物性化学
授業めも
物質の多様な構造、性質および反応を理解するための、基礎的な化学の概念、理論を具体的な化合物を例にして学ぶ。以下の項目とその関連事項を内容とするが、教員により順序や重点の置き方に少し違いがある場合もある。
1.多原子分子の構造
ルイス構造と分子構造、共有結合の方向性、混成軌道
2.パイ結合の化合物
共役二重結合、共鳴、ベンゼン、芳香族化合物
3.パイ電子と分子軌道
パイ電子近似、LCAOMO、変分法、HOMOとLUMO
4.配位結合の化合物
Lewis酸・塩基、金属錯体と配位結合、遷移金属錯体とd軌道、結晶場 分裂
5.分子間相互作用と凝集系、生体高分子化学
van der Waals力、水素結合
6.結晶の構造と結合
最密充填、単純格子、イオン半径と結晶構造、金属と半導体
7.イオン結晶
格子エネルギー、Madelung定数、Born-Haberサイクル
科学現象とは、物質が織りなす様々な変化のうちで、エネルギーの移動を伴いながら物質を構成する原子の組み替えや結合様式の変化によって生み出される物質の質的変化を指す。
第1章 元素の科学
第2章 化学構造式と分子構造
化学構造式は原子の繋がり方を示した記号である。これは単純であるにも関わらず、多くの情報を内包しており、化学の共通言語として極めて重要な役割を果たしている。本章では、化学構造式の書き方を解説した後、化学構造式を用いた考え方に基づいて、分子の立体構造および反応性に付いて説明する。
第3章 分子の化学結合と分子軌道
原子の種類は100あまりだが、それが化学的に結合してできた分子は1000万種類以上におよび、現在も新しい化合物が合成されている。このような分子の化学結合はどのようにして生じるのであろうか?本章では、まず分子の形とそれを規定する対象性について述べる。次に最も簡単な系である水素分子イオンの化学結合についてMO法の立場から説明する。
第4章 π電子を持つ有機化合物の分子軌道と性質
エチレン、ブタジエンやベンゼンなどの不飽和化合物は、エタンやブタンなどの飽和化合物とは性質が著しく異なり、反応性に富む。その原因は不飽和化合物の分子が動きやすいπ電子を持っていることにある。
第5章 配位結合の化学
19世紀末、遷移金属イオンに複数の原子や分子が結合した錯塩と呼ばれる物質がその美しい色で注目を集めたがその構造や結合の仕組みはわかっていなかった。その後配位子場理論によって配位結合の本質や遷移金属錯体の色の起源などがほぼ完全に理解できるようになった。
第6章 分子の異性体
同じ分子式をもち構造が異なる化合物を異性体という。異性体は構造が異なるため、それぞれ異なった物理的、化学的性質を示す。有機化合物のみならず、金属錯体においても、中心金属に配位する配位する配位子の違いによって異性体が生じる。
第7章 化学結合と結晶構造
原子や分子が集合して固体を作る場合、原子や分子が規則的に整列した結晶とガラスのような非結晶とがある。結晶の4つの重要な形式は分子間力で凝集した分子結晶、金属結合で凝集した金属結合結晶、共有結合で凝集した共有結合結晶、イオン間の静電引力で凝集したイオン結晶である。ここでは、分子結晶以外の結晶の構造とその結合性について学ぶ。
第8章 分子集合体とその物性化学
分子間力は独立した分子の間に作用する、近距離でしかも弱い相互作用である。分子間力によって凝集した構造体を分子集合体と呼ぶが、この中で最も緻密なものは間違いなく生体であろう。
第9章 発展する物性化学