歩行発達モデル(多賀)
ヒトの歩行の発達に基づいて歩行発達モデルをデザイン
2つの系から構成
リズム生成系:各関節の筋へ出力を送る神経振動子からなる
姿勢制御系
4段階の自由度の変化を仮定(図左):自由度の凍結と解放
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1. 原始歩行期
身体を支えて立たせた状態で,リズム生成系が原始歩行の基本パターンを生成
脚1本あたり3つの神経振動子(腰,膝,足首)があるが,強く同期させる:動的自由度の凍結(freezing)
姿勢制御系は未発達で,ほとんどリズム生成系に影響しない
2. 姿勢制御発達期
姿勢制御系が,伸筋と屈筋の同時興奮によって静的な姿勢の保持を行う
関節角の自由度を凍結することで立位姿勢の安定性を獲得:静的自由度の凍結
姿勢制御系の発達を優先し,リズム生成系は抑制 → 原始歩行の消失を再現
3. 独立歩行の開始
リズム生成系と姿勢制御系の相互作用を調節
姿勢制御系が姿勢を確保しながら,徐々にリズム生成系が姿勢制御系を抑制していくことで,関節角の自由度が解放され独立歩行が現れる:静的自由度の解放(freeing)
4. 成人型歩行
3.ではまだ動的自由度の凍結により振動子が同期しており,タイミングよく地面を蹴られないため小刻みな歩幅
同期を解除することで,各振動子の位相が次第に独立していき,複雑な筋活動パターンをもつ成人型の歩行へ移行:動的自由度の分化
なぜ動的自由度の解放ではなく分化?yosider.icon
一連の自由度の凍結と解放により,図右のようにシミュレーション上で歩行の発達過程を再現
静的な立位姿勢保持と動的な周期運動という歩行の矛盾する要請をみたすため,自由度の凍結と解放を通して段階的に学習
ただし,ここでの自由度の凍結/解放機構は自発的なものではなく外部から与えたもの
真の意味で自由度問題を解決してはいない
神経系の発達過程についてより詳しい知見と,自発的な変化に関する理論が必要
運動の意図がどこから生じるのかという問題も残っている
原始歩行をする新生児に意図は感じられないが,独立歩行を始めた赤ちゃんには明らかな意図が感じられる
Freezing and freeing degrees of freedom in a model neuro-musculo-skeletal system for development of locomotion
G. Taga, 1997
#発達 #歩行
#脳と身体の動的デザイン―運動・知覚の非線形力学と発達