位相空間の定義を圏論の言葉で解釈する
位相空間の定義って、圏論の言葉でスッキリ書けそうだったので、ここにメモ書きを残しておきます。
(以下で述べる直積、直和、始対象、終対象の定義はざっくりとしたものですので、各自、本などでご確認ください)
そもそも、集合$ Xがあったときに、その位相$ \mathfrak{O} \subset P(X)というのは位相空間がわからないにも書いてあるとおり、次の3つの条件を満たすものでした。 (1)$ X, \emptyset \in \mathfrak{O}
(2) $ Xの部分集合$ U, Vが$ U, V \in \mathfrak{O}ならば、$ U \cap V \in \mathfrak{O}.
(3) $ \mathfrak{O}の元の任意の族$ \{ U_i \}_{i\in I}に対して、$ \bigcup_{i\in I} U_i \in \mathfrak{O}.
この3つの条件を圏論の言葉で書き換えるのが今回の目標。
冪集合を圏とみる
ここで、集合$ Xの冪集合$ P(X)を圏として見ることについて紹介しておきます。
圏$ P(X)の定義
対象は$ Xの部分集合 (i.e. $ P(X)の元)
$ U, V \subset X間の射$ U\to Vは関係$ U\subset V
上では$ P(X)を圏とみなす方法を定義として挙げましたが、同じようにして$ \mathfrak{O} \subset P(X)も圏とみなすことが出来ます。
さて、圏$ \mathfrak{O}の中での$ \capと$ \cupの役割について射の視点から考えてみたいと思います。
まず、$ U\cap V \subset Uかつ$ U \cap V \subset Vなので次の図式を得ます。
https://gyazo.com/ee44221ffc003d7b78419b4898a1daf8
ここで、更に同じような図式を持つ集合$ Wを
同じような図式というのは、$ Wが$ U\cup Vと同じ図式を持つということだよねmiyamonz.icon
すなわち、元の集合論で表記すれば$ W \subset U かつ W \subset V
そうですTotti95U.icon
考えると、必ず$ W \subset U\cap Vとなるので、次の図式を得ます。
https://gyazo.com/7a7e7d813c250abf660f852bc16cd3e3
さらに、$ W \subset U, W\subset Vなので最終的に次の図式が得られます。
https://gyazo.com/a11c9b700d40fb7692ec664b876ea7ed
圏論の言葉で、上のような図式を持つ対象$ U\cap Vを$ Uと$ Vの直積といい、$ U\times Vと表します。
同じようにして、$ U\cup Vに対して次の図式が得られます。
https://gyazo.com/622139741199c1ffa5aba18803f22c51
上の図式を持つような対象$ U\cup Vを圏の言葉で$ Uと$ Vの余直積といい、$ U\oplus Vと表します。
ここ、$ \capじゃなくて$ \cupかな?miyamonz.icon
指摘ありがとうございます。修正しましたTotti95U.icon
よって、位相の定義の(2)と(3)は次のように書き換えられます。
(2) $ \mathfrak{O}の対象$ U, Vに対してその直積$ U\times Vが存在する。
(3) $ \mathfrak{O}の対象の族$ {U_i}_{i\in I}に対して、その余直積$ \bigoplus_{i\in I} U_iが存在する。
また、$ \mathfrak{O}の中での$ Xと$ \emptysetの他の対象との関係について考えてみると
任意の対象$ Wに対して次の図式が存在することが分かります。
https://gyazo.com/3602e6aa3ab50687f05214644c2f54c0
$ Xのように、任意の対象からの射が存在する対象をその圏の終対象
$ \emptysetのように、任意の対象への射が存在する対象をその圏の始対象
といいます。
よって、位相の定義(1)は次のように書き換えられます。
(1) $ \mathfrak{O}の始対象、終対象が存在する。
まとめ
以上の議論から、集合$ Xの位相$ \mathfrak{O}を圏とみなしたとき、$ \mathfrak{O}は次の性質を持ちます。
(1) $ \mathfrak{O}の始対象、終対象が存在する。
(2) $ \mathfrak{O}の対象$ U, Vに対してその直積$ U\times Vが存在する。
(3) $ \mathfrak{O}の対象の族$ {U_i}_{i\in I}に対して、その余直積$ \bigoplus_{i\in I} U_iが存在する。
逆にこのような性質を持つ圏を位相の一般化とすることも出来そうです(実際にそういう概念があるかどうかは分かりません)
位相に関するWikipediaのページには「閉集合は開集合の双対である」という文があるのですが、
この性質を知れば、その文の意味も納得できるんじゃないかな~と思います。
たしかにmiyamonz.icon
漠然と諸々の性質がひっくり返ったもの、とかのイメージは持っていたが、
たとえば全体集合から開集合引いたら閉集合であるとか
図式で表現した上で、射の向きをひっくり返したもの、となるとよりその「双対性」が明らかになるな
分かりやすかった!miyamonz.icon
直積の圏論での表現、前にも見たことあった気がするけどいまいちピンときてなかったけど把握できた
積集合について考え直すmiyamonz.icon
https://gyazo.com/a11c9b700d40fb7692ec664b876ea7ed
これが示すようにUとVに射を持つような集合が、必ず$ U \cap Vに対して射を持つので、逆にこのような特徴を持って積集合を定義してやれば、圏論の上で積集合が定義できるということ
そもそも積集合ってなんだっけ…って考えたときに、AかつBみたいな、自然言語由来の「かつ」「and」みたいな意味概念を、図式とその最小性(であってたっけ?)普遍性 で定義できるのってすごいな
普遍性ですかね?Totti95U.icon
それですmiyamonz.icon