第275回例会「競争を超える卓越性」
#例会
告知ページ:【11月1日(土)西新宿】「大谷翔平は長嶋茂雄より偉大である」哲学道場例会【275回】
開催日:2025年11月1日
発表者:ふかくさ
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コメント
ふかくさ「今回は『競争を超える卓越性』について発表した。著名な連続起業家であるピーターティールの『創造的独占』の哲学は経営学(=経営の科学)という再現可能性を目指すサイエンスでは扱えない起業家のアート、すなわち歴史的に二度とは現れないイノベーションという一回性を扱っている点で哲学的であり、ティール自身が哲学を学んだルネ・ジラールの『模倣的競争』概念へのアンサーだと解釈している。ティールのこのような理論はビジネスや自己啓発として、何よりもティール自身が成功者であるが故に読まれているが、果たしてそれだけ(=成功者の後付け自己正当化)に留まるものなのかどうかを今回試してみたところである。/適用対象としてスポーツ哲学における大谷翔平という現象を選んだのはほとんど気まぐれであるが、プロ野球という、言わばスポーツの内在的善と商業性とが衝突する現場での『大谷翔平』については、ティールの哲学が他徳倫理、特にマッキンタイアの内在的善(ここでは野球における善)vs外在的善(ここではプロ野球の商業性)のような対立軸を無効化し、むしろ内在的善のために外在的善を従えさせることを認めるために適切だろうと考える。というのも、野球は本質的にチームスポーツであるにも関わらず、年俸という金銭的報酬はメンバー個人宛に支払われるという契約のあり方はそもそも葛藤的なものであったはずだが、大谷は自分自身の契約スキームを工夫することによって、自分個人の高額契約とチームビルディングとを両立させるという創造的な手を打てたからである。これはマッキンタイアのような古典的かつ保守的な枠組みでは解釈しきれないとみている」
Syun'iti Honda.icon 「発表者は本ページの 参考資料 に記載してある二つの原稿を用意しており、実際に発表されたのは B_競争を超える卓越性.pdf でした。その内容としては、野球選手である大谷翔平氏の活躍とその特徴的な報酬の支払い契約を、実業家であるピーター・ティール氏の「創造的独占」という観点から解釈するというものでした。ティールの「創造的独占」とは、イノベーションによって他者と競合しない全く新しい分野を拓くことですが、大谷氏はその類まれな才能と鋭い洞察によって二刀流という他にない新しい価値を創造し、さらに契約金を後払いにすることでその持続を可能したというのが主張の要点だったと理解しています。他にも創造的独占から競技を再考することによって拓かれる哲学的論点が論じられており、新たな論考の起点となる発表でもあったと思います。」
hiropon ティールが出てくるところに驚きがある。実業界では大活躍している人だが、哲学者としてはノーマークではないか。
参考資料
発表用原稿PDF
A_大谷翔平は長嶋茂雄より偉大か.pdf
B_競争を超える卓越性.pdf
参加者
エリィ
Syun'iti Honda.icon Syun'iti Honda
谷口一平.icon 谷口一平