05-01.前置詞
本ページでは、デナスティア語の前置詞の用法について解説している。
前置詞
前置詞とは、デナスティア語において名詞や名詞句を導く品詞であり、統語上で重要な地位を占める。
前置詞の直後に置かれた各種の人称代名詞(人称代名詞、親愛人称代名詞、尊敬人称代名詞)及び指示代名詞は対格をとる。
ただし、属格は属格のままである。
feu jao 私に
feu jat pav 私のパンに
*feu ja (文法的に誤り)
ただし、前置詞の中には接続詞としても用いられるものもある。
接続詞として用いられた場合は、直後の代名詞が対格をとらない場合も多々ある。
詳細は05-02.前置詞の接続詞的用法(工事中)を参照のこと。
前置詞の種類
前置詞は伝統的に以下のような種類に分けられる。
なお、前置詞によっては複数のグループで用いられるものもある(例:al)。
話題・取り立ての前置詞
al:~は、~について(取り立て)
tas:~も(付加)
tuneh:~すら(最低限)
格標識に関わる前置詞
al:~を(対格)
teu:~の(前置詞属格)
feu:~に、~へ(与格)
jili:~から、~によって(奪格)
nit:~で、~にて(地格)
cjo:~で、~を使って(具格)
at、dankeh:~と共に(随伴格)
mus:~なしに(不具格、不随伴格)
方向の前置詞
van:~の中に
taht:~の外に
fo:~の上に
fik:~の下に
al:~のそばに
tzieh:~の前に
noteu:~の後に
cjefe:~の方へ
fueh:~まで
cjime:~までに
keih:~を通って、~の間に(線的)
tcjiman:~の間に(空間的)
tzalgentes:~の間に(接触あり)
その他の前置詞
tol:~として(置き換え)
tuo:互いに(相互)
tzak:~にある、~にいる(存在地)
po:~のような、~のように(比喩)
al:~より(比較)
koi:~すぎる
話題、取り立ての前置詞
al:~は
話題を示す。無標の目的語を話題にする際、文頭に持って来る時に出現する。
もとの文の主語に対しては基本的に使われない。ただし「Aは~でないがBは~である」といったように差異を強調したい場合は、その限りではない。
また子音で始まる語の前では、その語と一体の単語であると見なして/a:/あるいは/ao/と発音されることもある。
ただし、他の二種の話題の前置詞と異なり、格の前置詞と共起できないことから、一説には話題の前置詞alは存在しないとも言われている。すなわち、対格を話題化したり、主格名詞を対比したりする場合に用いられる、格前置詞の一種とする説である。
Al Milehcja ja colnes.
ミレーシャは私が呼んだ。
Cja fuonet muoe seit. Sik al jao na fuones muoe seit.
彼はそこに行きたがった。しかし私はそこに行きたくなかった。
tas:~も
alと同様に話題を示す。ただし、こちらはすでに他に同様の対象がある場合にのみ使用される。「Aは~である。そしてBも~である」のような場合にBの前置詞として現れる。また、この前置詞は格前置詞と共起することができる。
Al Milehcja ja colnes. Tas Gellfo ja colnes.
ミレーシャは私が呼んだ。ゲルフォも私が呼んだ。
Cja fuonet muoe seit. Tas jao fuones muoe seit.
彼はそこに行きたがった。私もそこに行きたかった。
Tas feu cjao ja gevnes kefi.
彼にも私はケーキをあげた。
tuneh:~すら、~だけ、~のみ、~にも…ない
alやtasと同様に取り立てて説明する際に使用される。また、この前置詞は格前置詞と共起することができる。
Tuneh esleo na kanot sikie al sa.
精霊たちすらそれについて知ることはできなかった。
Tuneh eit tzar kal kvale sa.
我らが国王だけがそれをご覧になれます。
Tuneh feu juo na kak muie seh !
あなたにも聞こえないなんて!
格標識に関わる前置詞(格前置詞)
al:~を、について(対格)
デナスティア語では二重直接目的語がtol省略(詳細は後述)以外で原則認められていない。そのため、複数の直接目的語が現れる場合は、動詞のすぐそばにあるものを除いて、義務的にalが出現する。
ただし、動詞の種類によってはこのalの有無によって意味合いが変わることもあり、その場合は動詞直後の直接目的語でも出現することがある。ただし、その目的語を文頭に倒置した場合は必ず話題のalが必要(かつ、二つalが続いた場合、こちらのalが消えてしまう)なため、もとの文からalがあるかないかは判断する必要がある。
また、話題のalと同様に子音で始まる語の前では、その語と一体の単語であると見なして/a:/あるいは/ao/と発音されることもある。
Cja bonsnet jao al kela.
彼は私の頭を叩いた(直訳:彼は私を頭について叩いた)
Ja sikis cjao.
私は彼を知っている(存在を知っている)
Ja sikis al cjao.
私は彼について知っている(彼の人となりや経歴などについて知っている)
Ja osamanes al cjao.
私は彼に勝った(日本語では与格であるが、デナスティア語ではalを使用する)
teu:~の(前置詞属格)
デナスティア語で「AのB」と言いたい場合は、一般にAを属格にして、Bに前置することが多い。しかし「A-t B」の語順だけでなく「B teu A」という語順もまた同様に認められている。
これは、現代デナスティア語の属格名詞が関係節をとることができないことに起因しているという説もあるが、詳細は定かではない。
また、一般に人称代名詞がこの前置詞の後ろに置かれることは非常にまれである。
Ja muos feu nuinieve teu tzarilske.
私は王都の図書館へ行く。
feu:~に、~へ、~のために、~にとって(与格)
いわゆる間接目的語を示す前置詞として使われる。
Cofi, ja geves omle feu cjao.
今日、私は彼にリンゴをあげる。
Feu jao sa dat jestoi.
私にはそれは簡単だ。
Co na tlabonseutzo feu jao!
私のために(あなたたちは)戦わないで!
jili:~から、~によって(奪格)
出発点や、原因を表す名詞につく前置詞。受動文の動作主を示すのにも用いられる。
Ja ruis jili Denastia Tzarnuir.
私はデナスティア王国から来ました。
Sun pano danot klaunteo jili Gellfo.
その魚たちはゲルフォによって食べられた。
Jili jao, eih na kanos muoe seit.
私のせいで、私たちはそこに行けなかった。
nit:~で、~にて、~の時に(地格、時格)
場所や時間を表す前置詞。
Ja vasnes nit tzartans.
私は王城で踊った。
Ja kvanes cjao nit nuinieve.
私は図書館で彼を見た。
cjo:~で、~を使って(具格)
何かを手段としたことを示す前置詞。基本的に物に対して使われるが、まれに人をモノ扱いした時(貶めや激務)にも使われる。
Ja pinanes omla cjo jat taja.
私は私の手でリンゴをとった。
Ja colnes cjao cjo jat amcjeh.
私は私の友達を使って彼を呼んだ。
at、dankeh:~と共に(随伴格)
何者かと共に行動した時、その何者かを表現するのに使用される前置詞。人に使われることが大半だが、動物や物に対しても使われることがある。
なお、再帰代名詞を後ろに繋げると「一人で」のような意味合いを持たせることができる。
近頃はdankehという語も用いられるようになりつつあるが、強調したい場合を除いてatを用いるのが普通である。
Ja sufes teij at jat mava.
私は私の母と共にお茶を飲む。
Ja jukais at cun tcjui.
私はこの鳥と旅をしている。
Ja muos seit at jao-la.
私は一人でそこに行く。
mus:~なしに(不具格、不随伴格)
cjoやatが何かを伴っているという意味であるのに対し、この前置詞はその何かを伴わずに成し遂げたことを示すのに用いられる。
Ja fehtznes bucj mus mege.
私は魔法を使わずに森を燃やした。
Ja muones taht tzarilske mus jat pava.
私は私の父を伴わず王都の外へ行った。
方向と場所の前置詞
van:~の中に
外から中へと向かうことを示す前置詞である。
Cjeih muonot van bucj nit fili.
彼らは夜に森の中に行った。
Tcjeo muonot van tlame.
鳥たちは空に行った。
taht:~の外に
中から外に向かうこと、あるいは外に存在することを示す前置詞である。
Ja muones taht tzarilske.
私は王都の外に行った。
Al mege kaus kvae taht tans.
魔法は城の外で見ることができます。
fo:~の上に
何かの上にあることを指す。上に直接乗っている場合と、少し離れて浮いている場合のどちらにも使用することができる。
また、動詞と合わせることで上に向かう様子を表すことも可能である。
Kefi dat fo ida.
ケーキは机の上にある。
Fo eo, focjfonolo daut.
私たちの上に雲がある。
fik:~の下に
foとは逆に、下にあること、下にくっついていること、下に向かったことを表す。
Ja sacjtalones jat kefi fik ida.
私は私のケーキを机の下に落とした。
al:~のそばに
何かの近くにある・いることを示す前置詞。発音の規則は取り立てや格の前置詞alと同じものが適用される。
Jat kucjetia nani dait al jao tunefeo.
私の妹はいつも私のそばにいる。
Ja kvanes cjao al nuinieve.
私は彼を図書館のそばで見た。
alcjeh:~のそばに
使い方は上記のalと同様。ただし、発音は/a:ʂe/である。
alの意味範囲が広すぎたせいで生まれた前置詞であるとされている。
Alcjeh nuinieve, ja kvanes cjao.
図書館のそばで、私は彼を見た。
tzieh:~の前に
ある場所の正面前に、あるいはある時間よりも過去の時点に存在していたことを表す。比喩的に用いられる場合もある。
Cja jaunet feu jao al cja muot tzieh futcja tzieh jat jaok.
私の家の前で、彼は私に彼がフーチャの前に行くと言った。
Tzieh fimosti, jo bak rioke feu jot jaok.
日没の前に、あなたは家に帰らなければならない。
noteu:~の後に
tziehとは逆に、ある場所の後ろ、あるいはある時間よりも未来の時点のことを表す。比喩的に用いられる場合もある。
Cja dat noteu juo. 彼はあなたの後ろにいます。
Noteu jiki, ja muones feu sun tana.
仕事の後、私はその店へ行った。
cjefe:~の方へ
与格前置詞feuとは異なり、あくまで「~の方」という曖昧さが残る前置詞である。
向かっている先が断定できないものの、状況から推測した場合に用いられる。
Cja moinet cjefe cjuipeh.
彼は海の方へと向かっていた。
fueh:~まで、~まで継続的に(着点)
向かう先を示す前置詞の一種。
時間についても用いることができる。
Cofi, ja muos fueh sun ilske.
今日、私はその場所まで行く。
Eih melnos fueh fili.
私たちは夜まで遊んだ。
cjime:~までに(限度)
その点を限度とする表現。
提出期限や、行動の限度など、時空間の最大限の区切りを示す。
Co ambautzo jili sepe cjuvoi cjime Tzarilske.
王都までに馬から降りてください。
Tvatzo sa cjime putom.
明日までにそれを終わらせなさい。
keih:~を通って、~の間に(線的)
AとBの間に位置するという意味を持つ。
また、その位置を通過するという意味でも用いられる。
Tzarilske dat keih icjo es cjuipeh.
王都は山と海の間にある。
Ja muos Tzarilske keih sun bucj.
私はその森を通って王都に行く。
tcjiman:~において、~の間に(空間的)
ある場所の中全体を示す前置詞
ただし、空間というよりも人を中心として捉える場合に用いられることが多い。空間を中心に捉えるのであればnitの方がより好まれる。
Sun stoj dat mol sikintoi tcjiman Denastia feko.
その話はデナスティア人の間でよく知られている。
tzalgentes:~の間に(接触あり)
あるものの間にあることを示す前置詞
ただし、keihやtcjimanとは異なり、密度が高く、接触していることも含意する。
なお、この接触というのは比喩的ともいえ、密接な関係にも使用できる。
Eit jaok dat tzalgentes asoitia katveneo.
私たちの家は大きな建物の間にある。
その他の前置詞
tol:~として(置き換え、意義、評価)
前に名詞がある場合、この前置詞に続く名詞を直前の名詞と等価であるように見なす意味合いがある。
また、後ろの名詞と強力に結びついて解釈される場合もある。
Jo na colek jao tol jot amecjeh feu jot jaok ?
あなたは私をあなたの友達としてあなたの家に呼んでくれないの?
Tol jot pava, ja na kas muoe seit at juo.
君の父として、私は君と共にそこに行くことはできない。
tuo:互いに(相互)
ある動作が互いに影響を及ぼしあっている場合に使う。この前置詞を伴った名詞句は、比較的柔軟に移動することができる。ただし、動詞の活用に注意が必要である。
また、他の前置詞と異なり、後ろに来る要素を他方に取り込み、前置詞だけが残るという奇妙な現象が起こる前置詞でもある。
Ja lufes tuo Milehcja.
私はミレーシャと愛し合っています。
Ja tuo Milehcja lufeus.
私とミレーシャは愛し合っています。
Tuo Milehcja, ja lufes.
ミレーシャと私は愛し合っています。
Eih lufeus tuo.
私たちは愛し合っています。
なお、以下は非文である。
*Tuo eo lufeus.
この文の直訳は「私たちは私たちと愛し合っています」の意味になるが、これは再帰であり、相互ではない。そのため、非文となる。
*Eih lufeus tuo la.
この文の直訳はやはり「私たちは(私たち)自身を愛し合っています」となり、上記文と同様に再帰の意味合いになる。
そのため、再帰代名詞は相互の意味を示す前置詞tuoと共起させることはできない。
tzak:~にある、~にいる(存在地)
存在の場所を示す前置詞である。nitと似たような使い方をされる。ただし、どちらかというと前置詞というよりも関係節のような翻訳がなされる場合が多々ある。過去時制のように訳される場合もある。
Ja kvanes Cada tzak nuinieve.
私は図書館にいるカダを見た。
Ome tzak fik casa ul etcjenihnet seit fueh tvai teu smer
屋根の下にいた猫は雨の終わりまでそこで待っていたのかもしれない。
po:~のような、~のように(比喩)
比喩的な表現に用いられる。この前置詞で表された名詞は、副詞のように振る舞うこともある。
Cja danet po esloi.
彼は精霊のようであった。
Cja cjuonet mega po esloi.
彼は精霊のように(な)魔法を使った。
al:~より(比較。話題の一種とも?)
形容詞に後置することで、主語がこの前置詞に後続する名詞より、より形容詞で表された性質を強く持っていることを示す。
逆に、主語よりも後続する名詞の方が性質を強く持っていることを示したい場合は、形容詞の直前にfik(下に)を挟む。
他のal同様に、次の語が子音字で始まる場合は/a:/あるいは/ao/と発音される場合がままある。
Ja das mitoi al cjao. 私は彼よりかわいい。
Ja das fik mitoi al cjao. 私より彼の方がかわいい。
詳しくは12-01.比較文、最上級文を参照のこと。