安部公房『無関係な死・時の崖』を読む
イタロー.icon
「夢の兵士」……脱走兵が村にやってくると噂になり、どうなるか。
「誘惑者」……駅のホームベンチでの席の取り合いから始まって、意外な結末。
「家」……とある旧家には、「先祖」という生き物が棲んでいて……シュール。
「使者」……宇宙研究講師のもとに、自称火星人がたずねてくる。
「透視図法」……「現実」「盗み」「泣く女」の三つの話で構成されている。材木から砂糖を作るというモチーフは、『箱男』にもでてくる。個人的に好き。 「豚だな、夢がないのは豚だよ。人間には夢がなきゃいかん……いや待て、おまえたちには(といつのまにか複数の二人称になって)夢なんて、どうせ分りはせんのだろう。夢というのはな、規則のことなんだ。分るまい、分るまい……あれはもう、ずっと前のことだが、わたしはこのことを、たった四歳の子供から教えられたんだ、その子供は、手袋をはこうとしながら、うまくいかないので困っていた。四歳の子供に、指のある手袋はむつかしいんだな。すると、子どもは、どうしたと思う? こんなふうに、あっちをつまんだり、こっちをひっぱったりしながら、咒文をとなえだしたのさ。ここをこうして、あそこをこうして、ここをこうして、あそこをこうして……。分るかね? ここをこうして、あそこをこうして、そんなふうに、規則をつかめば、ものごとはちゃんとはこぶということだ。四歳の子供だぞ。規則を見つけださなけりゃいかんということを、四歳の子供が知っていたんだ。いや、むろん、手袋ははけなかった。しかし、はけたかはけなかったかは、この際、大した問題じゃない。ここをこうして、あそこをこうして、という、その精神だよ、規則をみつけだそうとする、その発明の精神こそ、人間らしい夢というものだ。どうだ、分るまい? 四歳の子供にさえ及ばない豚に、なにが分るものかね……」 安部氏の文学論じゃね?と思うたイタロー.icon
アルタミラ洞窟の絵の話とかですかね(適当を言っています)cFQ2f7LRuLYP.icon ラスコーかもしれません(たぶんちがう)イタロー.icon 全体として、読みやすく、シュールとSFが加わったドストエフスキーみたい(文体が似てる)。
短編小説のよさを再確認
名前や時代性、文化をほどよく漂白してるから、常に可能性として読める