一酸化窒素
NO
分子量30の無色透明な無機ガス
酸素に触れると直ちに酸化されて二酸化窒素となる
生体内での機能
シグナル伝達分子として働く
アルギニンから一酸化窒素合成酵素と補酵素NADPHによって合成される
細胞膜を透過して拡散しやすい
生体内で速やかに酸化され、半減期は1秒程度と短い
多くのシグナル伝達分子が受容体を介して作用するのとは異なり、直接標的細胞に作用する珍しい分子
生体内分子(主にタンパク質)を種々の形で修飾することで作用する
可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化してcGMP産生を増やす
生成されたcGMPは複数の経路を通じて下流へシグナルを伝達する
cGMP依存性タンパクリン酸化酵素を活性化し、種々のターゲット分子をリン酸化で調節
脳でも海馬や小脳にターゲットがあり、シナプス可塑性関連のタンパク合成を調節
EDRFとして血管拡張に重要
cAMPと同様に環状ヌクレオチド依存性イオンチャネルを開口させる
特に視覚や嗅覚の受容に重要
cAMP特異的ホスホジエステラーゼ(PDE)を活性化し、PDEによってcGMPは速やかに分解される
フィードバック機構?yosider.icon
タンパク質をニトロシル化する
いくつかの神経タンパク質の作用が変化する
NMDA受容体、AMPA受容体、シンタキシンなど10種類以上が知られる
タンパク質をニトロ化する
細胞のストレス応答を引き起こし、細胞死の誘導に重要
神経系での機能
シナプス可塑性の調節因子
特定の膜に閉ざされたコンパートメントから、別の膜に閉ざされたコンパートメントに、NOのガス拡散特性によって情報を伝達する
色々な放出部位がある
https://gyazo.com/e1026ee1e75b710f7482bd63da262ab7
A. シナプス前部から伝達物質と共に放出される場合
B. シナプス後部からシナプス伝達と逆方向に放出される場合
C. シナプス近傍の抑制性介在ニューロンから放出される場合
シナプスの可塑性に必須な因子というより、状況に応じて可塑性を促進する調節因子として働く
小脳の長期抑圧
海馬の長期増強
大脳皮質の長期増強
脳血流量の調節因子
EDRFとして脳でも血流量調節に関わる
血管内皮細胞以外にも一部の自律神経終末はNOを放出する
脳では、脳活動によって局所的に脳血流量が増大する
nNOSの存在から関与はすると考えられるが、他の血流調節因子も関与する
神経細胞死への関与
免疫系の細胞でiNOSからNOが作られ、細胞障害性を示す
脳に炎症があるとき、免疫系の細胞によって神経細胞死が誘導される
一方で低濃度では神経細胞の保護作用を示すという知見もある
出典
一酸化窒素 - 脳科学辞典