丁寧な暮らしとワンランク上の男
「丁寧な暮らし」って言葉は世の中の暮らしを「丁寧な暮らし」と「丁寧ではない暮らし」に二分したうえで、「丁寧な暮らし」を「丁寧ではない暮らし」よりも良いものとして吹聴するコピーだ。自分は丁寧に暮らしていない被害妄想家なので「うわ、排除しに来てるな」「うるさいな」と、本能的にこういうコピーに対して攻撃性を感じて、防御モード、警戒モードに入ってしまう。仲間内で、たとえば「俺さいきんコーヒーを手で挽いて毎朝ドリップしてるんよ〜」とか話すと「へ〜、丁寧な暮らしじゃん」みたいな、ちょっと茶化す言葉、カギカッコ付きで使われる言葉、両手の人差し指と中指を折り曲げながら発するみたいなノリは、その言葉が孕んでいる排他性をなんとかユーモアで丸め込んでしまおうという試みに思える。世の中の暮らしに丁寧か否かで線を引くなんて、とても「丁寧」な行為とは思えないし、そういう一行で矛盾してる感じも面白く、幼稚で、言葉の種類としては「ワンランク上の男」と同じだ。