品をもって円城塔の作風を論ずるのは無理があるが、それでも男女というモチーフとそれらから生まれる子を扱うというのは、他の円城塔作品とも何か共通するところがあると思う
同性愛、異性、生殖、個体の再生産:「捧ぐ緑」
父、家族:「良い夜を持っている」
姪、叔父:「これはペンです」
男女と家族なんて任意の文学者が書くでしょという説はまあそうなのだが、円城塔の興味は何かずれていると思う
個体の再生産、自己に最も近いものを世に送り出す、自身の一部を受け継ぐものと自身がコミュニケーションをとる、雑に言ってしまえば生物学的な自己言及風構造として親子を捉えるというのは、従来型の家族観や生命観に基づく文学のアプローチは明確に異なる
表向きは結局似てくるのだけど、根底が違うから中の論理が結構不思議で、それが円城塔っぽさになっているのではないか