鳥が音の聞えぬ海に、高山を隔てになして、沖つ藻を枕に枕きて、蚕の衣濯ぎも著ずに、鯨取り海の浜辺に、うらもなく宿れる人は、母父に愛子にかあらむ。若草の妻かありけむ。思ほしき言伝てむやと、家問へば、家をも宣らず。名を問へど名だにも宣らず。泣く子なす言だに問はず。思へども悲しきものは、世の中の常
万葉集の3336番歌
表記は口訳万葉集より
鳥が音の聞えぬ海に、高山を隔てになして、沖つ藻を枕に枕きて、蚕の衣濯ぎも著ずに、鯨取り海の浜辺に、うらもなく宿れる人は、
ここまで主語
海で藻を枕にし衣もつけずに伏している人
溺死した人のことらしい
母父に愛子にかあらむ。若草の妻かありけむ。
この人にも家族がいただろうと想像する
思ほしき言伝てむやと、家問へば、家をも宣らず。名を問へど名だにも宣らず。泣く子なす言だに問はず。
想像を受け、「家族に伝えたいこともあるかも」と思うので色々聞く
家はどこですか
答えない
名前はなんですか
告げない
泣く子のように喋りすらしない
ここ意訳気味cFQ2f7LRuLYP.icon
思へども悲しきものは、世の中の常
この伏しているひとを見ていて、悲しい気持ちになる。これが世の中の常であること
溺死した人を悼む歌のようだcFQ2f7LRuLYP.icon こういう行旅死亡人(現代的言い方)を悼む歌は万葉集でよく見る印象 新古今にあったような
対句表現好き
海と山
母父と(若草の)妻
家も名も言も告げない