02-01.代名詞について
本ページでは、デナスティア語の代名詞について解説している。
人称代名詞
ある名詞を受け、その名詞の代用として用いることができる単語のことを人称代名詞と呼ぶ。
デナスティア語の人称代名詞は原則として人間(やそれに準ずる存在)、あるいは一部の動物に対して使用することができる。
人称代名詞は単数形と複数形を区別する。
また主格(~が)、属格(~の)、対格(~を)の三つの格を持つ(カッコ内の助詞は翻訳例である)。
格ごとの用法
主格: 主語の位置で用いる。「~が」という助詞があてられる。
属格: 他の名詞の前に置くことで「~の」という意味合いを示すことができる。必ず「-t」という語形で終わる。
(例:jat amecjeh 私の友達)
対格: 目的語の位置で用いる。また、前置詞の直後に置かれた代名詞は必ず対格形をとる。
ただし、対格は代名詞以外にはない。そうした場合は仕方なく主格が用いられる
Ja kvas juo. 私があなたを見る
Jo kvak jao. あなたが私を見る
デナスティア語の基本語順は「SVO(主語、動詞、目的語)」である。そのため、特に主語と目的語については語順を入れ替える(そして語形を変化させる)だけで意味が逆転してしまうので注意が必要である(このあたりは英語などに似ている)。
なお、目的語の位置に主格を置いたり、主語の位置に前置詞なしで対格を置いたりすると非文となる。
前置詞などを用いることで語順を入れ替えることもできるが、詳細は05-01.前置詞のページを参照のこと。 以下に各人称の代名詞ごとの変化表を示す。
一人称代名詞(私、私たち)
主格(~が) 属格(~の) 対格(~を)
単数形 ja jat jao
複数形 eih eit eo
二人称代名詞(あなた、あなたたち)
主格(~が) 属格(~の) 対格(~を)
単数形 jo jot juo
複数形 tzo tzot tzuo
複数形は後述する二人称の親愛人称代名詞と同形である。そもそも複数形では区別されない。
三人称代名詞(彼、彼女、彼ら、彼女たち)
主格(~が) 属格(~の) 対格(~を)
単数形 cja cjat cjao
複数形 cjeih cjeit cjeo
デナスティア語の三人称代名詞は男女の区別なく同じ語形を使用する。
指示代名詞
指示代名詞とは簡単にいうと「これ(ら)」「それ(ら)」「あれ(ら)」である。言い換えれば物について示す代名詞である。
ただし、完全に同一のものを指すだけではなく、同質のものを指す場合もある。
主格と対格を持つが、単数形ではその主格と対格を区別しない。人称代名詞や一般名詞、固有名詞などと異なり属格を持たないが、それらを持たないかわりに指示冠詞と呼ばれるものがあり、「こ(れら)の」「そ(れら)の」「あ(れら)の」などはそれらの冠詞によって表される(冠詞については別のページに記述する)。
指示代名詞の単数形は主格と対格が同じ形をとる(複数形は人称代名詞同様に主格と対格の形が異なる)。
ちなみに、動物については人称代名詞を使う場合も指示代名詞を使う場合もあるが、これは話者の好みや感情によるところが大きい。
中立指示代名詞
主格(~が) 対格(~を)
単数形 sa sa
複数形 teih teo
中立指示代名詞とは、英語のitやtheyに相当する気分で使える代名詞である(英語に詳しくないから知らんけど)。
後述の〇称指示代名詞のうち単数形では中近称指示代名詞と、複数形では遠称指示代名詞と変化形が全く同じであるが、それらとは地味に違う、らしい。というか迷ったら上述の形を使うとよい。
正直言って、以下の〇称指示代名詞はほぼ使用されない。
近称指示代名詞
主格(~が) 対格(~を)
単数形 co co
複数形 ca(coa) cao
発音の項でも触れたが「coa」の発音は/ka/である。とはいえ、一般的にはcaと綴ることが多い(しかもこの代名詞が出現すること自体まれである)のでそこまで気にする必要はないのだが。
中近称指示代名詞
主格(~が) 対格(~を)
単数形 sa sa
複数形 seih seo
ご覧の通り、単数形は中立指示代名詞と同形である。
遠称指示代名詞
主格(~が) 対格(~を)
単数形 ta ta
複数形 teih teo
ご覧の通り、複数形は中立指示代名詞と同形である。
親愛人称代名詞
親愛人称代名詞とは、二人称(の単数形)と三人称で使用される特殊な代名詞である(※というかそもそも、歴史的(デナスティア王国のデナスティア語の)には二人称にはもともと親愛人称代名詞はなく、単数形だけ補充形が入ってきたのでいびつなことになっているだけである)。
話者にとって親しい相手を表すのに用いる。二人称の場合は「君、お前」三人称の場合は「あの子」といった訳し方がある。
が、二人称の親愛人称代名詞はかなり親しい関係でないと馴れ馴れしくなるのであまり使わない方が無難である(単数形の話。複数形はそもそも区別されないので)。BFFな相手や恋人同士なら使ってもおかしくはないのだが。
ちなみに、三人称の親愛人称代名詞は面と向かって言っていない分、まだ親しさが若干薄い場合でも使えないことはない。
二人称親愛代名詞(君、お前、君たち、お前たち)
主格(~が) 属格(~の) 対格(~を)
単数形 tzu tzut tzuo
複数形 tzo tzot tzuo
ご覧の通り、もともとは現在の親愛代名詞単数形が普通の二人称代名詞の単数形として機能していた。
しかし、現在ではあまり用いられない。また、単数形と複数形で対格が同じ形を取ることにも注意が必要である。
三人称親愛代名詞(あの子、あの子たち)
主格(~が) 属格(~の) 対格(~を)
単数形 ma mat mao
複数形 meih meit meo
なお、後述する尊敬人称代名詞の一人称と全く同じ変化をするが、主語の場合は動詞の活用形で区別できるし、そもそも出現自体が稀なのであまり気にする必要はない。デナスティア王国の貴族的な社会方言の文書を読む際には気をつける必要があるが、おそらくそのような文書に目を通すことになる方は読者の皆様の中にはまずいないだろう。
というわけで、基本的にこの変化を起こすのは三人称の親愛代名詞だと思っておけば大丈夫である。デナスティア王国の貴族関連の文書や文学作品に触れたりしない限りの話ではあるが。
尊敬人称代名詞
尊敬人称代名詞とは、デナスティア語の社会方言の一種であり、主に貴族位の人々が用いる。 はっきり言って、上級者を目指さないのであれば次の再帰代名詞の項まで飛んでも学習上何の問題もない。
用語に「尊敬」と入っているが、一人称の形もあるので、実質的に丁寧な形とも言えるかもしれない。ただし、二人称や三人称については尊敬の意味合いが入っているとも取れる、いわゆる「敬意の方向」的な問題が入ってくるので注意が必要である。
まず、各人称の語形変化については以下の表の通りである。
一人称尊敬代名詞(わたくし、わたくしたち)
主格(~が) 属格(~の) 対格(~を)
単数形 ma mat mao
複数形 meih meit meo
三人称の親愛代名詞と同じ語形変化をするので注意が必要である、が主語の場合は動詞の語形変化が三人称(親愛)代名詞と異なるのでそこまで気にする必要はないだろう。
二人称尊敬代名詞(貴方、貴女、貴方方、貴女方)
主格(~が) 属格(~の) 対格(~を)
単数形 faj fait faijo
複数形 feih feit feijo
複数形は一般的な人称代名詞の複数形と変化が似ているが、対格が若干長い語形になっているため注意が必要である。
三人称尊敬代名詞(あのお方、あの方々)
主格(~が) 属格(~の) 対格(~を)
単数形 laj lait laijo
複数形 leih leit leijo
二人称の尊敬代名詞と語頭の子音が違うだけで後は同じである。
尊敬代名詞の運用上の注意点
尊敬代名詞は主に貴族たちが使う社会方言である。そのため、使用する場合は「話者自身、聞き手、語られる主体」の三者の身分の関係性を意識して使う必要がある。
例えば、ここに「王」「公爵」「男爵」の三人の登場人物がいるとする。身分は「王>公爵>男爵」で一番偉いのが「王」である。以下に、この三人が代名詞を使う場合、尊敬代名詞を使うか通常の人称代名詞を使うかという問題が生じる。それをまとめたのが以下の表である。
まずは念のためどの代名詞の人称と尊敬の有無についてまとめておく。
一人称 二人称 三人称
代名詞 ja(eih) jo(tzo) cja(cjeih)
尊敬代名詞 ma(meih) faj(feih) laj(leih)
それでは、以下に上記「王」「公爵」「男爵」の三人がそれぞれに言及する場合に尊敬の有無がどのように変化するかを示す。
王
聞き手/話題の人物 王 公爵 男爵 王と公爵 王と男爵 公爵と男爵
公爵 ja,ma jo cja eih,meih eih,meih tzo
男爵 ja,ma cja jo eih,meih eih,meih tzo
公爵
聞き手/話題の人物 王 公爵 男爵 王と公爵 王と男爵 公爵と男爵
王 faj ja cja meih leih eih
男爵 laj ja,ma jo meih leih eih,meih
男爵
聞き手/話題の人物 王 公爵 男爵 王と公爵 王と男爵 公爵と男爵
王 faj cja ja feih meih eih
公爵 laj faj ja feih meih meih
聞き手の人物より身分が低い人物を話題にする場合は、通常の人称代名詞を用いる。たとえその話題の人物の身分が、話者の身分より高くても、聞き手の身分より低ければ通常の人称代名詞となる。
逆に、話題にする人物の身分が聞き手より高ければ、基本的に尊敬人称代名詞を用いると考えて問題ない。たとえその聞き手の身分が、話者の身分より高くても例外ではない。
複数人をまとめた言い方、つまり複数形にする場合は、その中に自分が含まれているかいないかに関わらず、その話題の人物群の中で最も身分の高い人物の身分として扱う。
一人称については好みの問題であるので、自分が聞き手や話題の人物より高貴な人物であっても通常の人称代名詞を用いることがままある。とはいえ、複数形の場合はひとつ上の規則を忘れてはならない。
なお、上記規則に基づいて平民が発言する場合は以下の通りになる。もちろん、平民の身分は男爵よりも低い一番下である。
とはいえ、王宮などに出入りしないほとんどの平民はこの社会方言を知らないと思われるが。
平民
聞き手/話題の人物 平民 王 公 男 王公 王男 公男 平王 平公 平男 平王公 平王男 平公男
王 ja faj cja cja faj faj cjeih meih eih eih meih meih eih
公爵 ja laj faj cja faj laj faj meih meih eih meih meih meih
男爵 ja laj laj faj laj faj faj meih meih meih meih meih meih
もしデナスティア王国で貴族身分の人々と話をする機会があれば、基本的にこの表を参考にすればよい。もっとも、同じ公爵位でも身分の上下があったりする場合もあるので油断ならないが。
再帰代名詞
再帰代名詞とはその名の通り「自分」とかそういった意味合いを示すための代名詞である。
再帰代名詞もまた指示代名詞同様に属格(~の)を持たない特殊な代名詞である。
デナスティア語の再帰代名詞には二種類あり、ひとつは独立再帰代名詞もうひとつは複合再帰代名詞である。
独立再帰代名詞
日本語でいう「自分」などにあたる。再帰する対象が主語の場合と、主語以外の場合(そして主語以外の場合はその名詞の数にも)で語形が変化する。
例えば日本語混じりで「太郎は一郎が次郎にlaの写真を見せたと言った」と言った場合、laが指し示すのは「太郎」または「一郎」である。一方laoとすれば、「次郎」しか指さなくなる。
独立再帰代名詞
再帰対象の数/再帰対象 主語 主語以外
単数形 la lao
複数形 la leo
再帰代名詞は主に目的語の位置に現れるが、再帰対象の形にのみ一致する。
複合再帰代名詞
日本語でいう「私自身」あるいは英語のmyself。
原則として「代名詞の対格+ハイフン+la」という語形で表される。
ただし、独立再帰代名詞とは異なり、再帰する対象が主語であろうとなかろうと使用でき、再帰対象が主語ではない場合でも「la」で一定である。
ただし注意点として、複合再帰代名詞は最小の時制節の中での解釈しか許されない。これは例えば日本語で「太郎は一郎が次郎に彼自身の写真を見せたと言った」の「彼自身」の解釈が「一郎」か「次郎」である可能性が高くなるのに似ている。
(上記の例で「彼自身」が含まれる最小の時制節は「一郎が次郎に彼自身の写真を見せた」である)
複合再帰代名詞一覧
人称と種類/語形 単数対格 複合再帰代名詞単数形 複数対格 複合再帰代名詞複数形
一人称代名詞 jao jao-la eo eo-la
二人称代名詞 juo juo-la tzuo tzuo-la
三人称代名詞 cjao cjao-la cjeo cjeo-la
中立指示代名詞 sa sao-la teo teo-la
近称指示代名詞 co cuo-la cao cao-la
中近称指示代名詞 sa sao-la seo seo-la
遠称指示代名詞 ta tao-la teo teo-la
二人称親愛代名詞 tzuo tzuo-la tzuo tzuo-la
三人称親愛代名詞 mao mao-la meo meo-la
一人称尊敬代名詞 mao mao-la meo meo-la
二人称尊敬代名詞 faijo fai-la feijo fea-la
三人称尊敬代名詞 laijo lai-la leijo lea-la
これだけ見ると、なぜ指示代名詞の単数形の対格が主格と同じ形なのかが不思議ではあるが、ないものはない。
指示代名詞の単数形そして二人称及び三人称尊敬代名詞は-laの前に来る語形が対格形とは異なるため注意が必要である。
本当は表の中でも強調表現とか使いたかったけれど使えないのが残念で仕方がない。←文句言わないの。