国語の指導観
概要
本単元では、大量のトライ&エラーと明確なフィードバックを行いながら正しく読む力をつけつつ、その正しい読みに基づいた自力解釈をできる環境を用意しながら、子供たち一人一人が、それぞれの場所から物語に読み浸ることができる構造の構築し、学習の深化を図る。
正しく読めるようになるために。
技術の習得に必要なのは①学習者によるトライアンドエラーと②指導者によるフィードバックである。学習者が大量にトライアンドエラーをし、指導者が正確にフィードバックをすることで学習者は技術を習得する。
これは「文章を正確に読む」という技能の習得においても同じことが言える。
ところが一般的な国語科の授業をみると、一斉授業において誰かを指名し、誘導的に答えに導き、「正確に読めた」としている場面を多く見かける。その時、少なくとも“当てられていない児童”が読めたかどうかは全く判断できないし、当てられた本人すら誘導的に答えを言わされているだけで、読めたとは判断し難い状況がある。子どもたちの“トライ”は指名されたその時だけであり、エラーは自動的、誘導的に修正され、どの点がずれていたかなどのフィードバックは得られない。もしくは得られてもその時教師とやり取りしたその子だけである。これではクラス全員の「読む技術」は向上しない。
そこで本授業では、「文章を正確に読む」ことを「微視的な正確さ」と「巨視的な正確さ」に分け、前者は「複数回の形成的小テスト+学習者同士の学び合い」によって、後者は「教科横断的に行う、論理構造図を書く活動」によってその育成を図る。 豊かな解釈を楽しめるようになるために。
自力解釈は、正確な読解に裏付けられていなければならない。想像力に頼った解釈は無限に拡散してしまい、自力解釈の楽しさを薄れさせ、学習者同士の対話も浅いものとしてしまう。よって、自身の解釈を構築する活動は、正確な読みを確立する延長線上に設定されていなければならない。
その点において国語科の教科書に掲載されている「てびき」は、表面的な問いから徐々に本質的な問いへと接続されている事が多く、学習をする上でとても有用である。
そこで本単元では、「正確な読み」の程度を測る小テストに合格した児童から順次、教科書の手引きに掲載された問いに答えるという活動に移らせる。ここで使用させるのは、読むときにも使ったQNKSと言う考え方である。今回は、問い(Q)を自分で考え、それに基づく情報を抜き出し(N)、そしてそれらの関係性を構造化し(K)、自分の答えとして整理(S)していく。
自分の答えを他者に説明したくなったり、もしくは自分の解釈の他の解釈が知りたくなったりしたときには、問いを友達とシェアし考え合うことができる環境も用意する。教室の前にはワークスペースがあるので、探求的に友達と話し合いたい場合は、教室の外のワークスペースでローテーブルに集まり話し合いを始める。
対話の進行を段階的に示し、自覚的に対話をすすめられるよう、QNKSマップというものも教室に掲示する。
対話では答えを磨くことに価値をおくような指導を心がける。自分が出した答えを何度も問い直し、更新していく過程にこそ、自力解釈の楽しさがあると考えるからである。 教科書の問いに向き合う中で、自身の中に更に大きく深い問いが発生することもある。問いを捕まえるという意識をもたせ、自身の問いに向き合うことも当然、推奨していく。 ※汎用性
この指導観は国語科(もしくはそれ以外も含めて)どの教科の指導案を書く際にも適用できる。汎用的な知識技能を用いて指導するのだから、「指導観」がどの教科にも適用できることは当然である。