2.2 哲学者は外に出ない
哲学の研究は、基本的に部屋(部屋である必要もないが)で他人が書いた文献を読んで、自分の頭で考えるだけだ。つまり、哲学者は外に出てデータを取らない(少なくとも、何らかの手続きに沿って新しいデータを取ることが研究遂行上の必須要素ではない)。
この哲学に一般的に見られる方法は、しばしば「アームチェア哲学」と揶揄される。実際には「データを取らない」というのは不正確で、「哲学者自身の直観(intuition)を主なデータにする」と言ったほうが正確だが、いずれにしても外にデータを取りにいかない傾向にあるのは間違いない。
なぜそのような方法で研究が成り立つと言えるのかはあとで説明するが、ともかくこの点で「哲学的なアプローチでのゲーム研究」は、2.1.3 方法のまとめで示した「理論研究」の中に含めてよいと思われる。 実際『ビデオゲームの美学』の内容は、おそらく「形式分析」にかなり近い仕事がメインになっている。