何故パラミツの名前は仏教用語の波羅蜜と同じなのだろう
from 2023/08/07
何故パラミツの名前は仏教用語の波羅蜜と同じなのだろうhatori.icon
調べたcFQ2f7LRuLYP.icon
結論:この植物の実が甘いから。梵語の波羅蜜から借りて名付けた。(『本草綱目』より)
感謝感激雨霰です!hatori.icon
とは言え、issac.iconさんによる井戸端レファレンスサービスを最近よく利用(?)しているので、負担になっていないかと若干心配しています...
趣味なんで大丈夫です!!cFQ2f7LRuLYP.icon
いつぞやの論理と集合から始める数学の基礎 読書会のお返しなのかもしれない(?)
以下調査ログを置いておく
インターネット公開可の資料から調べた
実際の記述は君の目で確かめてくれ!
1. 国立国会図書館デジタルコレクションで「波羅蜜」を検索
植物の話なので「自然科学」に絞ったcFQ2f7LRuLYP.icon
1-1. 大正時代の本草図譜という本にこのパラミツらしきものが紹介されていたcFQ2f7LRuLYP.icon
https://gyazo.com/1c18266ae3372cf6f3904043de826084
岩崎常正 著『本草図譜』 65,本草図譜刊行会,大正5-10. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/926430/1/18 (参照 2023-08-07)
右ページは恐らく各国での名前や本における名前
はらみ、アタヌ、アナナスなどなど
文政六年琉球種薩州より来る
がんばれば翻刻できそうだけど今は余力がない
どなたか任せた
1-2. 更に前だと印度馬来熱帯植物奇観という本にも記載がある
三好学 著『印度馬来熱帯植物奇観』,富山房,明41.5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/832353 (参照 2023-08-07)
https://gyazo.com/d4b377ea600a8d4bdef05bd392fdc9d7
https://dl.ndl.go.jp/pid/832353/1/180
英語ではジャックフルーツと言われてるというのがここで確認できる
(ここでの表記はジャックフルートだけど)
https://ja.wikipedia.org/wiki/パラミツ 基素.icon
日本では波羅蜜
バングラデシュ(ベンガル語)ではカタール(Kathal)
インド(ヒンディー語)ではカタル(Katal)
インドネシア語やマレー語ではナンカ(Nangka)
フィリピン(タガログ語)ではランカ (Langka)
タイではカヌーン(タイ語: ขนุน)
ベトナム語ではミッ(mít)
英語ではJack fruitと呼ばれるのは、マラヤラム語の「Chakka」が、ポルトガル語に借用されて「Jaca」となり、それが英語に借用され、類型を示すfruitと結びついた結果と考えられ
この本においては菩提樹の直後、パンの木及び波羅蜜樹として紹介されている
いずれもクワ科であるようだ
著者の三好氏はこうした熱帯系の本を沢山書いているようで、調べている間に何度か目にしたcFQ2f7LRuLYP.icon
1-3. 他にも色々見る中で、この木の別名について気になる
https://gyazo.com/fb1c940ea7258563f1ac7910ebcd10b1
松村任三 著『植物名彙』前編 漢名之部,丸善,大正4-5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/930942/1/30 (参照 2023-08-07)
cFQ2f7LRuLYP.iconの目に入ったのは「婆那娑(酉陽雑俎)」
これは中国唐代の随筆で、東洋文庫にある
ということはジャパンナレッジで引けちまうってことなんだ!cFQ2f7LRuLYP.icon
H.F.やP.については凡例を参照
https://gyazo.com/5de7395c9101f0950e32decea4e39888https://gyazo.com/2ca6b835ca8ca6803225926f7cd67d11
https://dl.ndl.go.jp/pid/930942/1/11
abbreviationsは略語のこと
H.F.は Henry Augによる「台湾(Formosa)の植物リストと、その島の地理、植物相の性質、経済植物学に関する予備的な考察」のこと
P.は本草綱目
2. ジャパンナレッジで「酉陽雑俎」の中の「婆那娑」を引く
と、巻十八 広動植之三に記載があった
婆那娑樹。波斯国に産出する。(…)実を結ぶ。瓤(わた)はきわめて甘く、食用になる。核(たね)は棗(なつめ)ほどの大きさである。一つの実に数百個ある。核の中の仁(さね)は、栗のように黄である。炒(や)いて食べると、たいへん、美味である。
P.254
ここの注釈で『本草綱目』三十一、果部に記載があるとの指摘があった
本草綱目の著者、李時珍は酉陽雑俎からの記述を踏襲したのであろうという内容
『本草綱目』(ほんぞうこうもく)は、中国の百科全書的な本草書。本草学史上、掲載品目及び引用文献の規模からみて中国を代表する著作とされている。
作者は明代の李時珍(1518年 - 1593年)で、1578年(万暦6年)頃に脱稿、死後の1596年(万暦23年)に南京で上梓された。
本草綱目 - Wikipedia
本草綱目に記載があった!cFQ2f7LRuLYP.icon
3. 国立国会図書館デジタルコレクションで「本草綱目」を引いてみる
明李時珍撰 ほか『本草綱目52卷』27,寛文12刊. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2557051 (参照 2023-08-07)
せっかくなので、版本を見てみよう
https://gyazo.com/3efbc7d302282c76953c77233da389a1
左上
https://dl.ndl.go.jp/pid/2557051/1/2
ライチや龍眼、椰子など南方っぽい果物が並んでいる
夷果類と分類してたらしい
https://gyazo.com/238d44c5c983cc1cf98f371bf1bdcb9d
https://dl.ndl.go.jp/pid/2557051/1/26
波羅蜜は梵語なり。此の果、味甘によりて、故に借りて之に名(なづ)く。
安南の人、曩伽結と名く。波斯の人、婆那娑と名く。拂林の人、阿薩嚲と名く。皆一物なり。
訓点のお陰で比較的スムーズに読める
版本を読むのがしんどいときは翻刻されたものがある
https://gyazo.com/a0c84474006033b16ce245afd40ea43d
多紀永寿院安元 著 ほか『本草綱目 : 補註』下巻1,半田屋出版部,大正4-7. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/952286/1/236 (参照 2023-08-07)
というわけで、
Q. 何故パラミツの名前は仏教用語の波羅蜜と同じなのだろう
A. 此の果、味甘によりて、故に借りて之に名(なづ)けたから。
だと思いましたcFQ2f7LRuLYP.icon(おわり)
鍋に弾丸を受けながらで見たフルーツだ基素.icon
https://youtu.be/16rOXTB5azU