MANDRAKE
多くの古きご贔屓衆はその誤りを指摘できるが、おさらいの意味を込めて訂正する。
まず、私の元に使者を送り、呼びつけた師は「もう一度一緒にバンドをやろう」などと言っていない。レベルが違う。ギターのヘッドに貼られているラベルも違う。
師が私を最初に呼びつけたのは私が中学生の時で、私は呼びつけられてこう言われた。
「おまえは何者だ。中学生のくせに生意気が過ぎる。当家への出入りを許す。」
そう言って師はパンパンと手を叩き「ストロベリー!」と叫んだ。
階下のお母さまに店のストロベリー牛乳をコイツに飲ませよとの合図。
師は牛乳店の一人息子。ご両親は激しく日本人だが、師はミックスでファラン系のアジア人だった。
その後師は少年ステルスの脳内に煤のようにこびりついた大衆低俗音楽の呪詛を徹底的に破壊して放り出した。
現在の私の音楽も大衆低俗音楽だが、正確には第二種大衆低俗音楽である。
師によって音楽のデトックスが済んだステルスはバンドのメンバーと嗜好が完全に乖離し、ヤになってしまい、音楽をやめてしまい、モトクロスになってしまい、事故ってしまい、次にやることを失っているところに、激しく長髪な男がやって来る。 彼は「XXさん(師)に平沢を訪ねろと言われたので来た」と言った。
それで、一緒に師の所へ行くと師はこう言った。
「おまえ、コイツとバンドやれ」
私は「はい」と答えた。
19歳。
その後、師とは一度もお会いしていない。
叱られるのが怖くて最初のアルバムさえ献上していない。
Q:マンドレイク”というバンド名を考案されたのは平沢さんなのでしょうか? また、名前の由来が知りたいです。
A:それは地下鉄千代田線の中で行方不明になったヴォーカリストと錬金術についての議論をしている時に両者の口から出た名称です。マンドレイクは錬金術で使用される植物です