営業担当者の想像力
営業担当者の想像力次第で、おじさんにいくらでもものを買ってもらうことができる。ものを買ってもらうだけでなく、それによって彼の人生をより良いものにできる。
しかし多くの営業担当者は、マニュアル化されていないとこうした売り込みができない。想像力を働かせる習慣を持っていないからだ。想像力は習慣であり、身につけている人にとっては何の苦労もないが、全く想像力を働かせる習慣のない人はなにかを想像することそのものが苦痛であり難しい。
例えば最近だったら「テレワークを導入したい」と言ってくる顧客に売るべきなのはノートパソコンとZOOMのアカウントだろうか。顧客が成功するためには本当にテレワークが必要なのか。無料で使えるSlackでもいいかもしれないし、テレビ電話をするのにスマホでも十分かもしれない。必要なのは機材ではなくて回線の可能性はないだろうか。だとすると実際に最適なソリューションはLINEのSIMを売ることかもしれない。業務内容によっては、専用のアプリケーションを作る提案も必要かもしれない。 顧客が実際に何を欲しているのか知るときにAIは助けになるだろう。最小限の質問で顧客の真の要望を掴める様になるかもしれない。 企画担当者として長らくソリューション営業に携わってきた身としては、寂しさを感じるよりもむしろこれからどのようなことが可能になるのか考えるとわくわくする。人間である自分は、体調や気分によって想像力がよく働くケースとそうでもないケースがあり、残念ながら全ての提案が奇想天外なものにはなり得ないが、AIが想像力を少しサポートしてくれるだけでより新しくより良い提案に結びつくだろう。
そもそも人間は、全くランダムなものを見てもそこから想像力を高めることができる。昔よくあった遊びで形容詞と名詞をランダムに組み合わせて出力するというものがある。その程度のものでも想像力を高める役には立つ。それに少しばかり知性が加わるだけでも、アイデアを考える役には立つだろう。
提案担当者以上に重要なのは、顧客の想像力を高めることだ。インターネットを買いに来たおじさんの趣味が写真撮影だと聞き出し、ミラーレス一眼や現像ソフトを売り込み、写真好きの人が集まるWebのコミュニティなんかを紹介できるような営業担当者が居たら頼もしいだろう。同じ様な役割をAIができたら、面白いことになるはずだ。自分では思いもつかなかったようなアプローチで問題を解決してくれるだけでなく、問題と認識していなかったようなことの解決も提案してくれるようなAIがあれば理想的だ。 AIによって想像力が高まることは、そのまま戦略の幅が広がることを意味する。戦略とは常に立案者の想像力という壁にぶち当たる。The only limit is your imagination。この言葉が真実ではなくなる日が来るかもしれない。