触覚的平面
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東 浩紀:インターフェイスというのは、20世紀のなかばになるまで全く存在しなかった平面なんです。映画のスクリーンとは決定的に構造が違う。スクリーンは窓だけれど、インターフェイスは窓じゃない。スクリーンは絵画の遠近法の延長線上で理解できるけれど、インターフェイスはそれでは理解できない。スクリーンのむこうには(カメラで撮影され映写機で投影された)風景があるけれど、インターフェイスのむこうにはなにもない。あるとすれば、それはもはや視覚の比喩では捉えられないデータベースです。しかもiPadになると、そこに接触が加わります。インタラクティブなインターフェイス、つまりタッチパネルですね。タッチパネルの上になにかを書き込むと、その痕跡の記憶が平面の「奥」にあるデータベースに保存される。そしてそれが呼び出されることでまた痕跡が蘇る。『新記号論 』、p101 東 浩紀:タッチパネルが浸透したのはほんとうにここ十年間くらいで、それがいまや全世界を席巻しています。お子さんがいらっしゃる方はわかると思いますが、タッチパネルは子供に親和性が高い。ぼくの娘も、幼いころは全てのスクリーンはタッチパネルだと思っていたらしく、テレビを見ると指で触ってスクロールやピンチアウトをしようとしていました。彼らの世代にとっては、最初の平面は、映画のスクリーンではなくタッチパネルになってしまっている。だからぼくは21世紀の映像批評の中心は映画ではなくタッチパネルの図像になると思っているのですが、フロイトはまさにそんなタッチパネルにすごく似たものを100年前に考えていた。『新記号論 』、p102