QNKS実践(社会導入)
社会科の教科書を自力で読むという活動にQNKSを取り入れた。QNKSを初めて意識的に使うにあたって、社会科が最も適していると考えたからである。社会科を導入の科目として選んだ根拠は3点ある。
1つ目は、見開き2ページ分で話題が完結している点である。文章読解にQNKSを活用する際には、Sの段階において要約文として自身の理解内容を外化させる。そのとき、理解すべき内容が多すぎると、入門期の子どもたちには認知不可が高すぎる。情報構造としてまとまっていて、かつ、そこに含まれる情報量がそれほど多くないもの、と考えると、社会科の教科書の見開き1ページ分が適当であると判断した。
2つ目は、抜き出す(N)すべき単語が既に太字で表示されている点である。QNKSで文章理解を目指す時、始めのQは「この文章には何が書いてあるのだろう」というもので良いと述べた。それに続くN(抜き出し)では、Qに答えるための情報を探し、抽出する過程となる。言葉で言うのは簡単であるが、未知の文章を目の前に、そこから重要な単語を抜き出すという活動は子どもたちにとって難しい活動である。社会科の教科書ではそのページでキーワードとなる単語が既に太字で示されているため、(N)抜き出し過程は、ひとまず太字をノートに書き出せばよいだけの活動となり、その活動の難易度が一気に下る。特にこういった活動が苦手な児童にとっては、とりあえず形式的にでも過程を進められるような環境を用意することは大変重要である。
3点目には、単元全体を要約するときにも、話題ごとに小見出しがついているので、話題の流れを追いやすいことが挙げられる。社会科で最終的に目指すのは単元全体の要約である。見開き2ページの要約がスムーズにできるようになってきたら、単元をまるごと読んで要約するという活動を仕組みたい。そのときにも社会科の教科書の作りは支援的に働く。社会科の教科書では、見開き2ページで話題がまとまっているだけでなく、話題ごとに小見出しがついている。これは、単元全体を要約しようと思った時、その話題のまとまりをわかりやすくするガイドの役割を担う。全体を見渡して論の流れを作ろうとするとき、ひとまず小見出しを抜き出して(N)、論の流れに沿って組み立て(K)れば、大まかな展開を読み取ることができるのである。
このように社会科の教科書は、自力読みをする際に支援的に働く構造を多く含んでいるので、QNKSの導入には社会科を選んだ。
基本的にはQNKSの流れに沿って、内的表象を外化しながら理解過程を一つずつ進行させていく。感覚をつかめない段階にある児童は、先述したとおり、太字や見出しを中心的に抜き出して組み立てていった。(左から順番に、N、K、Sの表象)
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慣れてくればNとKを同時にやる姿や、、Kの段階において単純にキーワードを立てに配列するだけでなく、論理構造に合わせて分岐させるなどの工夫も見られた。
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導入からすべての単元においてQNKSで要約するという活動を取り入れたことによって、児童が書く図(とくにKの段階の構造図)は精緻化していった。
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このように、社会科においてQNKS各過程の役割やコツについて一通り学んだ後、国語科へと展開した。