プロジェクトと身体
人間は炭水化物、脂質とともに、タンパク質を摂取しなければ生きていかれない。なぜか。ヒトのカラダは、水分と脂質を除くとほとんどがタンパク質でできているからだ。筋肉・骨・臓器・皮膚・毛髪・血液など人体の大部分はタンパク質で構成されている。筋肉は水分を除くと約80%がタンパク質である。コラーゲンも、ヘモグロビンも、タンパク質である。
身体のかたちを作っているだけでなく、異物の排除や化学反応の支援、有価物の選別等、情報処理の役割を果たしている。
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抗体(Antibody)
抗体は、ウイルスや細菌などの特定の異物と結合し、体を守る働きをする
酵素(Enzyme)
酵素は、細胞内で起こる何千もの化学反応のほとんどすべてを行う。また、DNAに組み込まれた遺伝情報を読み取り、新しい分子の形成を助けるものもある
メッセンジャー(Messenger)
ホルモンのような、メッセンジャーと呼ばれるタンパク質は、異なる細胞、組織、器官間の生物学的プロセスを調整する信号を伝達する
構造形成(Structural component)
小さなところでは細胞に構造を与え、支えているほか、大きなところでは体全体を動かすためにも働いている
輸送/貯蔵(Transport/storage)
原子や小分子と結合し、それらを細胞内や体全体に運ぶ
引用
食品中に含まれるタンパク質は、体内でそのままでは利用することはできない。タンパク質は体内で消化されてアミノ酸に分解される。そして、いったん肝臓におくられて蓄えられ、肝臓からアミノ酸が体の中の各組織に送られる。そして送られてきたアミノ酸から体に必要なタンパク質が合成される。
https://gyazo.com/336811d7295f6ca226e2bc7a9ab2fcda
引用
milsil44号によると、ヒトの体内には10万種類以上のタンパク質が存在しているという。(自然界全体では、実に100億種類を数えるらしい)
タンパク質の働きはすごい。milsil22号に紹介されていて知ったのだが、体内で生産される20個ほどのタンパク質によって24時間を刻む体内時計が運用されているという。
正確に言うと、8時間ごとに朝、昼、夜のスイッチを入れることで、24時間を表現している。
これらは化学反応である。化学反応は通常温度により反応速度が変わるわけだが、研究の結果、関係する一部の酵素は温度変化を受け付けなかったという。
https://sys-pharm.m.u-tokyo.ac.jp/erato/images/research/body_clock-image03.jpg
緑→スイッチを入れる制御因子
赤→スイッチを切る制御因子
引用
タンパク質を構成するのはアミノ酸であり、それはたかだか20種類程度である。これらを組み合わせる設計図が遺伝子であり、細胞内のリボソームと呼ばれる器官で組み立てられる。
https://gyazo.com/044e00adbb0e21ffdb5137f32b786c3a
引用
酵素もまたタンパク質である。酵素の役割は、触媒、ということである。触媒とは、そのもの自体は変化せずに、適合する化学反応において、その反応のスピードを上げる働きのことである。
酵素以外でも触媒と呼ばれるものは世の中にたくさんあるわけだが、特に酵素には2つの大きな利点がある。1つは、体温程度の低い温度で反応を進みやすくすること。もう1つは、基質特異性と呼ばれ、複雑な反応を間違えずに適合する物質のみに作用する仕組みである。
https://www.forest.rd.pref.gifu.lg.jp/rd/shigen/pict/0702grz.jpg
ホルモンは化学構造から以下の3種に分類される。
①ペプチドホルモン 〔 peptide hormone 〕
アミノ酸がペプチド結合でつながったトリペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチドがある。アミノ酸の数は最小の3個からタンパク質の大きさに相当する40個以上まである。
②ステロイドホルモン 〔 steroid hormone 〕
コレステロール cholesterol を骨格にもつホルモンで、副腎皮質ホルモン corticoid と性ホルモン sex hormone がある。
③アミン、アミノ酸型ホルモン 〔 amine- or amino acid-type hormone 〕
アミン(-NH2)型ホルモンとしてはアドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどのカテコールアミン catecholamine がある。
https://gyazo.com/05fc35bf15b4c569db2147077809005e
https://gyazo.com/628b45c43d9c4667648f5d5427f84d1d
受容体もまた、タンパク質でできている。
細胞膜で働く受容体タンパク質は、細胞外の様々な情報を受けて、その情報を細胞の内側へと伝える。膜受容体は構造と機能に応じて、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)・イオンチャネル連結型受容体・酵素連結型受容体などに分類される。
GPCRは刺激を受けて細胞内の3量体Gタンパク質を活性化することで、cAMP・Ca2+濃度の増減など、いくつかの細胞応答を引き起こす。ヒトは約800種のGPCRを持っており、光・匂い・味などの感覚受容を担うほか、神経伝達物質やホルモンを受けとることで、細胞間・臓器間のコミュニケーションを司っている。
GPCRは薬の標的分子としても主要な位置を占めており、現時点で約30%の低分子薬がなんらかのGPCRをターゲットとしている。
こうして見ていくと、生命活動とは、タンパク質同士の壮大な相互作用だったということがわかってくる。驚くべきことに、その相互作用の最小単位は、カタチとカタチの組み合わせなのである。生命活動(プロジェクト、複雑、変化、多様、予測困難)が、純粋な意味における機械的な運動(ルーチンワーク、単純、繰り返し、線型)の(気が遠くなるくらいに膨大な)集積の結果である、ということには、なんだかとても不思議な感動を覚える。
またこうした世界観は、実際的なプロジェクト活動の理解においても、有意義であるようにも感じる。プロジェクト運営とは、人間同士の集まりをひとつの事業体として組織化することだからだ。
たとえば酵素のことを考えると、介在価値、という言葉を思い出す。プロジェクトマネージャの価値とは、介在価値である。自分自身が何かをするわけではない。誰かと何かが出合い、反応するのを助けるだけである。
受容体のことを考えると、プロジェクト組織にも概念や事象に対する感受性がある、と、アナロジーできる。プロジェクト組織は、受け取る現象や情報から必要の有無を選別し、あるものは取り込み、活かす。プロジェクト組織に属する一人ひとりの人間は、プロジェクトの受容体である、と言えそうだ。