チーム着任時に行いたいリーダーズ・インテグレーション
新しいリーダーがやってきた時の様子
新しいリーダーがチームや部署にやってくる時、いろいろな緊張や不安があるものです。
メンバーは「どんな人だろう?」と様子を見ます。
リーダーは「どう見られているだろう?」と探ります。
こういう“探り合い”の時間が長引くほど、情報の流れは慎重になり、場は硬くなります。
リーダーズ・インテグレーションは、その状態をほぐすためのアクティビティです。
リーダーズ・インテグレーションの目的
リーダーズ・インテグレーションの目的は以下のようなものです。
不安や緊張を和らげる
お互いの期待を明らかにする
オープンな関係性の第一歩をつくる
その中心にあるのは、リーダーの自己開示です。
自己開示といってもリーダーの権威を示す場ではなく、「どういう人間なのか」「何を大事にしているのか」を言葉にして表明する場です。
ジョハリの窓との関係
リーダーズ・インテグレーションの背景の一つに、ジョハリの窓があります。 ジョハリの窓では、自己と他者の認識を4つの領域で整理します。
開放の窓(自分も他者も知っている)
盲点の窓(他者は知っているが自分は知らない)
秘密の窓(自分は知っているが他者は知らない)
未知の窓(誰も知らない)
新任リーダーの着任直後は以下の状態になりがちです。
自分だけが知っている情報(秘密の窓)が大きい
他者がどう見ているか分からない部分(盲点の窓)も広い
リーダーズ・インテグレーションでは以下のように開放の窓を広げることにもなります。そうなるほど、余計な想像や誤解が減り、安心感が生まれます。
リーダーが自己開示することで「秘密の窓」を縮める
メンバーが知っていることを書き出すことで「盲点の窓」を開く
心理的安全性との関係
心理的安全性とは、一般的にリスクのある事柄も言えるという状態を指します。たとえば以下のようなことです。
間違いを言える
不安を言える
「知らない」と言える
新任リーダーの着任直後は、心理的安全性が低くなりやすいタイミングでもあります。
だからこそ、リーダーが先に自己開示する。
さらに、「自分も知らないことはあります」と言うことで、リーダーが弱さを見せることで、場の構造が変わります。
リーダーに対してどこか完璧であるという思い込み、前提が崩れることで、メンバーもリスクのある発言をしやすくなります。
権威勾配をゆるめる
リーダーとメンバーの間には、自然と権威勾配が生まれます(もちろん組織の文化によりますが)。
メンバーは無意識に「リーダーは正しい」「リーダーは知っている」「リーダーはできる人だ」と見がちです。
これが強くなると、「無批判な受容が起きる」「リーダーに(間違えることができないという)過剰なプレッシャーがかかる」という状態になります。
しかしリーダーが弱みを見せ、知らないと言い、助けてほしいと表明することで、その勾配は緩みます。
リーダーズ・インテグレーションの進め方の例
所要時間は約60分。
1. リーダーの自己紹介 → 一時退席
まずリーダーが簡単に自己紹介をします。その後、いったん部屋から退席します。
2. メンバーだけで書き出す
リーダー不在の状態で、付箋に書き出します。
リーダーについて知りたいこと
リーダーについて知っていること
自分たちについて知っておいてほしいこと
リーダーを助けられること
できれば匿名にし、軽くグルーピングします。
3. リーダーとの対話
リーダーに戻ってきてもらい、質問や内容に答えていきます。
一方的に話す場にせず、追加の質問やさらに深く知るような往復の対話を意識します。
ファシリテーションのコツ
一般的なタイムマネジメントや可視化の技法ではなく、ここでは「信頼関係をつくるための対話」にフォーカスします。
1. 「安全な場である」と明確に伝える
安全性は感じるものですが、まずは言語化することが大切です。
「ここでは率直に話しても、それによって後から不利益を被ることはありません」と宣言することで、場の前提が整います。
2. 質問を出しやすくする補助線を引く
いきなり「聞きたいことをどうぞ」と言われても、なかなか出てきません。
ファシリテーターが例を提示することで、ハードルが下がります。
例:
「普段どんなタイミングでメンバーに声をかけていますか?」
「苦手なことはありますか?」
「言いにくいことは、どう扱ってほしいですか?」
少しカジュアルなものと、少し踏み込んだものを混ぜると良いです。
3. 答える時間をきちんと取る
すぐに答えが出ない問いもあります。
「少し考える時間を取りましょうか」と声をかけることで、“考えてもいい場”になります。
沈黙を許容することも、安心感につながります。
リーダーズ・インテグレーションは最初の一歩
リーダーズ・インテグレーションだけで、すべてがうまく行くわけではありません。
しかしこの最初の一歩は、
開放の窓を広げ
心理的安全性の芽をつくり
権威勾配をゆるめる
という可能性を持っています。
「そのうち自然に分かる」というのは都合の良い願望だと私は思います。だからこそ、自分たちで意図的に対話をつくることで、その後の関係性の質を左右します。