自己帰属感
――自分の動きと連動するものに気持ちも結びつく……。実際、VRではキャラクターが自分の通りに動きますが、そういうものに同一感を抱くという研究成果はあるのでしょうか。
山口:自分の動きから生じたものがフィードバックして自分らしさを獲得する。「センス・オブ・エージェンシー(自己帰属感)」と呼ばれるものですね。自分の身体の帰属感、その延長だと思います。もちろん通常は自分の体に対してなんですが、それ以外のものが帰属しても特に不思議はありません。 ――たとえばどんな研究があるのでしょう。
山口:鏡を見れば自分と感じますね。そこで鏡に細工をして、少し時間をずらした動きを見せても、自分とわかります。赤ちゃんでも多少のずれなど関係なく、自分の動きと相関があれば自分と感じます。そうした研究例はほかにもたくさんあります。
荒木:ゲームが得意な人は、自分の身体性をゲームの中にまで拡張している感じがあります。
山口:道具の使い方がうまい人は、道具を自分の身体の延長として感じていますね。車の運転がうまい人も、身体感を車のボディーにまで拡張して、「ここまでが自分」という感覚を持っています。つまり車と同様にVRでも自分の感覚を伸ばすことができる。それはさほど不思議ではありません。