高校化学のオリジナル教材
塾講師で化学の教材を作ってたときのまとめ
ちょこちょこ大学の範囲が入っています
(厳密には4つだけど、高校範囲じゃ絶対でないからここの議論に時間かけてもしょうがないな・・・って思いながら)〜は3つです。みたいに言い切っているところもあるのでご容赦ください・・
生徒にはわかりやすいと好評だった(?)
高3までは数学・物理に比べて興味なさすぎて一夜漬けで赤点スレスレを漂ってたけど、シュレディンガー方程式で電子軌道がわかるらしい→電子(電子軌道)の性質から教科書の暗記事項が導けるらしい→化学って実質物理じゃん(?)うおおおってなって、3ヶ月ぐらい集中して勉強したら学年3位がとれた
理論化学
モルが主役、電子について学べば見通しが良くなる
物質の成り立ちや結晶構造や気体や溶液や熱化学や反応速度や化学平衡や酸と塩基や酸化還元や電気分解
無機化学
化学反応式が自力で作れるようになれば終わり
化学反応は酸塩基反応、酸化還元反応、沈殿生成反応、錯イオン生成反応に分けられる
有機化学
有機化学の最終目標は構造決定問題を解くこと。
どういう物質であるかは構造式から推定できるので、いろんな実験をして構造式を求めたい。
有機化合物には疎水性の部分と親水性の部分があるのでこれらを利用して混合物の中の各化合物をいかに分離していくかがポイント
酸化還元反応がメインなので電子についての性質を理解することも重要である
理論化学
化学での計算は、そのほとんどがモルに関する計算問題である。というのも、モルが反応式の主役をになっている。
結局物質の性質のほとんどを決めるのが原子の外側にある電子。電子について深く理解することで、暗記から解き放たれる項目が非常に多い。
・電子のポイント
① 電子の入る順:典型元素と遷移元素の性質の違いがよくわかるようになる
② 最外殻電子数:最外殻電子数が同じであると原子の性質が似てくる
③ 閉殻は安定する:18属の電子配置は安定している
④ 電気陰性度:物質の成り立ち、性質に大きく関係する数値
⑤ 電子は広いところが安心する:電子は広い軌道に存在する方が安定する
① 電子の入る順
実は電子は電子殻に入るのではなく、2個ずつセットで電子軌道に入っていくのです。そして電子の入る順番は、K⇨L⇨Mとまでは普通に入りますが、M 殻の途中でN殻の一部に入っていくのです。
② 最外殻電子数が同じだと元素の性質は似てくる
反応に関与できる電子は最外殻電子であるので、その数が同じなら、元素の性質が似てくるのは明らか。ただし、18族は安定しているので最外殻電子は反応には関与できない。つまり、価電子数は0。
遷移元素は3族から11族は最外殻電子数が1〜2個になっているとわかる。つまり、遷移元素の最外殻電子数はほぼ同じであるので、横に性質が似てくる。
③ 閉殻(18族の電子配置)はきわめてエネルギー的に安定する
18族元素のうち、最外殻電子数がHeだけが2個で、後の元素は8個である。ただし、18族元素の価電子数はいずれも0個であることに注意。一般的に、典型元素はエネルギー的に最も安定な18族の電子配置を取ろうとする。これが物質の成り立ちの原因でもあり、物質の反応の原因ともなる。
一般に原子がイオンになるときは、閉殻の電子配置になるように電子を授受して陽イオンや陰イオンになる。典型元素の原子はイオンの価数はほぼ決まっているが、遷移元素の原子は様々な価数の陽イオンになりやすい。
④ 電気陰性度
電気陰性度は、イオン化エネルギーと電子親和力の平均値であるので、まずはイオン化エネルギーと電子親和力について学ぶ必要がある。
イオン化エネルギー:1モルの原子から電子を1モル取り去って、1価の陽イオンにするのに必要なエネルギーを第一イオン化エネルギーという。最大値を示す元素はヘリウムである。1価の陽イオンを2価の陽イオンにするのに必要なエネルギーを第二イオン化エネルギーという。
電子親和力:1モルの原子が1モルの電子を受け取って1価の陰イオンになるときに放出されるエネルギーを電子親和力という。最大値を示す元素はClである。
電気陰性度:ある原子が結合に使われている電子対をどれだけ惹きつけるかを数値で表したものを、その原子の電気陰性度という。電気陰性度は、その値が大きいほど陰性が強いことを示す。金属か非金属かは電気陰性度で決まっている。
Cf.金属のイオン化傾向
イオン化傾向:単体の金属が水和イオンになるのに必要なエネルギーに対応する数値。この値が小さいほどイオン化傾向は大きくなる。簡単に言えば、イオン化エネルギーは気体の金属から電子を奪うのに必要なエネルギーであり、イオン化傾向は固体の金属から水中で電子を奪うのに必要なエネルギーである。
・物質の成り立ち
金属原子は電気陰性度が低いので、電子を放出しやすい。放出された電子は自由に移動できるようになり、クーロン力で金属イオン同士を結びつけていき、金属単体ができる。
電子を放出しやすい金属原子と電子を受け取りやすい非金属原子との間で電子のやり取りがあり、結果、生成した陽イオンと陰イオンの間でクーロン力により結合していき、イオン化合物ができる。
電子が欲しい非金属原子同士の間では電子を出し合い、共有することで、閉殻の電子配置となり、安定な分子ができる。
⑴ 金属
金属結合・・・自由電子+金属イオン
金属原子が電子を放出する際にはイオン化エネルギーの分のエネルギーの損失があるが、放出された電子は広い電子軌道を自由に移動できるようになるので、そのぶんのエネルギーの安定さが金属単体の安定さをもたらす。
1. 1、 電気伝導性、熱伝導性が高い
2. 2、 延性・展性が高い
3. 3、 金属光沢がある
4. 4、 還元力を持つ
5. 5、 自由電子の数が多いほど金属結合が強くなる⇨融点、沸点、密度が高くなる
⑵ イオン化合物
1. 1、 硬いがもろい
2. 2、 電気伝導性・・・個体状態ではないが、液体、溶液状態ではある
3. 3、 融点・・・イオン価数の掛け算に比例、イオン間距離の二乗に反比例
⑶ 分子
非金属原子は電気陰性度が高く、クーロン力による結合は不可能であるが、閉殻は安定するので、電子を出し合うことで各原子が閉殻を取るように配置していき結合する。電子対はマイナス同士であるため、反発を起こし、それが結合の方向を決める。その結果として分子の形が決定されていく。分子内の各原子は電気陰性度が異なるため、共有されている電子に偏りが生じる。その結果極性が生じ、極性が大きくなるほど分子間力が強くなる。温度を下げると、この分子間力でくっついて液体から固体へと変化していく。
分子をきちんと理解するためには電子式を描けることが大事である。周期表の族番号はその原子の最外殻電子数を示している。そして、結合にはこの最外殻電子が関与することになる。8個に不足したぶんの数だけ、電子を求める手が出ていると考えると良い。
電子式がかけると形が予想でき、電気陰性度と合わせて極性の有無がわかる。極性の有無がわかると水に溶けるかわかる。水に溶けると、毒があり、臭いがあり、酸性物質か塩基性物質であると言える。
水に溶けるということは、水と混ざり合い、均一化するということです。水は極性を持つので、極性をもつ分子は水に溶けます。もたないものは溶けにくくなります。
周期表の右上の元素ほど単体はより強い酸化剤になりやすく、化合物はより強い酸になりやすい。また、周期表の左下の元素ほど単体はより強い還元剤になりやすく化合物はより強い延期になりやすい。
・結晶構造
結晶構造とは個体状態の時にとる姿のことである。金属結晶、イオン結晶、ファンデルワールス力からできた分子結晶はクーロン力によるものなので、最密構造をとりやすい。共有結合、水素結合からできた結晶は方向性がある結合なので、隙間の多い結合をとりやすい。配位数を求めることは不可能で、覚えているか、図から判断するしかない。
金属結晶
金属結合で結晶になるものは、体心立方格子、六方最密構造、面心立方格子がある。
イオン結晶
イオン結合で結晶になるものは、CsCl型、NaCl型、ZnS型がある。+イオンとーイオンの半径比の大きさの違いにより取れる配位数が違い、その比をイオン半径比という。8配位型のみ取れる限界半径比は√3-1、6配位型は√2-1、4配位型は√6/2-1です。
共有結合結晶
ダイヤモンド型があります。
理想気体
理想気体とは、気体分子の体積=0、気体の分子間力=0の気体である。ボイルの法則、シャルルの法則、ドルトンの法則、アボガドロの法則をまとめると気体の状態方程式PV=nRTが導かれる。
理想気体のとき、Vは可変容器が気体を作り出した空間もしくは固定容器のときは気体が閉じ込められた空間を表す。気体の分子間力=0はつまりは常に気体ということなので、いつでもPV=nRTを使える。体積と圧力はnと比例しているのでモルと思って、追いかけることもできる。
状態方程式をnRとPV/Tに変形するとモル不変の公式ができる。
気体の問題は、
① 固定容器か可変容器かを見破る
② 情報整理
③ 気体の束一性
④ モル不変の公式
などを使って解く。
実在気体
気体分子の体積が0ではないので、PV=nRTのVは空間—排除体積で計算する。気体の分子間力も0ではないので、液体、固体になることもあり、PV=nRTをいつも使えるとは限らない。そのときは状態図を使う。
蒸気圧とは、その物質が気体でいられる最大の圧力のことで、温度だけで決まる。蒸気圧をとる条件は、液体が存在しているかつ、隙間があることである。ここでいう、隙間があるとは、固定容器であるまたは、液体になりにくい気体が共存するときのことをいう。蒸気圧を取っているかどうかの判定法は、すべて気体であると仮定してPV=nRTからPを求めることである。
溶解度
結晶が析出しているときは(結晶が溶けようとする速度)=(結晶が析出しようとする速度)という溶解平衡になっている。そしてその平衡定数は温度のみに支配され、水100gに対して溶ける結晶の質量という溶解度で表される。解くときは、温度に応じた飽和時の溶質、溶媒、溶液の各情報を図に整理するとわかりやすい。
ヘンリーの法則
ヘンリーの法則は平衡時に成り立つ法則。ヘンリーの法則は難容性の期待のみ成立。問題パターンは平衡後の圧力が分かっているときと分かっていないときの2パターンある。難容性の気体がどれだけ溶けるかは温度、溶媒の量、注目している気体の圧力の3つに支配されている。混乱しないために、値札を張る意識を持つ。
(気体の溶ける量)=(気体の溶解度)×(溶媒量倍)×(圧力倍)である。
希薄溶液の性質
純溶媒に対して不揮発性の物質を溶かすと、
1. ① 溶媒は気体になりにくくなる
2. ② 溶媒は個体になりにくくなる
その結果、状態図は液体でいる領域が拡大する。
濃度の薄い溶液では溶質の分子間力が無視できるので、溶質の種類には関係なく、その溶けた後の濃度だけに対して比例の式が成り立つ。
(沸点上昇度、凝固点降下度)=k×(質量モル濃度)
温度を変化させると、水の体積が変化しmol/Lだと分母が変化するのでmol/kgを使う。
浸透圧
浸透圧は蒸気圧降下が原因で起こる。
コロイド溶液
真の溶液は溶媒と溶質の粒子の大きさが同程度のもので、食塩水、砂糖水、硫酸銅水溶液など。コロイド溶液は、溶媒に比べ、溶質の粒子の大きさが非常に大きい溶液で、泥水、墨汁などである。
コロイド粒子の大きさは直径10^-7~10^-5cm程度である。
コロイドを分散させている物質を分散媒いい、分散媒の中に分散しているコロイド粒子を分散質という。分散媒に分散質が分散している溶液などを分散系という。
分子コロイド:1分子が大きく、そのままコロイド粒子になったもの。
会合コロイド:小さな分子が集まり、コロイド粒子になったもの。
分散コロイド:本来、水に溶けやすい金属や金属水酸化物、泥などを適当な方法で砕いて、コロイド粒子の大きさになったもの。
本来、コロイド粒子程度の大きな粒子であれば、その凝集力によって巨大な結晶まで成長し、溶媒中で沈殿するはずである。沈殿しないということはコロイド粒子が何らかの理由によって結晶の成長が妨げられているからである。
疎水コロイド:コロイド粒子が同じ電荷を持って互いに反発し、巨大な結晶まで成長できないもの
親水コロイド:コロイド粒子の周りに水分子が強く水和して、巨大な結晶まで成長できないもの
また、疎水コロイドの周りを取り囲んだ親水コロイドのことを保護コロイドという。
コロイドには溶液の形状によっても分類できる。
ゲル:流動性のないもの
ゾル:流動性のあるもの
キセロゲル:水分を飛ばし、流動性のないようにしたもの
コロイド溶液の特徴
チンダル現象:細い光束をコロイド溶液に通すと、光の通路が光って見える。これはコロイド粒子が大きいために光を散乱するためである。
ブラウン運動:顕微鏡でコロイド溶液を見ると、コロイド粒子が細かい振動をしているのが見える。これは運動エネルギーの大きな溶媒分子がコロイド粒子をはねとばすために起こる。
電気泳動:コロイド粒子は表面電化があり、反対の電極にひかれる。
透析:普通の分子、イオンは小さいため半透膜の外に出て行くが、コロイド粒子は大きいため半透膜の内側に残る。
凝析:疎水コロイドは表面が電荷を帯びており、互いに反発しあってくっ付き合いにくい。しかし、その中に少量の電解質水溶液を加えると反発力を失って沈殿する。
塩析:親水コロイドの粒子は、多数の水分子と水和している。その中に多量の電解質を加えると、水和している水分子が奪われて親水コロイドがくっつきあい沈殿する。
熱化学
熱化学の学習で大事なことは、
・熱化学方程式と化学反応式の違いを理解する
・エネルギー図をかけるようになる
・熱、エネルギーの定義をしっかりと理解、暗記する
・物質のもつ安定さの常識を身につける
・問題は加減法かエネルギー図でとく
・熱化学方程式の意味
熱化学方程式の係数はmolそのものを表している。熱、エネルギー共に右辺に書く。物質の持つエネルギーは気体状態、液体状態、個体状態によって異なるので、必ずその状態を記入する。定義上、1つの熱化学方程式が2つの意味を持つこともある。
・熱とエネルギーの各定義
① 燃焼熱
物質1molが完全燃焼するときの熱
② 生成熱
物質1molがその成分元素の単体から生成するときの熱
③ 溶解熱
物質1molを溶媒に溶かすときの熱
④ 中和熱
酸と塩基が中和してH2O(液体)が生成するときの熱
⑤ 水和熱
気体状のイオン1molが水中で水和イオンになるときの反応熱
⑥ 結合エネルギー
気体状態の2個の原子間の共有結合を切断して原子にするために必要なエネルギー
⑦ 解離エネルギー
3個以上の原子からなる多原子分子の気体1mol中に含まれるすべての共有結合を切断してバラバラの原子にするのに必要なエネルギー、つまりその分子内のすべての結合エネルギーの総和
⑧ 格子エネルギー
1molのイオン結晶をバラバラの気体状のイオンにするのに必要なエネルギー
⑨ イオン化エネルギー
1molの気体状態の原子から電子1molを取り去って、1価の陽イオンにするのに必要なエネルギー
⑩ 電子親和力
1molの原子から電子1molを与えて、1価の陰イオンにするときに放出されるエネルギー
11, 潜熱
物質1molが状態変化するときに出入りする熱量
蒸発熱、融解熱、昇華熱、凝縮熱、凝固熱、昇華熱など。
問題文でこれらの符号は教えてくれないことがあるので常識を身につけておく。
反応速度
反応速度=(時間あたり、体積1Lあたりの反応物の衝突回数)×(活性化エネルギーを超えている割合)
反応速度を支配するものは、温度、濃度、触媒の3つである。
素反応であれば、反応式の係数が反応速度式の次数に一致する。多段階反応の時、一番遅い反応を律速段階という。
kとnを求めるには実験を行う必要があり、関数がわからないので、平均が等しいとして近似してとくしかない。n=1の時は半減期が定数になる。
T1、T2の時の速度定数が与えられていた時は活性化エネルギーを求められるがあまり出題はされない。
化学平衡
理論上はすべての化学反応は可逆反応であるが、化学という学問が現実のみを扱う学問であることを考慮すると不可逆反応も存在し得ることになる。正反応と逆反応の速度が同じになり見かけ上反応が起こっていない状態を化学平衡の状態という。
化学平衡になりうる条件
化学反応になりうる反応は正反応、逆反応共に実際に起こる必要があるが、化学反応はどういう方向に進むのだろうか。
1. ① エネルギーが安定する方向(発熱方向)
その化学反応が発熱反応であった場合、逆反応の活性化エネルギーが正反応の活性化エネルギーよりも大きいため、逆反応は起きにくく正反応は起きやすい。
1. ② 乱雑さが拡大する方向(エントロピーが増加する方向)
気体Aと気体Bを混合した場合、必ず混じり合う。すなわち気体Aと気体Bが分かれて存在する確率よりも混じり合う確率の方が巨大である。このように取り得る確率を考えた場合、乱雑さが拡大、わかりやすく言えば、バラける方向に反応は起こりやすい。
1. ① と②が同じ方向であった場合、化学平衡にはならないと考えて良い。
化学平衡の時は、化学平衡の法則が成り立ち、平衡定数は温度のみに依存する。
また、条件を変化させると、その条件変化を緩和させる方向に反応が進むというルシャトリエの法則も成り立つ。
酸と塩基
アレニウスの定義では、塩基は-OHを持ち水溶液中でOH-を放出する物質であったが、ブレンステッドの定義では、塩基をH+を受け取ることができる物質として定義を拡張した。これによってNH3も塩基になった。弱酸遊離反応も揮発性酸遊離反応も酸塩基反応と定義できる。
中和とは、酸からH+が移動し尽くし、反応が止まった状態になることを言う。
酸1分子が最大限出しうる水素イオンの数を酸の価数と言う。塩基も同様である。
酸や塩基のような電解質が水に溶けた時、電離して生成したイオンと電離していない電解質の間に電離平衡が起こる。このとき、水に溶解した電解質全体に対する電離した電解質の割合を電離度という。塩酸や硝酸や硫酸などの強酸も電離が1ではないが、受験では完全電離として扱って良い。
一般に、酸として働くか塩基として働くかは中心となる原子の電気陰性度によって決まってくる。
F 4.0 O 3.4Cl 3.2 N3.0 Br3.0 I2.7 C2.6 S2.6 P2.2 H2.2 Na0.9
電気陰性度の差が大きくなると強塩基や強酸になりやすい。また、電気陰性度の差が大きな結合が優先して切られる。
中和反応と塩
酸と延期が反応すると、酸からH+が塩基に移動し、互いの性質が打ち消される。このような反応を中和反応という。
化学式の中にHやOHが完全に残っていない塩を正塩。Hが残っている塩を酸性塩、OHが残っている縁を塩基性塩という。これらの名前は見た目で分類しており、実際に中性、酸性、塩基性、を示すわけではない。
pH
pH=—log10(H+)で定義される。pHを計算する時の水素イオン濃度はその溶液中の全てのH+を代入する必要がある。しかし、酸が濃い(10^-6mol/Lより大きい)場合には水の出したH+は無視する。しかし酸の濃度が10^-6から10^-9の間の場合は水の出したH+も加味する必要が出てくる。
中和点での計算
中和点での計算は酸の出すH+=塩基の出すOH-という式を立てれば良い。中和の時は弱酸も完全電離する。
指示薬と滴定について
滴定とはすでに濃度の分かっている化学物質を用いて化学反応を起こし、濃度未知の化学物質の濃度を測定する定量分析方である。特に中和反応を利用するものを中和滴定という。滴定に利用される化学反応として酸塩基反応、酸化還元反応、沈殿形成反応、錯イオン形成反応などがある。ホールピペットとビュレットは共洗いする。
普通の中和滴定実験では、
1. 1、 一次標準溶液の調整
2. 2、 一次標準溶液を用いて、中和滴定で虹標準溶液の濃度を決める
3. 3、 虹標準溶液を用いて、中和滴定で最終目的の物資の濃度を求める
という流れで行う。
指示薬は、変色域でpHジャンプのある指示薬を使う。
逆滴定
中和滴定は通常、酸と塩基を水溶液の状態で反応させる。これは水中で中和反応が起きやすいからである。しかし、滴定したい物質が気体の場合、そのままでは滴定が不可能なので、いったん濃い酸性溶液や濃い塩基性溶液にそれらの機体を溶かしこみ、余った酸性溶液、塩基性溶液を中和滴定することでもともと気体であった物質のモル数を求める。
本来、酸性物質を滴定する際は塩基性物質で、塩基性物質を滴定する際は酸性物質で滴定するはずだが、結果的に同じ性質の物質で滴定しているので逆滴定という。
2段滴定
2種類以上の酸性物質や塩基性物質が混合されている場合、あるいは二価以上の酸性物質、塩基性物質を滴定する場合、2種類以上の中和反応が起こる。そのとき、より強い酸性物質、塩基性物質が優先的に中和反応を起こし、その反応がほぼ全て終了した後、より弱い酸性物質、塩基性物質の中和反応が起きる。2段滴定では、指示薬の選択とpH曲線を理解することが大事である。
弱酸の関係するpH計算
水溶液中に弱酸や弱塩基が残っていた場合のpH計算では、弱酸の電離平衡を考えなければいけない。
弱酸だけが存在する場合、電離度が0.05より大きいか小さいかで近似できるかどうかが変わり、公式が異なる。
緩衝液のときはいつも近似できて公式が使える。
弱塩基のみのときは、弱酸イオンの塩基性は非常に弱いのでいつも近似できて公式が使える。
弱酸遊離反応
より強い酸の電離による水素イオンが、より弱い酸の電離平衡を支配する。すなわち、より強い酸がより弱い酸の電離を押さえ込み、結果的により弱い酸が生成する方向に反応が進む。
揮発性酸遊離反応
不揮発性の酸と揮発性の酸が混合されている場合、加熱すると、揮発性の酸が蒸発によって抜けていくので、ルシャトリエの原理によりなくなった揮発性の酸を生成する方向に反応が進むことになる。これを揮発性酸遊離反応という。
最新の研究によると、これは単なる弱酸遊離反応が進んでいるだけということがわかっている。加熱なしでも反応は起こる。
酸化還元
酸化還元反応で大事なことは、電子のmolをいつも意識することと、代表的な酸化剤・還元剤は暗記して酸化数も求められるようにしておくことである。
酸化数
通常化合物中ではH=+1、O=-2としておく。また化合物中のアルカリ金属元素は常に+1とする。酸化数の本来の決め方は、電気陰性度の大きい方の原子に電子を完全に渡したと考える。
その化学反応式の右辺もしくは左辺に単体があれば、それは酸化還元反応である。
酸化還元反応式
変化先を覚えておく。酸素原子のOを倍の数のH+で中和し、H20にする。e-を加えて電気的に中性にするという手順で半反応式を作ることができる。
酸化還元滴定
過マンガン酸カリウム滴定
過マンガン酸カリウム水溶液は赤紫色をしているが、これをビュレットからコニカルビーカー内の還元剤に加えると、反応が起こり、Mn2+がが生成するので色が消え続ける。しかし、還元剤がなくなると反応が起こらなくなるのでKMnO4本来の色が着色する。過マンガン酸カリウムは必ずビュレット側にいれます。というのも、過マンガン酸カリウムは光が当たると分解を起こすため、専用の褐色のビュレットに入れる。また実験者は完全に無色になったところは判定できないという理由があります。
COD(化学的酸素要求量)について
河川や海などの水質汚染を程度を示す指標の1つ。家庭排水などに含まれる有機化合物は河川の汚染源の1つであり、この有機化合物を含む1Lの資料水を酸化剤で酸化分解した時に使われる酸化剤の消費量を酸素を酸化剤として用いた場合の酸素の量に換算した値がCODである。その時、酸素は酸化剤として弱いので強力な酸化剤であり過マンガン酸カリウムなどで短時間で測定し、その時に必要だった過マンガン酸カリウムのモル数から、もし酸素で酸化していたら酸素は何モル必要だったかを求めCODを求める。酸化時に加熱しているので、過マンガン酸カリウムの一部は熱分解を受けているので、有機化合物を参加するのに必要だった過マンガン酸カリウムのみかけの量は増えている。その後さを測定するのにブランクテストを行うことがある。
本来なら、KMnO4で酸化する時に滴定してしまえばいいはずですが、どうしてこのような二度手間をするのかには理由があります。
有機化合物は時間が経つにつて酸素によって酸化されるので短時間に酸化する必要があります。そのためにまずは大量のKMnO4を加え完全に酸化します。その後、H2C2O4を加え、完全に還元してから余ったH2C2O4をKMnO4で滴定するのです。というのも、ビュレットに入っているのがH2C2O4だったら滴定の終了点がわかりづらい。
湖などにある有機化合物は湖に溶け込んでいるO2を使って酸化され、その時に生成するエネルギーは微生物のエネルギー源に使われます。この微生物のO2による酸化を人間の手によって行ったら、、を考えているのでO2のmgで表現するのです。
ヨウ素滴定
I2はデンプン存在下ではヨウ素デンプン反応を起こし、青〜青紫色に呈色する。ここにビュレットから還元剤であるチオ硫酸ナトリウム水溶液を滴定すると、酸化還元反応が起こり、I2が全てなくなった時ヨウ素デンプン反応の定食が消える。
金属のイオン化傾向
イオン化傾向とは、単体の金属が水和イオンになるのに必要なエネルギーに対応する数値。この値が小さいほどイオン化傾向は大きくなる。
イオン化傾向が大きい⇨イオンになりやすい⇨電子を出しやすい
イオン化傾向が大きい⇨イオンのままの方が安定⇨単体として析出しにくい
イオン化傾向が大きい⇨イオンのままの方が安定⇨沈殿しにくい
イオン化傾向は酸化還元、電気化学、無機化学の分野においても重要な尺度である。
不動態:不動態は一瞬反応し、金属表面に安定で緻密な酸化皮膜を生じ、これが内部を保護するため、化学的に反応性を失ってしまった状態のこと。しかし、希硫酸や希硝酸などは小さなH+なので通過できる。
語呂合わせ:リックバスかな、まあまあ、苦労って過去にすんな、ひどすぎる借金
電池
何が還元剤で、何が酸化剤で、電子が何モル移動しているか、電解質は何かを覚える。
電池は還元剤と酸化剤を導線で結ぶと、還元剤から酸化剤へ電子が導線場を流れる。この流れの逆を電流と決めている。この流れの量が電気料であり、流れの勢いが電圧である。負極にはより強い還元剤、正極にはより強い酸化剤を持ってくるとそれだけ大きな起電力を持つ電池ができる。
一般的な電池においては、負極で還元剤が電子を負極板状に電子を残し、陽イオンとなる。放電が進むとこの陽イオンが負極板上の電子をクーロン力で引っ張り、電子が正極に流れることを妨げる。一方、電子のいきつく正極板では酸化剤が電子をもらって陰イオンとなる。何れにしても多量に余った陰イオンが正極版に電子が流れ込むのを妨げる。しかし、ここに電解質があれば、電解質から陽イオンと陰イオンが提供され、負極⇨正極の流れがスムーズに進む。つまり、電解液中でイオンが移動することにより電気が流れていることになる。
有名な電池として、ダニエル電池、ボルタ電池、鉛蓄電池、燃料電池、アルカリ電池などがあり個別に覚えておくと良い。
電気分解
外部から電気エネルギーを与えて、本来は起きないはずの反応を起こし、電解液中の各種イオンを単体として析出させることが本来の目的。したがって、電極板は電子導体部として使われるだけであり、電極板自体が反応することはないのが通常の使われ方である。
外部電源の負極から流れてきた電子は陰極板上で、電解液中の+イオンに渡される。したがって、+イオンは酸化剤として働いたことになる。つまりは、陰極板上では還元反応が起こっている。また、陽極板は相対的に電子不足となっており、電解液中のーイオンから陽極板に電子が渡される。
陰極では、陽イオン化傾向の小さいものから優先的に析出する。
陽極では、陰イオン化傾向が小さいものから優先的に析出する。ただし、多原子イオンは切断すべき共有結合数が多いため、析出しない。
陽極板にAg以上のイオン化傾向の金属を用いると陽極板自体が溶け出す。
電気分解を利用した工業的製法として、銅の電解精錬、陽イオン交換膜法、融解塩電解法などがある。
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無機化学
1、 陽イオンの分離
2、 気体の製法
3、 工業的製法
4、 元素別学習
無機化学の学習はつまるところ、無機物質の起こす化学反応式を自力で作れるようになることが最終目的。
化学反応式が自力で作れれば、上記のような内容は簡単にマスターできる。
自力で作るためにはその反応が起こっている「反応機構」を理解する必要があり、反応機構がわかるにはその「物質の性質」を理解している必要がある。では物質の性質が何によって決まっているかというと「電子の性質とその振る舞い」である。ゆえに、電子について深く理解することで受験化学は多少なりとも暗記から逃れられる。
ところで、化学反応の種類は大きく分けると次の4種類です。
① 酸塩基反応
② 酸化還元反応
③ 沈殿生成反応
④ 錯イオン生成反応
① と②はすでに学習済みなので、ここでは主に③と④に焦点を当てて学習する。
そして、③と④は分子の相性の問題なので、ここだけはどうしても暗記しなければいけない。
陽イオンの分離
未知の陽イオンが溶けている試料溶液に特定の試薬を加えると、沈殿を生成することがある。これは陽イオンと試薬中の陰イオンのペアの中に水に難溶な塩を形成したからである。また、一度沈殿した塩を工夫次第で再溶解することもできる。その際は錯イオン生成を利用することが多い。そしてその錯イオンも金属の陽イオンと試薬のペアで形成される。定性分析に入る前に、沈殿や錯イオンのペアを暗記する必要がある。
沈殿生成反応
陽イオンと陰イオンが出会って、沈殿を起こす反応であり、ペアを覚える必要がある。一般的にはようイオン化傾向の小さいほど沈殿しやすいと言える。逆に遥イオン化傾向の大きい金属イオンは沈殿しない。また、沈殿の色は白と黒は多いため、それ以外の色の沈殿が入試には頻出となりやすい。
陰イオンの立場から考えると、強酸イオンは沈殿ペアを作りにくい。というのも強酸イオンは極めて親和性があり、イオンのまま水中で安定している。例えば、NO3-で沈殿する金属イオンは存在しない。しかし塩化物イオンと硫酸イオンは例外的に特定の金属イオンと沈殿するので得意性に優れた分析試薬となる。
弱酸イオンは沈殿のペアを作りやすい。弱酸イオンは水中ではイオンであるより元の弱酸分子の方が安定であるので水と加水分解し元の弱酸分子に戻るか、陽イオンと結合して沈殿を生成するかになりやすい。
錯イオン形成反応
金属イオンは価電子を失っているため電子が入るとかなり安定する空の電子軌道を持っている。そこで、水中ではH2O分子の非共有電子対がこの空の軌道に入り、金属イオンと水分子が配位結合してできた錯イオンを形成している。つまり、本当は最初から金属イオンは必ず錯イオンの状態で存在しているということである。この水中にNH3やCN-などのようなH2Oより提供性の強い非共有電子対を持った分子やイオンが加えられると、H2Oと順次入れ替わった錯イオンが生成していく。
錯イオンの形は、配位結合に使われている電子対同士の反発を考えると、2配位なら直線、4配位なら正四面体、6配位なら正八面体となることが推測できる。
系統分析
未知の金属イオンがたくさん混合されている試料溶液の一つ一つのイオンを分離⇨確認するのは困難であるので、まずは適当な試薬を一定の順序で加えて、性質の類似した金属イオンごとに沈殿させ、分離していく。次に、いくつかのグループに別れた沈殿グループのそれぞれに別の試薬を加えて溶解するものと沈殿したままのものを分離していく中で、個々の金属イオンの存在が確認される。
溶解度積
溶媒中に難容性の塩が沈殿しているとき、見かけ上は変化がないように見えるが、その表面では沈殿物が溶けようとする反応と沈殿物として析出しようとする反応が起こっており、その反応速度が同じになっている。つまり、溶解平衡が起こっている。平衡後の濃度が分かっているタイプでは求めるものを文字にして溶解度積の式へ代入する。平衡後の濃度が分かっていないタイプでは沈殿があるかどうかの判定を行い、沈殿がある場合はバランスシートを書いて平衡後の濃度を求めて溶解度積の式に代入すれば良い。この計算の時に全て沈殿していると考えてそこから析出すると考えると式が扱いやすい。というのも最終状態は同じである。
熱分解反応
一般に安定なものから不安定なものを作ろうとする場合、その方向は吸熱反応であるから、ルシャトリエの法則で考えれば、温度を上げるとその方向に進むということがわかる。
気体の製法
気体の実験室的製法は「発生」、「乾燥」、「捕集」の3つに分けられる。どの発生装置を使い、どの乾燥剤を使い、どの捕集法を使うかは、反応を起こす条件、気体の性質によって分けられる。
気体の発生装置
加熱できる機器は底がまるくなっている。固体と固体の反応は加熱が必要で、固体と液体の反応では加熱が必要な場合も不必要な場合もある。
気体の発生においては、発生する気体が有毒であることが多いのでいざとなったらその発生をすぐに止める必要がある。そのための工夫をいかに行なっているかを中心に考えれば、実験器具のポイントをすんなりとまとめられるだろう。
また、加熱が必要な反応は以下が挙げられる。
1. ① 固体のみの反応
固体どうしの反応は接触面積が小さいため反応速度が遅い。
1. ② 濃硫酸を使う反応
濃硫酸は加熱しないと酸化力も脱水力も発揮できない
1. ③ MnO2を酸化剤として使う反応
MnO2は加熱しないと酸化力が弱い
1. ④ 分解反応
化学平衡が起こっている場合、分解の方向は吸熱反応なので、加熱すると起こりやすい。
1. ⑤ 燃焼反応
O2で参加するということは燃焼させることなので、自明。
気体の乾燥
酸性の乾燥剤P4O10はNH3と中和反応が起きてしまうのでだめ。
酸性の乾燥剤濃硫酸は、NH3と中和反応、H2Sと酸化還元反応が起きてしまうのでダメ。
塩基性の乾燥剤ソーダ石灰は、酸性気体がダメ。中世の乾燥剤塩化カルシウムはNH3と相性が良いのでダメ。
気体の捕集
水に不溶な中性気体は水上置換。空気より軽いNH3は上方置換。空気より重い(主に酸性気体)は下方置換。
工業的製法
アンモニアソーダ法、融解塩電解、鉄の製造などを抑えておく。
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有機化学
有機化学の学習の最終目標は構造決定問題を解くことである。有機化合物の主役は炭素である。炭素は手が4本あるので、同じ分子式であっても全く違う物質を作り出す。そしてどういう物質であるかは構造式で表現されるので、その構造式を求めたい。
元素分析実験⇨組成式⇨分子式⇨不飽和度、異性体、情報⇨構造式という流れで構造決定をする。
有機化合物の分子内は切れにくい共有結合でできているので、元に戻る反応も起こりやすい。つまり完全には右に進まないということである。反応語にも反応式中の全ての化合物が混合されているので、これらの混合物から目的の化合物だけをいかに生成するかということがポイントとなる。
有機化合物には疎水性の部分と親水性の部分が共存している。これらを利用して混合物の中の各化合物をいかに分離していくかがポイントとなる。
学習にあたっての心構え
① 有機化合物の反応はある原子との共有結合が切れて、違う原子との新しい共有結合が生まれる反応がほとんどなので、必ず原子間の電気陰性度の差がかわることになる。つまり酸化還元反応がメインとなる。ということは何が還元剤で何が酸化剤で電子がいくつやり取りされているのかを意識する必要がある。また電子についての性質をしっかりと理解しておくと丸暗記から逃れられる。
② 考えられる全ての異性体を書き出すスピードが有機化学の実力
③ 脂肪族はグループが同じなら同じ反応を起こすので反応のルールを覚えよう
④ 芳香族は触媒や反応条件などの細かい暗記が必要となる
電子軌道について学習し、二重結合や三重結合の電子雲の形を想像できるようになっておくと良い。
有機化学の基礎
有機化合物は疎水性の炭化水素骨格と親水性の官能基からできている。アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステルなどのグループ名は覚えておくべきである。
有機化合物の反応はイオン反応とラジカル反応の2種類である。
構造決定問題では次の3点を意識して解いていくことになる。
炭素数⇨炭化水素骨格⇨官能基とその種類
⑴ 分子式を求める
⑵ 不飽和度を求める
⑶ 可能であれば、全異性体を書き出してみる
⑷ 炭素原子推移、炭化水素骨格、酸素原子数には常に注目しておく
⑸ 不飽和度が少ない時は全異性体を書き出す。多い時はピンポイントで攻める。
⑹ いずれの解法をとるにしても問題文を読みながら情報を整理しておく
⑴分子式を求める
分子式はいきなり求められないので、元素分析実験によって最も簡単な整数比からなる組成式を求める必要がある。その後、別の実験から分子量を求めて初めて分子式が決定される。
元素分析実験
①試料を燃焼させるとCO2とH2Oが生成するが、試料中の炭素原子は全てCO2に、水素原子の全てはH2Oに含まれるので、CO2とH2Oの質量を別々に測る。この時、CaCl2の質量増加からH2Oの質量がもとまる。また、ソーダ石灰の質量増加からCO2の質量がもとまる。
②質量比をかけて、CO2中のC原子の質量、H2O中のH原子の質量を求める。その後、C原子、H原子の原子量で割り算し、試料中のC原子のモル比、H原子のモル比を求める。
以上をまとめると、元素分析における燃焼反応の役割は試料中のCとHを分離してそれぞれを質量測定が可能な物質へと変化させることに他ならない。
注意点
①塩化カルシウムとソーダ切開の順番を逆にしてはいけない
ソーダ石灰は塩基性の乾燥剤なので塩化カルシウムより前に持ってくると、H2OとCO2の両方を吸収してしまう。
②酸化銅の役割
試料中のC原子の一部が不完全燃焼してできたCOを完全に燃焼させ、CO2に変えるため。
⑵不飽和度を求める
分子式が求められたら、構造決定に入っていくわけですがその時Iuが大きな武器となります。不飽和度は分子式が与えられた時にどんな構造を持っているのかを探るのに重要な武器となります。
Iu=(水素原子の飽和数—分子式中の水素原子数)/2
で求められます。炭素原子は水素原子を2つ連れ、窒素原子は水素原子を1つ連れてきます。不飽和度が増えた原因としては、二重結合、三重結合、環構造が考えられます。
異性体について
炭素原子には手が4本あり、さらには結合する相手原子の数に応じて異なる手の出し方をします。つまり、炭素原子が骨格を作っている有機化合物には、分子式は同じでも形が異なる、つまりは違う物質同士の関係にあるものが無数に存在し、これを異性体と呼んでいます。平面的に見て違いがわかるものを構造異性体と呼び、空間的に見て初めて違いがわかるものを立体異性体と呼びます。立体異性体はその空間的に違うをもたらしている原因によって、光学異性体、幾何異性体に分かれていきます。
不斉炭素原子を持つ化合物が鏡像異性体を持つと教科書には書いてありますが、そうではありません。分子内に対称面・対称点を持たないものが鏡像異性体を持ちます。実際不斉炭素原子を持たないのに鏡像異性体を持つこともあります。逆に不斉炭素を持つのに鏡像異性体を持たないこともあります。また、不斉炭素原子を2つ以上持つ分子となると鏡に映った関係ではない鏡像異性体も存在します。これをジアステレオマーと呼びます。しかし、通常は不斉炭素原子の数を元に立体異性体の数を推測していきます。不斉炭素原子がn個あるときの立体異性体の数は一般的には2^n個になります。
環構造を持つ場合の不斉炭素原子の数え方は、1つの炭素原子から時計回りに見た構造と反時計回りに見た構造が異なっていれば、この炭素原子は不斉炭素原子とします。
⑸有機化合物の異性体の書き出し方
①炭素の最長鎖は横に書き、最長鎖の数ごとに場合分けしていく
②枝分かれとなる炭素をくっつける場合最長鎖の端につけてはいけない
③対称性に注意して同じものは数えないこと
系統名の付け方
官能基が早く出てくる方向から1番炭素、2番炭素・・・と番号を打っていく。
官能基を持つ化合物の全異性体を書き出す時は、炭化水素骨格の部分と官能基を作る部分にパーツ分解して、炭化水素骨格中に官能基を割り込ませていけば良いのです。
⑷炭素原子数、炭化水素骨格、酸素原子数には常に注目しておく
構造決定では、炭素原子数とその骨格がわかることで炭化水素部分が決定し、酸素原子数とその結合の仕方、位置がわかることで、官能基が決定し、構造式が完成します。このとき、炭化水素骨格は酸化開裂、ヨードホルム反応、エステル、アミド分解、ベンゼン環の側鎖の酸化ぐらいでしか変化しないことに注意しておきましょう。
⑸Iuが少ない時は全異性体を書き出す。多い時はピンポイントで攻める。
Iu数が少ない時は全異性体を書き出すのが一番いいでしょう。一度書き出したら消去法が使えるのでスピーディに溶けます。
不安定な構造
1、同じ炭素原子にーOHを⑵つつけた構造
2、エノール型
3、炭素原子が単結合で連続するもの
4、3員環
脂肪族の反応
アルカン:①置換
アルケン:①付加 ②酸化還元
アルキン:①付加 ②付加重合 ③酸として
アルコール:①還元 ②脱水 ③酸化 ④ヨードホルム
エーテル:ほぼ無極性なので反応しない
アルデヒド:①酸化
カルボン酸:①弱酸として ②脱水 ③脱炭酸反応
ケトン:①ヨードホルム反応
エステル、アミド:①合成 ②分解
芳香族:①付加 ②置換 ③酸化開裂
アルカン
①置換反応
アルカンはすべての結合が強いので非常に安定している。しかし、塩素や臭素などのハロゲンとは、光をあてるとラジカル反応による置換反応を起こす
アルケン
①付加反応
アルケンの二重結合のうちσ結合に比べてπ結合は電子核から遠いところを往復しているので比較的弱い結合を作っており、電子が欲しい酸化剤によって奪われ、π結合が切れ、新たなσ結合ができてより安定化する。臭素や塩素はトランス付加するのに対し、PtまたはNiを触媒にしてHを付加反応させるとシス付加になる。HClや硫酸や水はシス付加もトランス付加も可能である。
マルコフニコフ即
非対称アルケンに、HX型の分子が付加する場合、二重結合を形成している2個の炭素原子のうち、水素の結合数が多い方の炭素原子にはH原子が付加しやすい。これはH+が付加した時の中間生成物の安定性を考えればわかる。BH3の付加反応はBH2+の方が先に付加するので逆マルコフニコフ則になる。
ザイチェフ則
アルコールの脱水では、—OH基の結合した炭素原子の両隣の炭素原子のうち、水素原子の数の少ない方から水素原子が失われた化合物が主生成物となる。これも生成物の安定性を考えればわかる。
②オゾン酸化分解、過マンガン酸カリウム酸化分解
オゾンの強い酸化力をZnで弱めているのでアルデヒドが生成する場合はアルデヒドで止まる。オゾンは本来はKMnO4より強い酸化剤なのでアルデヒドで止まるというのは受験の暗黙の了解。
KMnO4で酸化すると、アルデヒドが生成する場合はカルボン酸まで酸化される。アルケンを塩基性下で過マンガン酸カリウム水溶液と反応させると、塩基性下では、酸化力が低下するのでσ結合は切断できずジオールが生成する。
アルキン
①付加反応
三重結合は距離が近いので臭素の付加はアルケンよりはおきにくい。HClの付加は触媒HgSO4が必要である。水素の付加は電子が多いのでアルケンよりもおきやすい。H2Oの付加反応は不安定なエノール型ができるので転移してケト型になる。C=Cのπ結合を作る電子軌道へO原子の非共有電子対が流れ込んで、電気陰性度の高いO原子が電子不足を起こしているからである。フェノールもエノール型であるが、非局在化するので安定する。
②アセチリド生成
三重結合は二重結合よりも電子を吸い寄せているのでHが切れやすくなっており、塩基性下でアンモニア性硝酸銀溶液もしくはアンモニア性塩化銅溶液を加えるとそれぞれ銀アセチリドの白色沈殿と銅アセチリドの赤褐色沈殿が生じる。
アルコール
アルコールは分子間で水素結合するため、普通の炭化水素に比べて沸点、融点が高い。アルコールには第1級、第2級、第3級という呼び方があり、それぞれ反応性が異なる。—OH基1つでC原子3つまでは水に無限に溶かせると思えば良い。
①還元反応
アルコールはH+と平衡状態にあるので、還元力の強いナトリウムなどが電子を出すとH+に渡されて水素分子になって出て行く。
②分子間脱水
立体構造上、炭素数4以上になるとOHとHがぶつかる確率が低くなり分子間脱水は炭素数3以下のものにしかおきない。ゆえに2次試験レベルの構造決定問題は脱水と記述があったら分子内脱水のはずである。
③酸化
1、第1級アルコール
硫酸酸性下で酸化するとアルデヒドになり、その後カルボン酸まで酸化される。
2、第2級アルコール
硫酸酸性下で酸化するとケトンになる。
第3級アルコールはHがないので酸化されない。
④ヨードホルム反応
第2級アルコール類かケトン類が反応する。メチル基が目印でHも必要である。反応機構が分かれば暗記の必要はない。カルボン酸塩とヨードホルムができる。
エーテル
エーテルはアルコールと異なり、分子間で水素結合できないため沸点が極端に低い。
ウィリアムソンのエーテル合成法
対称エーテルR-O-Rは、アルコールの分子間脱水で得られるが、非対称エーテルはナトリウムアルコキシドとハロゲン化アルキルを無睡状態で加熱して得られる。電気陰性度の高いハロゲンを使って横のCを+にしてR-O-がぶつかる場所をマーキングするというのが発想である。
アルデヒドとケトン
これらはアルコールと異なり、—OH基を持たないので沸点は低い。また、C原子が3個以内なら水に溶けやすく、中性である。アルデヒドは還元性を持つ(カルボン酸に酸化されるので)ので銀鏡反応やフェーリング反応を起こすが、ケトンは還元性を持たない。
①銀鏡反応
銀鏡反応、フェーリング反応共にアルデヒドを塩基性下で酸化する反応である。アルデヒドは塩基性下では酸化されやすい。これはカルボニル基特有の反応である。カルボニル基は電気陰性度により炭素原子は+に帯電しており、塩基性下ではーOHの炭素への求核反応により結合しやすくなっている。この結合の後、C-H間の2つの電子が奪われ、比較的弱い酸化剤であるAg+、Cu2+に渡される。アンモニアはAg2Oの沈殿が生じないようにAgを錯イオンにして守っている。フェーリング反応では酒石酸イオンがCu2+イオンを守っている。
カルボン酸
分子中に含まれるカルボキシ基の数によって1価カルボン酸、2価カルボン酸などという。特に鎖状の1価カルボン酸は脂肪酸という。カルボン酸の沸点は、分子間で水素結合するので高い。ギ酸はアルデヒド基を持つので銀鏡反応を起こす。しかしフェーリング反応は起こさない。これはギ酸イオンがフェーリング液中のCu2+イオンとキレート錯体を形成し安定しているからである。
ヒドロキシ酸
1分子中にカルボキシ基とヒドロキシ基を持つ化合物をヒドロキシ酸という。ヒドロキシ酸は多くの果実中に含まれる酸味成分であり、また生体内で糖類が代謝される際の中間生成物でもある。不斉炭素原子を含むものが多い。
①弱酸として
②脱水反応
酢酸などはP4O10の下で分子間脱水を行う。また、マレイン酸やフタル酸は分子間脱水する。
③脱炭酸反応
エステル
カルボン酸とアルコールが脱水縮合して生成する化合物をエステルという。エステルは中世の分子である。両端が炭化水素基に囲まれているので、一般に水に溶けにくいが有機溶媒には溶けやすい。分子間で水素結合できないので、沸点は低く、揮発性であり、果物のような芳香を持つ液体である。硝酸や硫酸などのオキソ酸とアルコールとの脱水縮合で生じた化合物も講義も意味ではエステルという。
①合成
脱水力のある濃硫酸を触媒として加えると、右辺の水がなくなるのでルシャトリエの法則により平衡は右へ移動する。すなわち、エステルの合成反応の触媒は濃硫酸で、分解反応の触媒は希硫酸である。何れにしてもエステルの合成と分解は平衡になっていて、収率が悪い。
そこで無水物を使って、水を使わず合成すると収率が良い。
②ケン化
NaOHを使うとエステル結合を100%切ることができるので収率が良い。
アミン
アンモニアのH原子を炭化水素基で置換したとみなされるものをアミンという。アミンのN原子には非共有原子対があり、H+をキャッチできるので塩基性を持つ。アミンは分子間で弱めの水素結合ができるのでアルコールほどではないが沸点は高い。また、Cが多くなると溶けにくくなる。
アミド
カルボン酸とアミンが脱水縮合して生成する化合物をアミドという。アミドは中性の分子である。両端が炭化水素基で囲まれているので、一般に水に溶けにくいが、有機溶媒には溶けやすい。
①合成
エステルと同じく、ルシャトリエを利用して濃硫酸で合成、希硫酸で分解できる。
芳香族の反応
ベンゼンの性質
⑴ベンゼンはすべての原子が同一平面上にあり、共鳴により極めて安定している。ベンゼンの持つ3つの二重結合の電子は広いとこが好きなので回っている。
⑵ベンゼンは水に溶けにくい
+とーの中心が一致しているので分子全体として極性がない。
⑶ベンゼンは付加反応しにくい。置換反応は比較的おきやすい。
ベンゼンのπ結合の電子は非局在化され、大きな電子の雲を作って安定している。ここからπ電子を奪うのは困難なため、特殊な条件下に置かない限り、付加反応はしにくい。一方、H原子は電気陰性度が低いため、H原子の持つ電子が比較的奪いやすい。
ベンゼンの付加反応
PtやNiを使いH2や紫外線を使いCl2でラジカル攻撃をすると付加反応する。
ベンゼンの置換反応
ベンゼンにはπ電子による電子の雲が広がっており、マイナスイオンの接近はできません。したがって接近できるとすれば、陽イオンのみです。フェノールはマイナスのOがくっついているが、これにはプラスイオンをベンゼンに入れておいてからの工夫が必要です。その工夫により4種類の作り方があります。
①クロロベンゼン経由
ラジカル反応でClを入れて炭素原子を+にマーキングするのが発想です。この方法は無理をしているので今では使われない。
②ベンゼンスルホン酸経由
ラジカル攻撃でベンゼンスルホン酸にして炭素原子をマーキングしてからNaOH(固)でアルカリ融解します。
なぜクロロベンゼンにはNaOH水溶液を加え、ベンゼンスルホン酸にはNaOH(固)を加えるのか。OH-は水分子の方にひかれて芳香族分子を攻撃しに行かないので本来芳香族分子にOH基を導入しようとする場合、水溶液中では不利である。NaOHの融点が318℃、ベンゼンスルホン酸ナトリウムの融点が450℃、クロロベンゼンの沸点が132℃であるので、クロロベンゼンの時はアルカリ融解はできなかったのだ。というのも気化してしまうから。
③クメン法
プロピレンを付加させる方法である。反応機構は難しいので暗記すべき。
④アニリンをジアゾ化する
ラジカル反応でベンゼンをニトロベンゼンにし、還元してアニリンにし、ジアゾ化して演歌ベンゼンジアゾニウムにし、加水分解してフェノールにする。
カップリング反応
ナトリウムフェのキシドと演歌ベンゼンジアゾニウムをカップリング反応させると、p-ヒドロキシアゾベンゼンができる。
エステル化への道
ナトリウムフェのキシドにCO2を高温高圧でぶつけるとサリチル酸ナトリウムができる。
芳香族炭化水素の反応
ベンゼンをラジカル攻撃するとトルエンができて、トルエンを酸化すると安息香酸ができる。
ベンゼン環の側鎖の酸化
芳香族化合物に中性条件下で過マンガン酸カリウム水溶液で酸化するとベンゼン環に直接結合している炭素原子以外は酸化されて脱離する。直接結合している炭素原子はカルボキシ基に変えられる。
フェノールの性質
配位子として働く⇨FeCl3水溶液を加えると青紫色へ定食
弱酸として働く
還元剤として働く
オルトパラ配向性がある
アニリンの性質
弱塩基として働く
還元剤として働く
芳香族化合物の分離
分子はエーテルの溶ける形であり、イオンは水に溶ける形である。