ズートピア
https://gyazo.com/6ff723902efd27565712f5408f389a3a
ステレオタイプがテーマ
個人的に今回の映画は「よくこの題材を使ってきちんとした話が作れたな」という感じでした。
町山智浩氏がラジオで語っていたように、アメリカ社会というものを肉食動物・草食動物で表現しており、かつ「〇〇だからダメだ」というステレオタイプに対して問いかけてきていて僕はそれが凄いなと感じました。
これまでのディズニー・ピクサー映画とかでは、自らの弱点やコンプレックスとなる部分を物語を通して克服し成長するストーリーが定石でしたが、ステレオタイプという、本人たちには気付きづらい、捉え方次第では何にでもなれそうなテーマをもっていたので、意外というか攻めた内容だなと個人的に感じました。
一般的に肉食と草食という食べる・食べられるの分かりやすい関係性で考えれば、捕食の立場にある=命を奪える肉食は悪という感覚ではありますが、そんな肉食のライオン市長が悪っぽいと見せかけておき、最終的には草食動物のヒツジが悪で描かれており、子どもたちが観たとしたら「何が正義で何が悪なのか?」とサンシャインよろしく悩むんじゃないのかなと思います。固定観念と差別的な視点の中で。
しかしこのあたり、じゃあ人間で置き換えると人間は常に捕食できる立場にいるから我々は悪なのか?という勘違いも起きうるかもしれないので、そうではなく「何故捕食できることが悪なのか」と根底の部分に疑問をいだいてほしいなと感じます。
一貫した悪がいない世界
近年のディズニー映画とかではいわゆる善人ヅラしていた登場人物が、実は裏では悪役として物語を動かしていたみたいなのはよく見られますが、今回は様々な悪いやつがいます。
相棒のニックは詐欺師よろしくズルセコい手で稼いでいたり、Mr.BIG率いるマフィア組織の存在、ジュディを差別視するボゴ署長、凶暴化の事実をひた隠し自分の利権を守る市長、そして肉食動物を恐怖政治で押さえつけるといった副市長など、それぞれがそれぞれの「悪さ」の方向性を持っているキャラが多く、これは良い意味で一貫性がないのだなと感じました。
https://gyazo.com/3f1faecd8f5f54389feefda3f0f6131c
ボゴ市長は典型的な高圧的上司だなと感じた。全然いいところなかった。(上の圧力で胃が痛いんだろうけど)
物語はやはり正義の標的となり得る悪がしっかりといるべきなのですが、こうした悪いと思うことに関して一貫性がないあたり表現がすごくリアルだなあと感じました。ストーリーの流れとしては最終的に一番悪いのは副市長のヒツジという感じにはなりそうですが、そうなると他がボヤかされてて個人的にニクいやり方だなと思っちゃいました。
はっきりと違う目線で見れる
今回のズートピアは解釈に差が出るなと思うと同時に、子どもと大人で見る角度もだいぶ変わるだろうなと思いました。
子どもとしては勧善懲悪はもちろん、正しくものを見極めよう、身勝手な差別はよくない、と感じるのかと思いますが、大人は「何故」見極めなければいけないのか、「何故」身勝手な差別がよくないか、というもっと本質的なものに改めて気付くのかなと感じます。
それは大人という生き物が、子どもよりも様々な人間・それに伴う事象や制度というものに触れてきており、理不尽なことも体験してきてなお社会のルールに従っているので、自身が受けたり、もしくは与えてきた、理不尽さを今回のズートピアで「何故」あの時ああしていたのかを思い起こすきっかけになれてると思いました。
かつ親子連れも多くいたので、子持ちの大人は子どもに教訓よろしく伝えるメッセージはあるんじゃないかなと思います。ただ単純に差別がよくないと伝えるのではなく、何故差別があるのか・そしてそれが何故よくないのかということを。
ジュディは順応型
最後に大事な気付きとして伝えたいのが、主人公のジュディはどのような状況にも順応できる天才であるということです。
https://gyazo.com/48f961d40f9222be49c38638136ea60f
単純に努力バカな田舎娘だったら最初の違反切符切る時点でダメダメだし、そもそもやりたい仕事との不一致で鬱になって物語の進行役として成立しないと思います。苦悩するところはあれど、機転をうまく活かし、警察官である職務を利用したり勉強したことで様々な状況に適応しています(法律を切り出すとか、ニックをうまく扱うとか、危機的状況を逃れる)。この辺りをしっかり理解しないままだと、頑張ればなんとかなるみたいに勘違いが生まれると思うのでそこはしっかりと認識しておくべきかと思いました。そこら辺の新卒採用型社会とは違いますね。
むしろ努力バカなのはニックの方かと思われます(脱税しているところが抜けていたり、ジュディを馬鹿にしようとしていても一歩先をいかされていたり)。なのでしっかりと道筋たった努力や、ちゃんとした教養は大事だなということを忘れないで下さい(その努力の課程がだいぶカットされていたのでそう感じました)。
あとは肉食と草食のみの世界観なので、雑食性のある生き物とかペットとして飼われている生き物(犬とか猫とか鳥とか)、そして爬虫類や魚類や昆虫といった種類の生き物は出てこなかったです。そこまでくるともっと大きな問題になってくるからボヤかしたんだなぁとは感じました。それと「狼の遠吠え」が普通に栽培されてて裏ルートで悪用されてるという、マリファナとかの合法と違法のスレスレなアメリカのドラッグ社会の闇を感じ得なかったけど純粋無垢な子どもには分からないんじゃないかと思います。
というわけでズートピア、初見の人には、いつもの感じのディズニーで観に行くと少し驚かされますよ、ということは伝えておきたいです。前情報としてアメリカのことを知っておくと楽しいというのはありますが、観た後でなるほどこうしていたんだなという気付きで観るのも面白いのかなとは思います。あとジュディが泣いたシーンは色々とクると感じました。
https://www.youtube.com/watch?v=dEEAOsq41qU
どうでもいいんですが、芋洗坂係長も声優やってたのは全然気づかなかったです。
https://gyazo.com/12d2341f88866645becf9c8c89df7a88
wrote:2016/5/1
#2016 #yamanoku_movie ズートピア