2.4 概念操作の基本パターン
理論の作り方について。
理論は〈明確に定義された諸概念の体系〉と考えてよい。それらの概念をどうやってこしらえるかについて、いくつかの基本となるパターンがある。『ビデオゲームの美学』で使っている方法は、おそらく以下の4つ:
① 先行研究からそのまま借用する。
一番らくちんなタイプ。
ただし、先行研究とそれが属する分野が全体として明晰性・整合性・体系性などを重視している必要がある(そうでないと物事の理解をよけい混乱させる方向になる。それが目的ならそれでいいが)。この判断は自力でしないといけない。
『ビデオゲームの美学』における〈フィクション〉〈インタラクティブ性〉などはこのパターン。
② 既存の概念を定式化する。
いわゆる概念分析。記述的定義と言われることもある。
既存の概念は、先行研究で示されている場合もあるし、日常的に使われている場合もある。
どういう概念かを事例などをベースに説明したうえで、それにフィットする明確な特徴づけを自力で与える必要がある。
分析系の哲学者はこれが得意。
『ビデオゲームの美学』における〈ゲームメカニクス〉〈シミュレーション〉などはこのパターン。
③ 既存の概念を使いやすいように改訂する。
いわゆる概念工学。カルナップの解明(explication)に近い。
概念分析との主な違いは、既存の概念を明確にすることを目指すのではなく、それをより使える/より説明力の高い/より事柄の本質に即した/検証可能性がより高い概念に変えることを目指すという点にある。
結果として、たとえばカバーする範囲(外延)がもとの概念と違っていても問題ない。
『ビデオゲームの美学』における〈ゲーム行為〉〈芸術形式〉などはこのパターン。
④ 新しく概念を作る。
いわゆる規約的定義。
定義をする際の制約はとくにないが、矛盾、多義性、曖昧さなどがないか注意したほうがよい(そういうのがあっても定義自体は可能だが、理論概念として使い物にならないだろう)。
『ビデオゲームの美学』における〈美的行為〉〈ミミクリ〉などはこのパターン。