誠も嘘も元一つ
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禿(かむろ)が気を利かせて、流行の浄瑠璃「夕霧文章」の一節を語って梅川を慰める。「嘘も誠ももとは一つ、恋路には偽りもなく誠もなし、縁のあるのが誠ぞや」。金次第で運命が変わる遊女のはかなさを綴った近松の名文である。 傾城に誠なしと世の人の申せども。 それは皆事譯知らずの言葉ぞや。誠も嘘も元一つ。たとへば命抛ち如何に誠をしても。 男の方より便なく遠ざかる其の時は心やたけに思ひてもかうした身なれば ままならず。 自ら思はぬ花の根引にあひ。 かけし誓も嘘となり。 又初めより偽りの勤ばかりに逢ふ人も絶えず重ぬる色衣つひの寄るべとなる時は。 始のも皆誠とかく只戀路には偏りもなく誠もなし。 縁のあるのが誠ぞや。
ここで梅川、そんなことを言うのは訳知らずの言葉であるという 遊女がどれだけ誠を尽くしても、男が遠ざかってしまえばままならない 思いもよらない客に身請けにあい、掛けた誓いが嘘となる 逆に、初めは仮初めの仲だった人でも逢うに連れ終生の伴侶となることもある
初めの嘘が誠になる