刻読
抜き書きを年の単位で続けていくと、書き溜めていくほどに、自分のやっていることは、単にどこかで使いたい言葉を収集しているだけではないことに気付くだろう。
もともと、抜き書きは、言葉を取り扱う者すべてにとって、伝統的な基礎トレーニングであると同時に、重要な自己陶冶(self-cultivation)の方法だった。大げさに言えば、彼らの精神は、書き抜いた言葉によって、そして何を抜き書きするのか、それによってどんな人間になろうとするのかを決める選択によって、形作られたのである。
抜き書きノートは我々の認知能力を拡大する外部足場となり得る。抜き書きノートを読み返し、さらに思いついたことを書き加えることを繰り返す時、あなたは自分の脳一つで考えているのではない。あなたが抜き出した元のテキストで書いた先人たちと共に考えているのだ(技法14「私淑」)。
こうして続ければ続けるほど、この抜き書きノートは、あなたの生きた知的財産となる。
独学大全 位置No5065-5076
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