多様体まで丁寧に歩く解析学問題集
大まかな構想が頭の中にできたので着手Summer498.icon
この問題集では「$ Pが成立する時はその正当性を証明し、成立しない時はその反証をせよ」ということを単に「$ Pか?」と書く。
例えば、「$ \tan 1^\circは有理数か?」の回答において、「有理数である」も「無理数である」も証明がついていないため不正解である。
何らかの誤りのない証明を添えたうえで結論を出したものが正解になる。
作図
作図
(前提) 作図は曲がっていない場所で行う。
(直線) 2点を結ぶ線のうち、2点を結ぶ条件を保ちつつ平行移動してもその形を変えないものを直線と呼ぶ。
(線分) 直線上に2点を定めて切断したものを線分と呼ぶ。
(曲線) 直線でも線分でもない線を曲線と呼ぶ。
(円) 1点(中心)から等しい距離にある点の集まりが成す曲線を円と呼ぶ。
(角) 2本の直線が交わる場合、角を成す。
問題: (角の二等分線) 円と直線を用いて角をニ等分する直線を作図せよ。
(直角): 直線上に1点を定めて、それを角とみなした際の二等分角を直角と呼ぶ。
問題: 直角を作図せよ。
(平行): 相異なる2つの直線が交わらないとき、その2つの直線は平行である。
問題: (相似): 全ての角が等しい図形の辺の長さは一定の倍率で伸縮されることを示せ。
計算作図
(自然数) 長さが$ 1の線分が与えられた時に、その線分と等しい長さで線分を延長することで$ 2,3,4,\cdotsの長さの線分を得る。このようにして得られる長さの値を自然数と呼び、長さが殆ど無い点のような線分の長さを表す$ 0と単位長さ$ 1を含める。
問題: 長さ3の線分を作図せよ。
(加算) 長さが$ aの線分を長さ$ bだけ延長した線分の長さを$ a+bで表す。
問題: (加算): 長さが$ aの線分と、長さが$ bの線分を利用して、長さが$ a+bの線分を作図せよ。
(減算) 長さが$ aの線分から長さ$ bだけ差し引いた線分の長さを$ a-bで表す。
問題: (減算): 長さが$ aの線分と、長さが$ bの線分を利用して、長さが$ a-bの線分を作図せよ。
(乗算) 長さが$ aの線分を$ k個繋げた線分の長さを$ kaで表す。
問題: (乗算): 長さが$ aの線分と、長さが$ bの線分を利用して、長さが$ abの線分を作図せよ。
なお、$ a,bの長さは自然数とは限らない。このため、長さ$ aの線分を$ b個繋げる回答は不適当である。
(冪乗): $ aを$ n回乗算した値を$ a^nで表す。
(冪根): $ n乗すると$ xになる正の実数を$ ^n\sqrt{x}で表す。特に$ \sqrt{x}=\,^2\sqrt{x}である。
(除算) $ d回繋げると長さが$ aになる線分の長さを$ \frac adで表す。
問題: (除算): 長さが$ aの線分と、長さが$ bの線分を利用して、長さが$ \frac{a}{b}の線分を作図せよ。
(整数) 自然数の減算により到達できる数を整数と呼ぶ。
(有理数) 整数の除算により到達できる数を有理数と呼ぶ。
(実数) 線分の長さを実数と呼ぶ。
補足: 有理数ではない実数の存在は現時点では示すのが難しいため、後の演習問題とする。
なお、以降の計算問題では計算のために作図を行う必要はなく、文字を代数的に操ることで完了して良い。
図形
問題: (ピタゴラスの定理): 直角三角形の斜辺の長さ$ cを隣辺の長さ$ a,bで表せ。(その正当性を図で示せ)
問題: (円): 座標平面上に原点からの距離が 1 の点の集合の図を描け。また、その集合のすべての点が満たす方程式を示せ。
問題: (円周率): 円周の長さと直径の比を円周率と呼び、$ \piで表す。半径$ rの円の円周長を求めよ。
問題: (円の面積): 半径$ rの円の面積を求めよ。(その正当性を図で示せ)
(単位円): 原点$ O(0,0)と、単位円 (原点を中心とする半径1の円) 上の点$ X(1,0)と点$ P(x,y)が形成する扇形から様々な関数が定義される。
(弧度): 単位円上の扇形$ OXPの弧長を$ \thetaとする。これを角度として扱うことで、角度と長さの単位を合わせられる。
問題: (扇形の面積): 半径$ r、角度$ \thetaの扇形の円弧の長さを求めよ。またこの扇形の面積を求めよ。
(三角関数): 単位円上の点$ Pの座標は角度$ \thetaから一意に定まる。これを$ P(\cos\theta,\sin\theta)で表す。また、円と外接する直線$ x=1と直線$ OPの交点を$ T(1,\tan\theta)とする。
問題: (三角関数の公式): 三角関数同士の各種関係を導け。
(cos-sin): $ \cos\thetaと$ \sin\thetaが成す等式を線分$ OPの長さに付いて考察することで求めよ。
(tan): $ \tan\thetaの値を$ \cos\thetaと$ \sin\thetaを用いて表せ。
(tan-cos): $ \tan\thetaの値を$ \cos\thetaを用いて表せ。
問題: (余弦定理): 三角形のある角の大きさを$ \thetaとする。その角の対辺の長さ$ cを隣辺の長さ$ a,bと$ \thetaを用いて表せ。
代数から見る有理数
(マグマ): 集合$ Mとそれに関して閉じた二項演算$ \circ:M\times M\to Mからなる代数構造$ (M,\circ)を、あるいは単に$ Mをマグマと呼ぶ。
(疑群): 結合律を満たすマグマを疑群と呼ぶ。
任意の$ a,b,c\in Rについて
(結合律): $ (a\cdot b)\cdot c=a\cdot(b\cdot c)=a\cdot b\cdot c
この後紹介する群の研究から様々な数学構造が派生していると考えると、「疑」は「単位元のない」ことを表す。
このため、この後紹介する環から単位元を除いた疑環というものもある。
(可換): 交換則を満たす代数構造$ (A,\circ)を、あるいは単に$ Aを可換〇〇と呼ぶことがある。
任意の$ a,b\in Aについて
(交換則): $ a\circ b=b\circ a
(モノイド): 単位元を持つ疑群$ (M,\circ)を、あるいは単に$ Mをモノイドと呼ぶ。
(単位元): $ a\cdot1=1\cdot a=aを満たす元$ 1が$ Gに存在
問題: 自然数とそれらの積は可換モノイドを成すか?
(群): 逆元を持つモノイド$ (G,\cdot)を、あるいは単に$ Gを群(Group)と呼ぶ。
任意の$ a,b\in Rについて
(逆元): $ a\cdot a^{-1}=1を満たす元$ a^{-1}が$ Gに存在
この時に$ \cdotを積と呼ぶことがある。
問題: 逆元の逆元$ (a^{-1})^{-1}を求めよ。(その正当性を証明せよ)
(可換群): 可換群$ (G,+)について、$ +を和と呼ぶことがある。また、単位元を$ 0で、逆元を$ -aで表すことがある。
問題: 整数とそれらの和は可換群を成すか?
問題: 有理数とそれらの積は可換群を成すか?
(半環): 分配律を満たす、モノイド$ (R,\cdot)と可換モノイド$ (R,+)からなる代数構造$ (R,\cdot,+)を、あるいは単に$ Rを半環と呼ぶ。
任意の$ k,a,b\in Gについて
(左分配律): $ k\cdot(a+b)=k\cdot a+k\cdot b
(右分配律): $ (a+b)\cdot k=a\cdot k+b\cdot k
半環の演算子$ \cdotを積や乗法と呼ぶことがある。
和$ +を加法と呼ぶことがある。
積が可換な半環を可換半環と呼ぶことがある。
問題: 半環$ Rについて、以下の法則を示せ。
(吸収律): $ 0\cdot a=0
(環): 分配律を満たす、モノイド$ (R,\cdot)と可換群$ (R,+)をからなる代数構造$ (R,\cdot,+)を、あるいは単に$ Rを環と呼ぶ。
積が可換な環を可換環と呼ぶことがある。
問題: 環$ Rについて、以下の法則を示せ。
(加法逆元の積): $ (-1)\cdot(-1)=1
(体): 環$ (K,\cdot,+)の積$ \cdotが($ 0以外に関して)逆元を持つ時$ (K,\cdot,+)を、あるいは単に$ Kを体(Körper)と呼ぶ。
積が可換な体を可換体と呼ぶことがある。
(ペアノの公理): 集合$ Nが最小元$ 0と以下の式を満たすサクセッサ関数$ S:N\to Nを持つ時、代数構造$ (N,0,S)を自然数と呼ぶ。
任意の$ n,m\in N,\ E\sub Nについて
$ S(n)\ne0
$ n\ne m\Rightarrow S(n)\ne S(m)
(数学的帰納法) $ 0\in Eかつ、任意の$ n\in Nが「$ n\in Eならば$ S(n)\in E」満たすならば$ E=N
なお、サクセッサを適用した回数を用いて順序$ <を構成すると$ 0<S(0)<S(S(0))<\cdotsとなるので、ここでは$ 0を最小元と呼ぶことにする。
問題: (自然数): 可換半環$ Rの加法単位元$ 0を最小元とし、乗法単位元$ 1を用いて関数$ Sを以下のように定めると、$ Sがサクセッサ関数となる。また、サクセッサの適用回数により順序$ <を定める。このとき、サクセッサ付き順序可換半環$ (R,0,S,<)が一般に自然数$ \Nと呼ばれる集合になることを確認せよ。
$ S(n)=n+1
問題: (自然数): 自然数の加法は順序を保存するか?
(余談): 自然数に$ 0を含める流儀と含めない流儀があるが、この方法で自然数を構成すると$ 0を含める方が自然である。
問題: (整数): 自然数の構成に用いた可換半環を可換環に替えて、加法が順序を保存するように順序を拡張することで構成される順序可換環$ (R,<)が整数$ \Zになることを確認せよ。
問題: (整数): 整数の乗法は順序を保存するか?
問題: (有理数): 整数の構成に用いた可換環を可換体$ Kに替えて、加法が順序を保存するように順序を拡張することで構成される順序可換体$ (K,<)が有理数$ \mathbb Qになることを確認せよ。
問題: (複素数): 有理数$ \mathbb Qに虚数単位$ i=\sqrt{-1}を加えた代数構造$ \mathbb Q\cup\{i\}について、
可換体を成すか?
有理数と同様に順序を定められるか?
(実数): 実数に関しては後の章で構成する。
量化式
問題: (じゃんけん1): じゃんけんゲームにおいて、任意の手$ Hに対してそれに勝利する手$ Wは存在するか?
問題: (じゃんけん2): じゃんけんゲームにおいて、ある手$ Hに対して、任意の手$ Wは手$ Hに勝利できるか?
問題: (大きい数を言ったら勝ち1): 大きい数を言ったら勝ちゲームにおいて任意の数$ nに対してそれに勝利する数$ Nが存在するか?
問題: (大きい数を言ったら勝ち2): 大きい数を言ったら勝ちゲームにおいて、ある数$ nに対して任意の数$ Nが数$ nに勝利できるか?
(量化子): 数式上で「任意の」を$ \forall、「ある~が存在する」を$ \existと表す。
問題: (じゃんけん3): じゃんけんゲームにおいて、$ ^{\forall H\in手,\exist W\in 手}\lbrack W>H\rbrackが成立するのか?
ただし、$ 手は出せる手の集合を、$ W>Hは$ Wが$ Hに勝利することを表す。
問題: (じゃんけん4): じゃんけんゲームにおいて、$ {\exist H\in手,\forall W}\lbrack W>H\rbrackが成立するか?
問題: (大きい数を言ったら勝ち3): $ ^{\forall n\in\Z,\exist N\in\Z}\lbrack N>n\rbrackが成立するか?
問題: (大きい数を言ったら勝ち4): $ ^{\exist n\in\Z,\forall N\in\Z}\lbrack N>n\rbrackが成立するか?
問題: (誤差): 誤差の大きさ$ \varepsilon>0を指定された際に、$ |x^2-2|<\varepsilonを満たす$ x\in\mathbb Qを構成する方法を述べよ。
ただし、$ \mathbb Qは有理数である。
問題: $ ^{\forall\varepsilon>0,\exist c\in\mathbb Q}\lbrack x=c \Rightarrow |x^2-2|<\varepsilon\rbrackが成立するか?
極限
(稠密): 順序集合$ Sにおいて、$ ^{\forall x,y\in S,\exist a,\in S}\lbrack x<a<y\rbrackが成立する時、$ Sは稠密であるという。
問題: (整数): 整数は稠密か?
問題: (有理数): 有理数は稠密か?
(収束する右極限): $ ^{\forall\varepsilon>0,\exist\delta>0}\lbrack x<c+\delta\Rightarrow |f(x)-\alpha|<\varepsilon\rbrackを単に$ \lim_{x\to c+0}f(x)=\alphaと表す。
問題: (収束する左極限): $ \lim_{x\to c-0}f(x)=\alphaを論理式で表せ。
(収束する極限): $ \lim_{x\to c-0}f(x)=\alphaかつ$ \lim_{x\to c+0}f(x)=\alphaのとき$ \lim_{x\to c}f(x)=\alphaと書く。
問題: (収束する極限): $ \lim_{x\to c}f(x)=\alphaを簡潔な(「かつ」を用いない)論理式で表せ。
(正に発散する右極限): $ ^{\forall M>0,\exist \delta>0}\lbrack x<c+\delta\Rightarrow f(x)>M\rbrackを単に$ \lim_{x\to c+0}f(x)=\inftyと表す。
問題: (正に発散する極限): $ \lim_{x\to c-0}f(x)=\inftyと$ \lim_{x\to c}f(x)=\inftyを論理式で表せ。
問題: (負に発散する極限): $ \lim_{x\to c+0}f(x)=-\inftyと$ \lim_{x\to c-0}f(x)=-\inftyと$ \lim_{x\to c}f(x)=-\inftyを論理式で表せ。
(正の無限大に飛ばすと収束): $ ^{\forall\varepsilon>0,\exist N\in\N,n>0}\lbrack x>n\Rightarrow |f(x)-\alpha|<\varepsilon\rbrackを単に$ \lim_{x\to\infty}f(x)=\alphaと表す。
問題: (負の無限大に飛ばすと収束): $ \lim_{x\to-\infty}f(x)=\alphaを論理式で表せ。
問題: (無限大に飛ばすと発散): 以下の極限をを論理式で表せ。
$ \lim_{x\to\infty}f(x)=\inftyと$ \lim_{x\to\infty}f(x)=-\infty
$ \lim_{x\to-\infty}f(x)=\inftyと$ \lim_{x\to-\infty}f(x)=-\infty
{余談}: 全ての極限の表現方法を表としてまとめておくと理解が進むことだろう。
問題: (極限の順番1): $ \lim_{x\to 0}\left(\lim_{y\to 0}x^y\right)の値を求めよ。
問題: (極限の順番2): $ \lim_{y\to 0}\left(\lim_{x\to 0}x^y\right)の値を求めよ。
(極限の順番): 以上の議論により、極限の順番を勝手に入れ替えてはいけない。
問題: (同時極限1): $ \lim_{x\to 0}\left(\lim_{y\to 0}\frac{2xy}{x^2+y^2}\right)の値を求めよ。
問題: (同時極限2): $ \lim_{y\to0}\left(\lim_{x\to0}\frac{2xy}{x^2+y^2}\right)の値を求めよ。
問題: (同時極限3): $ x=r\cos\theta、$ y=r\sin\thetaと置けば、$ r\to 0とすることで、$ x,yを同時に$ 0に近づけられる。
$ \lim_{r\to0}\frac{2(r\cos\theta)(r\sin\theta)}{(r\cos\theta)^2+(r\sin\theta)^2}の値を求めよ。
(同時極限): 以上の議論により、極限の順番を入れ替えた際に値が一致しても、任意の方向からの極限が一致するとは限らない。
問題: (同時極限4): $ \lim_{(x,y)\to(0,0)}e^{-\frac1{x^2+y^2}}を計算せよ。
(同時極限): $ ^{\forall\varepsilon>0,\delta>0}\lbrack d((x,y),(c_x,c_y))<\delta\Rightarrow|f(x,y)-\alpha|<\varepsilon\rbrackを単に$ \lim_{(x,y)\to(c_x,c_y)}f(x,y)=\alphaと書く。
ただし、ユークリッド距離を$ d((x,y),(c_x,c_y))=\sqrt{(x-c_x)^2+(y-c_y)^2}とする。
一般に、何らかの距離を$ d(\bm x,\bm c)とする時に、$ ^{\forall\varepsilon>0,\delta>0}\lbrack d(\bm x,\bm c)<\delta\Rightarrow|f(\bm x)-\alpha|<\varepsilon\rbrackを単に$ \lim_{\bm x\to\bm c}f(\bm x)=\alphaと書く。
(無限遠点): 無限遠点$ \inftyを導入して、$ ^{\exist N\in\N,\forall n>N}\lbrack x>n\rbrackを単に$ ^{\forall\varepsilon>0}\lbrack|x-\infty|<\delta\rbrackと考えると、極限を全て有限極限の論理式を用いて考えることができる。
問題: 無限遠点$ \infty,-\inftyを用いてこれまでの発散の論理式を全て書き直せ。
実数
問題: (無理数): 直角二等辺三角形の辺の長さは有理数か?
(最大・最小): 集合の極端な値の名前を以下のように決める。
集合$ Sにおいて、
(上界): $ ^{\exist\alpha,\forall x\in S}\lbrack x\le \alpha\rbrackのとき、$ \alphaを$ Sの上界という。
(下界): $ ^{\exist\alpha,\forall x\in S}\lbrack x\ge \alpha\rbrackのとき、$ \alphaを$ Sの下界という。
(最大元): $ ^{\exist\alpha\in S,\forall x\in S}\lbrack x\le \alpha\rbrackのとき、$ \alphaを$ Sの最大元といい、$ \max Sと書く。
(最小元): $ ^{\exist\alpha,\forall x\in S}\lbrack x\ge \alpha\rbrackのとき、$ \alphaを$ Sの最小元といい、$ \max Sと書く。
(極大元): $ ^{\exist\alpha\in S,\forall x\in S}\lbrack x\not>\alpha\rbrackのとき、$ \alphaを$ Sの極大元という。
(極小元): $ ^{\exist\alpha\in S,\forall x\in S}\lbrack x\not<\alpha\rbrackのとき、$ \alphaを$ Sの極小元という。
(上限): 上界全体の集合の最小を上限という。$ \sup S=\min_{x\in S}\{\alpha|x<\alpha\}
(下限): 下界全体の集合の最大を下限という。$ \inf S=\max_{x\in S}\{\alpha|x>\alpha\}
問題: 開区間$ \rbrack0,1\lbrackと閉区間$ \lbrack0,1\rbrackのそれぞれについて、上界、下界、最大元、最小元、極大元、極小元、上限、下限のそれぞれを求めよ。
ただし、「存在しない」場合に注意せよ
問題: 6親等内の親族集合に半順序関係「親$ >子」を設ける。この時、上界、下界、最大元、最小元、極大元、極小元、上限、下限のそれぞれを求めよ。
ただし、「比較不能」な場合に注意せよ。
(有界): 数列$ \{a_n\}_nが$ ^{\forall n>\N}\lbrack |a_n|<c\rbrackを満たす際に数列$ \{a_n\}_nが有界であるという。
(単調): 以下の性質をまとめて単調という。
数列$ \{a_n\}_nが$ ^{\forall n,m\in\N}\lbrack n< m\Rightarrow a_n\le a_m\rbrackのとき、単調増加するという。
数列$ \{a_n\}_nが$ ^{\forall n,m\in\N}\lbrack n<m\Rightarrow a_n\ge a_m\rbrackのとき、単調減少するという。
問題: (有界単調数列の収束性): 単調増加数列$ \{a_n\}_nが上に有界なとき、収束するか?
(部分列): 数列$ \{a_n\}_nの一部を(無限個)取り出して順序を変えずに並べた数列を部分列という。すなわち、
$ ^{\forall n,m\in\N}\lbrack n<m\Rightarrow \phi(n)<\phi(m)\rbrackなる単射$ \phiに対して数列$ \{a_{\phi(n)}\}_nを部分列という。
(ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理): 有界な数列$ \{a_n\}_nが収束する部分列を持つことを示せ。
(コーシー列): 数列$ \{x_n\}_nが$ \lim_{(n,m)\to(\infty,\infty)}|x_n-x_m|=0が成立することをコーシー性といい、コーシー性を持つ数列をコーシー列という。
問題: (コーシー列1): $ \lim_{n\to\infty}a_n=\alphaのとき、$ \{a_n\}_nはコーシー列か?
問題: (コーシー列2): $ \{a_n\}_nがコーシー列のとき、有界か?
問題: (コーシー列3): $ \{a_n\}_nがコーシー列のとき、収束するか?
(コーシー列): コーシー性を用いると、具体的な極限値を知らなくても極限の存在について調べることができる。
問題: (謎の数列の極限): $ \lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n\frac1k\sin kの極限は収束するか?
問題: (謎の数列の極限): $ \lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n\left|\frac1k\sin k\right|の極限は収束するか?
(完備): 集合$ Sの元からなる任意のコーシー列の収束先が集合$ Sに属する時、集合$ Sは完備という。
問題: 有理数は完備か?
問題: (デデキント切断): 有理数集合$ \mathbb Qを$ G=\{x|x>0\land x^2>2\}と$ L=\mathbb Q\setminus Gの2つに分割する。$ G,Lの上限、下限、最大、最小を求めよ。
(実数): 代数公理から実数を構成する際には以下の2つの方法がよく用いられる。
有理数を全順序構造をもつ体(順序体)により定める。
(コーシー列による完備化):
有理数$ \mathbb Qに有理数のコーシー列全体$ C(\mathbb Q)を加えた体$ \mathbb Q\oplus C(\mathbb Q)について考える。
この集合のコーシー列$ \{x_n\}_n,\{y_n\}_nの各項の距離の極限が0に収束するとき、これらのコーシー列を同値であると見なす。
$ \lim_{n\to\infty}|x_n-y_n|=0\Leftrightarrow \{x_n\}_n\sim\{y_n\}_n
(デデキント切断による実数の定義):
有理数$ \mathbb Qを空でない部分集合$ L\ne\varnothing,G\ne\varnothingに分ける。
このとき、$ L\cup G=\mathbb Qと、$ ^{\forall x\in L,\forall y\in G}\lbrack x<y\rbrackが満たされる時、組$ (L,G)をデデキント切断という。
$ Lの上限と$ Gの下限は一致する。この値全体の集合と有理数を合わせた集合を実数とする。
より一般には、デデキント切断全体の集合で有理数を定義する。(境界の値に言及すると実数を用いており循環論法になるため)
このように実数を定めることで、極限が実数の範囲内で収束するようになるほか、有理数と同一視できる構造(順序体)から実数と同一視できる構造を導ける。
代数方程式
(意義): 本題とは大きくそれる印象があるが、行列の固有値を求める際に代数方程式が現れるほか、複素数の必要性が理解できるため取り扱う。
問題: (体の等式変形): $ a=cのとき、$ a+b=c+bと$ ad=cdが成立する。
問題: (一次方程式): $ ax+b=0を満たす$ xを求めよ。
問題: (平方完成): $ ax^2+bx+c=0のとき、$ \chi=x+\frac{b}{2a}と置換した時に得られる式$ f(\chi)を求めよ。
(複素数): $ i=\sqrt{-1}とする。
(1の原始根): $ \omega_nを$ \omega_n^n=1かつ$ n\ne1\ \Leftrightarrow\ \omega_n\ne1とする。
問題: $ (x-1)\sum_{k=0}^{n-1}x^kを展開せよ
問題: $ \sum_{\theta=0}^{n-1}\omega_n^\thetaと$ \sum_{\theta=0}^{n-1}\omega_n^{t\theta}\quad(t\in\Z)を求めよ。
問題: (共役解): 実係数代数方程式$ p(x)=\sum_{k=0}^na_kx^k=0の解を$ \alpha_k\quad(k=1,\cdots,n)とするとき、複素共役$ \overline{\alpha_k}は$ p(x)=0の解か?
問題: (二次方程式): $ \chi^2+\Delta=0の解を求めよ。
問題: (二次方程式): $ ax^2+bx+c=0を満たす$ xを求めよ。
問題: (立体完成): $ ax^3+bx^2+cx+d=0のとき、$ \chi=x+\frac{b}{3a}と置換した時に得られる式$ f(\chi)を求めよ。
(リゾルヴェント): $ n次方程式の解を$ \alpha_k\quad(k=1,\cdots,n)とするとき、リゾルヴェントを$ r_\theta=\frac1n\sum_{t=1}^{n} \alpha_t\omega_n^{-\theta t}とする。
(余談): リゾルヴェントの提案者であるラグランジュを合わせてラグランジュのリゾルヴェントと呼んだりする。
問題: (逆フーリエ変換): リゾルヴェントの原始根との積和$ \sum_{\theta=1}^nr_\theta\omega_n^{\theta\tau}を求め、$ \alpha_tを用いて表せ。
(解の分解): $ n次方程式の解$ \alpha_kはリゾルヴェントを用いて$ \alpha_k=\sum_{\theta=1}^nr_\theta\omega_n^{k\theta}とおける。
問題: (三次方程式): $ \chi^3+p\chi+q=0の解を$ \chi=u\omega_3+v\omega_3^2と置き、代入し、展開せよ。
問題: (三次方程式): 解と係数の関係から$ u^3と$ v^3が満たすべき二次方程式を求め、解け。
問題: (三次方程式): $ ax^3+bx^2+cx+d=0を満たす$ xを求めよ。
問題: (超立体完成): $ ax^4+bx^3+cx^2+dx+e=0のとき、$ \chi=x+\frac{b}{4a}と置換した時に得られる式$ f(\chi)を求めよ。
問題: (四次方程式): $ \chi^4+p\chi^2+q\chi+r=(\chi^2-\beta)^2-\mu(\chi-\gamma)^2を満たす$ \beta,\gammaを求めよ。また、$ \muが満たすべき三次方程式を求め、解け。
問題: (四次方程式): $ (\chi^2-\beta)^2-\mu(\chi-\gamma)^2=0の解$ \chiを求め、$ \beta,\gamma,\muで表せ。また、$ p,q,rで表せ。
問題: (四次方程式): $ ax^4+bx^3+cx^2+dx+e=0を満たす$ xを求めよ。
(五次方程式): 五次以上の方程式が四則演算と冪根を取る操作のみで解けないことはよく知られているが、その証明は長くなるのでここでは触れない。ここでは解ける例と解けない例をいくつか示しておく。
問題: (巡回群): $ x^5-a=0を解け。
高難度: (二面体群): $ x^5−10x^3+15x−6=0を解け。
高難度: (フロベニウス群): $ x^5-5x+12=0を解け。
高難度: (交代群): $ x^5−5x^3+4x+1=0を解こうとするとどのように詰まるか探れ。
高難度: (対称群): $ x^5-x+1=0を解こうとするとどのように詰まるか探れ。
微積分
(連続な関数): 関数$ f(x)の$ x\to cの左右極限と代入値$ f(c)が一致する時、関数$ fは$ x=cで連続であると言う。
$ f(c)=\lim_{x\to c-0}f(x)=\lim_{x\to c+0}f(x)
以降は断りがない限り定義域全域で連続な関数について考える。
問題: 多項式関数、分数関数、指数関数、三角関数、対数関数について連続性を調べよ。
問題: (ディリクレ関数): 実数値関数$ f(x)=1\ (x\in\mathbb Q),\quad f(x)=0\ (x\notin\mathbb Q)が連続となる$ xの範囲を求めよ。
(定積分): 曲線$ y=f(x)と$ x軸、直線$ x=a,\ x=bで囲まれた図形の面積$ \int_a^bf(x){\rm d}xを求める。
区間$ \lbrack a,b\rbrackを細かく切り分けて$ \lbrack a=x_0,x_1\rbrack,\lbrack x_1,x_2\rbrack,\cdots\lbrack x_{n-1},x_n=b\rbrackとする。
区間$ L_k=\lbrack x_{k-1},x_k\rbrackにおいて、区間の長さを$ \Delta x_k=x_k-x_{x-1}とする。
また、$ f(x)の最小値$ \min_{x\in L} f(x)と最大値$ \max_{x\in L}f(x)を考える。
小さな長方形の総和$ \sum_{k=1}^n\min_{x\in L}f(x)\Delta x_kと大きな長方形の総和$ \sum_{k=1}^n\max_{x\in L}f(x)\Delta x_kが共通の値$ Sに収束するとき、この図形の面積は$ Sとなる。
$ f(x)<0の部分が多い場合、$ S<0となる。
問題: (面積) $ f(x)>g(x)とする。曲線$ y=f(x)と曲線$ y=g(x)、直線$ x=a,\ x=bで囲まれた図形の面積を求めよ。
(不定積分): 曲線$ y=f(x)と$ x軸、直線$ x=x_0,$ x=\chiで囲まれた図形の面積を$ \int_{x_0}^\chi f(x){\rm d}x=F(\chi)+Cで表すことにすると、色々な区間の面積を簡便な形で議論できて便利になる。
$ Cは$ x_0の取り方によって変わる。
これを単に$ \int f(x){\rm d}xで表す。
問題: (積分の線形性): $ \int af(x)+g(x){\rm d}xを求めよ。
問題: (区間積分): 曲線$ y=f(x)と$ x軸、直線$ x=a,\ x=bで囲まれた図形の面積を$ Fを用いて表せ。
高難度: (積の積分): 曲線$ y=f(x)g(x)と$ x軸、直線$ x=x_0,\ x=\chiで囲まれた図形の面積を求めよ。
ここではまだ微分を紹介していないため高難度となる。
問題: (微分): $ \int f'(x){\rm d}x=f(x)+Cを満たす$ f'(x)を$ f(x)に関する極限を用いて表せ。
(微分): $ f'(x)を$ \frac{\rm d}{{\rm d}x}f(x)と書くことがある。
問題: (関数の接線): 関数$ f(x)上の点$ P(c,f(c))と、その近傍点$ P_\delta(c+\delta,f(c+\delta))が成す直線の方程式を求め、$ \delta\to 0の時の極限を求めよ。
(滑らかな関数): 関数$ fの$ x=c近傍での微分の左右極限が一致する時、関数$ fは$ x=c微分可能であるといい、微分値をその両側極限で定める。
$ f'(c)=\lim_{\delta\to+0}\frac1\delta\left(f(c+\delta)-f(c)\right)=\lim_{\delta\to-0}\frac1\delta\left(f(c+\delta)-f(c)\right)
(アンペールの主張): 電流の単位アンペアの元になったアンペールは、連続な関数はいくつかの(有限個)の点を除いて微分可能であると考えた。
問題: 適当な関数を構成することでアンペールの主張の真偽を確認せよ。
(一言): アンペールの主張は長らく真と考えられてきているので、反例を挙げるのが難しいことを確認せよ。
問題: (H. Hankel の関数): $ f(x)=\sum_{n=1}^\infty\frac1{n^3}\sin(\pi nx)はどの範囲で連続か?またどの範囲で微分可能か?
問題: (ワイエルシュトラス関数): 以下の関数はどの範囲で連続か?またどの範囲で微分可能か?
$ 0<a<1, k\in\Z,a(2k+1)>1+\frac32\piとするとき、
$ f(x)=\sum_{n=0}^\infty a^n\cos((2k+1)^n\pi x)
(雑談): このような議論を経て今日の厳密な$ \varepsilon\text-\deltaによる議論が行われるに至っている。
問題: (微分の線形性): $ kf(x)+g(x)の$ xによる微分を求めよ。
問題: (関数の積の微分): $ f(x)g(x)の$ xによる微分を求めよ。
問題: (合成関数の微分): $ f(x(t))の$ tによる微分を求めよ。
問題: (逆関数の微分): $ f^{-1}(x)の$ xによる微分を求めよ。
問題: (関数の積の積分): $ f(x)g(x)の$ xによる積分を求めよ。
問題: (関数の積の積分): $ f(x(t))x'(t)の$ tによる積分を求めよ。
問題: (初等関数の微分): 関数$ y=x^k\ (k\in\R)、指数関数、対数関数、三角関数の微分を求めよ。
問題: (初等関数の積分): 関数$ y=x^k\ (k\in\R)、指数関数、対数関数、三角関数の積分を求めよ。
$ k=-1の場合に注意せよ。
線形近似
(漸近記法): 関数の挙動を大まかに評価する記法を紹介する。
2つの関数$ f(x),\phi(x)と、定数$ c($ \inftyでもよい)を定める。
(上から抑えられる): $ \lim_{x\to c}\frac{|f(x)|}{|\phi(x)|}<\inftyを満たす時に、$ f(x)=O(\phi(x))や$ f(x)\preceq\phi(x)と書く。
(下から抑えられる): $ \lim_{x\to c}\frac{|\phi(x)|}{|f(x)|}<\inftyを満たす時に、$ f(x)=\Omega(\phi(x))や$ f(x)\succeq\phi(x)と書く。
(上下から抑えられる): $ f(x)\succeq\phi(x),\ f(x)\preceq\phi(x)を満たす時に、$ f(x)=\Theta(\phi(x))や$ f(x)\asymp\phi(x)と書く。
(支配される): $ \lim_{x\to c}\frac{|f(x)|}{|\phi(x)|}=0を満たす時に、$ f(x)=o(\phi(x))や$ f(x)\prec\phi(x)
(支配する): $ \lim_{x\to c}\frac{|\phi(x)|}{|f(x)|}=0を満たす時に、$ f(x)=\omega(\phi(x))や$ f(x)\succ\phi(x)と書く
(漸近的に等しい): $ \lim_{x\to c}\frac{|\phi(x)|}{|f(x)|}=1を満たす時に、$ f(x)\sim g(x)と書く。
(等号に関する議論) 厳密には異なるものを等号で結ぶ$ =O(\phi(x))ではなく、$ \in O(\phi(x))や$ \le O(\phi(x))と書こうとする流れもある。
この考え方に則るのであれば、他の記法は$ \ge\Omega(\phi(x)),<o(\phi(x)),>\omega(\phi(x))のようになると考えられる。
問題: (漸近記法): 先に紹介した記法を量化子を用いた議論で書き下せ。
なお、式を上手く変形すると不等号と記法の共通性を整理できる。
問題: (高階微分): 多項式関数$ f(x)=\sum_{k=0}^na_n x^nの高階微分$ \frac{{\rm d}^k}{{\rm d}x^k}f(x)を求めよ。
問題: (多項式関数の復元): 多項式関数$ f(x)の$ x=cでの高階微分の値が数列$ b_nで与えられる時、$ f(x)を求めよ。
問題: (テイラー近似): 関数$ f(x)の$ x=cでのn階までの高階微分の値から多項式関数$ p_n(x)を復元せよ。
問題: (テイラー近似の誤差): 多項式近似の誤差$ R_{n,c}(x)=f(x)-p_n(x)の$ x\to cにおける振る舞いを調べ、漸近記法を用いて表せ。
(テイラー展開): 無限回微分可能な関数において、$ \lim_{n\to\infty}p_n(x)=f(x)のとき、関数$ fは$ x=c近傍でテイラー展開可能であるあるいは解析的であるという。
問題: (テイラー展開と誤差項): 誤差項が$ \lim_{n\to\infty}R_n(x)=0のときテイラー展開可能か?
問題: (bump 関数): 関数$ f(x)=\left\{\begin{matrix}e^{\frac{1}{x^2-1}}&(-1<x<1)\\0&(x\le-1,1\le x)\end{matrix}\right.は何回微分できるか?また、$ x=1近傍でのテイラー展開は可能か?
問題: (ガウス関数): 関数$ f(x)=e^{-\frac1{x^2}}は何回微分できるか?また、$ x=0近傍でのテイラーは展開可能か?
(線形近似): テイラー展開を1次までで打ち切ることで、関数を線形近似できる。
$ f(x)\sim f(c)+f'(c)(x-c)
問題: (線形近似と微分): 線形近似の式を$ f'について整理せよ。また、$ \Delta x=x-cと置換することで微分の定義と一致することを確認せよ。
(微小量) 関数$ {\rm d}fを$ {\rm d}f(x,\Delta x)=f'(x)\Delta xのように定める。
ただし、以降は$ \Delta xを省略して、$ {\rm d}f(x)=f'(x)\Delta xのように書く。
問題: (微小量): 関数$ f(x)=xから関数$ {\rm d}f(x)を求めよ。
(微小量) 前問の結果から、$ {\rm d}x=\Delta xと書けるほか、$ {\rm d}fを$ {\rm d}f(x)=f'(x){\rm d}xと書ける。
問題: (微小量の商): 微小量$ {\rm d}fと$ {\rm d}xの商$ \frac{{\rm d}f}{{\rm d}x}を求めて$ xやその増分$ \Delta xに関する式で表せ。
問題: (微小量の積): 微小量の$ {\rm d}fと$ {\rm d}xと$ {\rm d}tを組み合わせた商同士の積$ \frac{{\rm d}f}{{\rm d}x}\frac{{\rm d}x}{{\rm d}t}を求めよ。
ベクトル
問題: (矢印の和): 平面上の矢印の集合を$ Vとする。平面上で矢印$ \bm aの終点を矢印$ \bm bの始点として矢印$ \bm bを描くとき、
矢印$ \bm aの始点から矢印$ \bm bの終点までを結ぶ新たな矢印を和$ \bm a+\bm bと考えることができるか?(可換群を成すか?)
問題: (矢印の定数倍): 平面上で矢印$ \bm a,\bm bの長さを$ s,t\in\R倍した長さの矢印について、以下の式は成立するか?
(結合律): $ (st)\bm a\overset?=s(t\bm a)
(分配律1): $ (s+t)\bm a\overset?=s\bm a+t\bm a
(分配律2): $ s(\bm a+\bm b)\overset?=s\bm a+s\bm b
問題: (数列の和): 長さ$ nの数列$ \bm a=\{a_i\}_iと$ \bm b=\{b_i\}_iの各項の和$ \{a_i+b_i\}_iを求める計算を和$ \bm a+\bm bと考えることができるか?
問題: (数列の定数倍): 長さ$ nの数列$ \bm a=\{a_i\}_iと$ \bm b=\{b_i\}_iの各項を定数$ s,t\in\R倍する計算$ s\bm a=\{sa_i\}_iについて、以下の分配律は成立するか?
(結合律): $ (st)\bm a\overset?=s(t\bm a)
(分配律1): $ (s+t)\bm a\overset?=s\bm a+t\bm a
(分配律2): $ s(\bm a+\bm b)\overset?=s\bm a+s\bm b
(ベクトル): 体$ Kと集合$ Vについて、和$ +:V\times V\to Vとスカラー倍$ \cdot K\times V\to Vが定義され、以下の式を満たす時、$ (V,K,+,\cdot)を、あるいは単に$ Vを体$ K上のベクトル空間と呼ぶ。
任意の$ s,t\in K,$ \bm a,\bm b\in Vについて、
(スカラー倍の結合律): $ s(t\bm a)=(st)\bm a=st\bm a
(スカラー和の分配律): $ (s+t)\bm a=s\bm a+t\bm a
(ベクトル和の分配律): $ s(\bm a+\bm b)=s\bm a+s\bm b
$ Kが可換体のとき、右スカラー倍$ \cdot:V\times K\to Vを定義して以下の式を要請すると計算が楽になる
(可換律): $ s\bm a=\bm a s
問題: (右スカラー倍): 可換体$ K上のベクトル$ Vが可換律$ s\bm a=\bm a sを満たす時、以下の式は成立するか?
(右スカラー倍の結合律): $ (\bm as)t=\bm a(st)=\bm ast
(スカラー和の右分配律): $ \bm a(s+t)=\bm as+\bm at
(ベクトル和の右分配律): $ (\bm a+\bm b)s=\bm as+\bm bs
(体はベクトルか): 体$ K自身がベクトルを成すか?
(終域がベクトルの関数はベクトルか): 終域がベクトルの関数$ f:S\to Vと$ g:S\to Vの和とスカラー倍を以下のように定めるとき、関数$ S\to V全体の集合はベクトルを成すか?
(和): $ (f+g)(x)=f(x)+g(x)
(スカラー倍): $ (k f)(x)=k\{f(x)\}
問題: (一次従属): 平面上の平行な矢印$ \bm a_1,\bm a_2について、$ \bm 0=s\bm a_1+t\bm a_2を満たす$ s,tを求めよ。
問題: (一次独立): 平面上の平行ではない矢印$ \bm a,\bm bについて$ \bm 0=s\bm a+t\bm bを満たす$ s,tを求めよ。
(一次独立): ベクトル空間$ Vの部分集合$ \{\bm x_1,\cdots,\bm x_n\}が以下の式を満たす時、一次独立という。満たされない場合は一次従属という。
$ \bm 0=\sum_{k=1}^n a_k\bm x_k\Rightarrow ^{\forall k}\lbrack a_k=0\rbrack
なお、$ \Leftarrowはいつでも成立する。
問題: 長さが$ 4の数列がベクトルを成すことと、4つの長さが4の数列を集めた集合$ \{\bm a_1,\bm a_2,\bm a_3,\bm a_4\}が一次独立を成す条件を調べよ。
(基底): 任意のベクトル$ \bm x\in Vを一次独立なベクトルの集合$ E=\{\bm e_1,\cdots,\bm e_n\}とスカラー$ a_1,\cdots,a_nを用いて以下の式で表せる時、$ Eを$ Vの基底と呼ぶ。
(線形結合): $ \bm x=\sum_{k=1}^na_n\bm e_k
(次元): ベクトル空間$ Vの基底$ Eの大きさを次元と呼ぶ。
$ \dim V=|B|
問題: (次元の一意性): 基底に1本ベクトルを加えたり、1本ベクトルを取り除いたりしても基底の性質は保たれるか?
(ベクトルの型): 体$ K上のベクトル空間の次元が$ nのとき、$ K^nと書く。
問題: 有理数$ \mathbb Q、実数$ \R、複素数$ \mathbb Cを体とする次元が$ nのベクトルの型を書け。
行列
(線形写像): 体$ K上のベクトル空間$ K^mの元を定義域に取り、体$ K上のベクトル空間$ K^nの元を返す関数$ f:K^m\to K^nが以下の性質を満たす時、$ fを線型写像という。
$ f(k\bm x+\bm y)=kf(\bm x)+f(\bm y)
問題: ベクトル空間$ \mathbb C^mの元を定義域に取り、ベクトル空間$ \mathbb Q^nの元を返す関数$ f:\mathbb C^m\to\mathbb Q^nを線形写像として構成できるか?
(線形写像と基底): 線形写像に基底ベクトル$ \bm e_jを代入した結果はベクトル$ V_2の元なので、基底の線形和$ f(\bm e_j)=\sum_{i=1}^na_{i,j}\bm e_jで表せる。
(行列): 線形写像に基底を代入した時に得られる基底の線形和の係数を並べたものを行列と呼ぶ。
$ A=\begin{bmatrix}a_{1,1}&\cdots&a_{m,1}\\\vdots&\ddots&\vdots\\a_{1,n}&\cdots&a_{m,n}\end{bmatrix}=\lbrack a_{i,j}\rbrack_{i,j}
線形写像の適用を行列を用いて以下のように表す
$ f(\bm x)=A\bm x
(線形写像の和とスカラー倍): 線形写像の値域はベクトルなので以下のように写像そのものの計算を定義できる。
$ k\in K,\ \bm x\in V_1,\ f,g\in V_1\to V_2のとき、
$ (f+g)(\bm x)=f(\bm x)+g(\bm x)
$ (kf)(\bm x)=k\{f(\bm x)\}
問題 (行列の和とスカラー倍): 行列の和とスカラー倍を求めよ。
問題: (行列もベクトル?): 線形写像$ f:K^m\to K^nから構成される行列全体は体$ K上のベクトル空間か?
(行列の型): 線形写像$ f:K^m\to K^nから構成される行列を$ K^{m\times n}と書く。
問題: 有理数$ \mathbb Q、実数$ \R、複素数$ \mathbb Cを体とする次元が$ m\times nの行列の型を書け。
(像): 一般に、定義域全体を動く値から写像により写された値全体の集合$ {\rm Im}(f)=\{v_2\in V_2|v_2=f(v_1)\}像と呼ぶ。
(核): 値域に零元$ 0が存在する時、定義域の元のうち$ 0に写す元全体の集合$ {\rm Ker}(f)=\{v_1\in V_1|0=f(v_1)\}を核と呼ぶ。
問題: (像と核の次元): 線形写像の像と核の次元と定義域のベクトル空間の次元の関係を求めよ。
(行列のランク): 線形写像の像の次元をランクと呼ぶ。
問題: (行列積): 線形写像$ Bを適用したベクトル$ B\bm xに線形写像$ Aを適用したベクトル$ AB\bm xの成分を求めよ。
問題: (行列積の計算可能性): 行列の積$ ABを計算する時に行列$ A,Bが満たすべき条件を求めよ。
問題: (分配律): 行列積は分配律を満たすか?
問題: (可換性): 行列$ A,B\in K^{n\times n}の行列積は可換か?
問題: (複素数): 複素数$ a+ibと$ c+idの和と積を求めよ。
問題: (行列と複素数): 行列$ \begin{bmatrix}a&-b\\b&a\end{bmatrix}と$ \begin{bmatrix}c&-d\\d&c\end{bmatrix}の和と積を求めよ。
(転置): 行列$ A=\lbrack a_{i,j}\rbrack_{i,j}の行成分と列成分を入れ替えた行列$ A^\top=\lbrack a_{j,i}\rbrack_{i,j}を転置行列という。
(エルミート共役): 転置して各成分の複素共役をとった行列$ A^*=\lbrack \overline{a_{j,i}}\rbrack_{i,j}をエルミート共役や随伴という。
問題: (エルミート共役): 複素行列から実行列を得る操作$ r:\mathbb C^{m\times n}\to\R^{2m\times2n}を(1)で定めるとき、以下の問いに答えよ。
$ r(\lbrack a_{i,j}+b_{i,j}\rbrack_{i,j})=\left\lbrack\begin{bmatrix}a&-b\\b&a\end{bmatrix}\right\rbrack_{i,j}\qquad\cdots(1)
$ C\in\mathbb C^{m\times n}とするとき、$ r(C^\dag)と$ \{r(C)\}^\topを求めよ。
問題: (転置): $ (A+B)^\topや$ (AB)^\topを$ A^\topや$ B^\topを用いて表せ。また、エルミート共役について同様に計算せよ。
問題: (ベクトルも行列): 体$ Kを定義域としてベクトル$ Vをかえす線形写像$ f:K\to Vを行列で表せ。 ただし、$ f(1)=x_1\bm e_1+\cdots x_n\bm e_nとする。
(行ベクトル、列ベクトル): 行方向に成分を並べたベクトルを行ベクトル、列方向に成分を並べたベクトルを列ベクトルという。
ベクトル$ \bm xを列ベクトルとして扱う流派と行ベクトルとして扱う流派がある。ここでは列ベクトルとして扱う。
(豆知識): 転置は本質的な意味とは異なり、縦ベクトルの成分を記す時に紙面を節約するために用いられることが多い。
例えば、$ \bm x=\lbrack x_1\ \cdots\ x_n\rbrack^\topのように記される。
問題: (ドット積): 行ベクトル$ \bm x^\topと列ベクトル$ \bm yの積$ \bm x\cdot\bm y=\bm x^\top\bm yを成分に分解して計算せよ。また、複素ベクトルに関して転置の代わりにエルミート共役を用いて計算せよ。
問題: (テンソル積): 列ベクトル$ \bm xと行ベクトル$ \bm y^\topの積$ \bm x\otimes\bm y=\bm x\bm y^\topを成分に分解して計算せよ。
(ベクトルのベクトル): 行列$ A=\lbrack a_{i,j}\rbrack_{i,j}を以下のように表すことがある。
(列ベクトルの行ベクトル): $ A=\begin{bmatrix}\bm r_1\cdots\bm r_n\end{bmatrix}
(行ベクトルの列ベクトル): $ A=\begin{bmatrix}\bm c^\top_1\\\vdots\\\bm c_m^\top\end{bmatrix}
問題: (行列積・ドット積風): 行列$ A=\lbrack\bm a_1^\top\cdots\bm a_n^\top\rbrack^\top,\ B=\lbrack\bm b_1\cdots\bm b_n\rbrackの積を求めよ。
問題: (行列積・テンソル積風): 行列$ A=\lbrack\bm a_1\cdots\bm a_n\rbrack,\ B=\lbrack\bm b_1^\top\cdots\bm b_n^\top\rbrack^\topの積を求めよ。
問題 (線形連立方程式): 以下の連立方程式の変数$ x_1,x_2,x_3をベクトル$ x_1\bm e_1+x_2\bm e_2+x_3\bm e_3で表した時、連立方程式を行列を用いて表せ。(その式の正当性を証明せよ)
$ \left\{\begin{matrix}a_{1,1}x_1+a_{1,2}x_2+a_{1,3}x_3=b_1\\a_{2,1}x_1+a_{2,2}x_2+a_{2,3}x_3=b_2\\a_{3,1}x_1+a_{3,2}x_2+a_{3,3}x_3=b_3\end{matrix}\right.
問題: (線形方程式の可解性): 線形連立方程式の解について
不定解を持つのはどのような場合か?
一意解を持つのはどのような場合か?
解を持たないのはどのような場合か?
(正方行列): 形状が$ n\times nの行列を正方行列という。
(単位行列): 対角成分が1, それ以外の要素が0の正方行列を単位行列といい、$ Eで表す。
$ 4\times 4の場合: $ E=\begin{bmatrix}1&0&0&0\\0&1&0&0\\0&0&1&0\\0&0&0&1\\\end{bmatrix}
問題: 正方行列とその積と和はどのような代数構造(疑環/半環/環/体/etc)を成すか?
(逆行列): 正方行列$ Aに対して$ AA^{-1}=A^{-1}A=Eを満たす正方行列$ A^{-1}を逆行列と呼ぶ。
(ガウスの消去法): 行列$ Aと単位行列$ Eに以下に列挙する操作の同時適用を繰り返して$ Aが$ Eになる時に$ Eが$ A^{-1}になる。
(行の入れ替え): 行$ r_iと行$ r_jを入れ替える。$ (r_i,r_j):=(r_j,r_j)
(行の定数倍): 行$ r_iを定数$ k倍する。$ r_i:=kr_i
(行の和): 行$ r_iに行$ r_jを足す$ r_i:=r_i+r_j
(列の入れ替え): 列$ c_iと列$ c_jを入れ替える。$ (c_i,c_j):=(c_j,c_j)
(列の定数倍): 列$ c_iを定数$ k倍する。$ c_i:=kc_i
(列の和): 列$ c_iに列$ c_jを足す$ c_i:=c_i+c_j
問題: ガウスの消去法により$ 2\times 2行列と$ 3\times3行列と$ 4\times 4行列の逆行列を求めよ。
(豆知識): ガウスの消去法による$ n\times n行列の逆行列の計算量は$ O(n^3)である。
(正則行列): 逆行列を持つ正方行列を正則行列と呼ぶ。
問題: (逆行列の性質): $ (AB)^{-1}を$ A^{-1}と$ B^{-1}で表せ。また、$ (A^\top)^{-1}を$ A^{-1}で表せ。
問題: (正則行列の代数構造): 正則行列とその積と和はどのような代数構造を成すか?
二次形式
問題: (ドット積): ベクトル$ \bm x,\bm yについて、$ \bm x\cdot\bm y=\bm x^\top\bm yを計算し、成分を用いて表せ
問題: (ドット積): ベクトル$ \bm x,\bm yについて、$ \bm x\cdot\bm y=\bm x^\dag\bm yを計算し、成分を用いて表せ
問題: (二次形式): ベクトル$ \bm x,\bm yと行列$ Aについて、$ f(\bm x,\bm y)=\bm x^\top A\bm yを計算し、成分を用いて表せ。
問題: (二次形式): ベクトル$ \bm x,\bm yと行列$ Aについて、$ f(\bm x,\bm y)=\bm x^\dag A\bm yを計算し、成分を用いて表せ。
問題: (双線形写像): 2変数関数$ f(\bm x,\bm y)=\bm x^\top A\bm yが双線型性を持つことを示せ。
(双線形性1): $ f(k\bm a+\bm b,\bm x)=kf(\bm a,\bm x)+f(\bm b,\bm x)
(双線形性2): $ f(\bm x,k\bm a+\bm b)=kf(\bm x,\bm a)+f(\bm x,\bm b)
問題: (半双線形写像): 2変数関数$ f(\bm x,\bm y)=\bm x^* A\bm yが半双線型性を持つことを示せ。
(半双線形性1): $ f(k\bm a+\bm b,\bm x)=kf(\bm a,\bm x)+f(\bm b,\bm x)
(半双線形性2): $ f(\bm x,k\bm a+\bm b)=\overline kf(\bm x,\bm a)+f(\bm x,\bm b)
(対称行列): $ H^\top=Hを満たす行列を対称行列と言う。
問題: (対称性): $ Hを対称行列とするとき、2変数関数$ f(\bm x,\bm y)=\bm x^\top H\bm yが対称性を持つことを示せ。
(対称性): $ f(\bm x,\bm y)=f(\bm y,\bm x)
(エルミート行列): $ H^*=Hを満たす行列エルミート行列 (Hermitian matrix) と言う。
問題: (エルミート対称性): $ Aをエルミート行列とするとき、2変数関数$ f(\bm x,\bm y)=\bm x^* H\bm yがエルミート対称性を持つことを示せ。
(エルミート対称性): $ f(\bm x,\bm y)=\overline{f(\bm y,\bm x)}
(対角行列): 対角成分以外が0の行列$ \Lambdaを対角行列と言う。
問題: (対角行列の行列式): 対角行列$ \Lambdaの行列式$ \det(\Lambda)を成分を用いて計算せよ。
(対角化): 正則行列$ Pと対角行列$ \Lambdaを用いて正方行列$ Aを$ A=P\Lambda P^{-1}のように分解することを、対角化と言う。
問題: (対角化と行列式): $ A=P\Lambda P^{-1}と対角化される時、$ Aの行列式を求めよ。
問題: (対角化と体): $ k\in K,$ n\in\Zとする。正方行列$ A,Bが$ A=P\Lambda_A P^{-1},B=P\Lambda_B P^{-1}のように対角化される時、$ A+B,A^2,A^n,A^\frac1n,kAを対角化せよ。
問題: (行列指数関数): $ e^A=\sum_{k=0}^\infty\frac1{k!}A^kは収束するか?
(直交行列): 単位行列を$ Eとして、正方行列$ Qが$ Q^\top Q=QQ^\top=Eを満たす時、$ Qを直交行列と呼ぶ。
後に紹介する内積により、直交と呼ばれる理由がわかる
(ユニタリ行列): 単位行列を$ Eとして、正方行列$ Uが$ U^* U=UU^*=Eを満たす時$ Uをユニタリ行列と呼ぶ。
問題: (ユニタリ行列): ユニタリ行列$ Uを用いて正方行列$ Aが$ A=U\Lambda U^{-1}のように対角化される時、$ Aはエルミート行列か?
問題: (グラム=シュミットの直交化): 任意の正則行列$ Pを$ \lbrack\bm p_1\cdots\bm p_n\rbrackで表す時、$ \bm a_1=\bm p_1、$ \bm a_k=\bm p_k-\sum_{i=1}^{k-1}\frac{\bm p_{i}^*\bm a_{k}}{\bm p_i^*\bm p_i}\bm p_iのように設定したベクトル$ \bm a_1\cdots\bm a_nは$ \bm a_i^*\bm a_j=0\quad(i\ne j)を満たすか?
問題: 任意のエルミート行列はユニタリ行列を用いて対角化できるか?
(固有値と固有ベクトル): $ A\bm x=\lambda\bm xを満たす$ \lambda_kを固有値と呼び、その時のベクトル$ \bm x_kを固有ベクトルと呼ぶ。
問題: (対角化と固有値): 正方行列$ Aが$ A=P\Lambda P^{-1}のように対角化される時、$ Aの固有値と固有ベクトルを求めよ。
問題: (固有値の計算): $ Aの固有値$ \lambda_kは$ \det(A-\lambda_k E)=0を満たすか?
問題: (固有値の計算): $ 3\times 3行列の固有値と固有ベクトルを求めよ。
問題: (対角化の計算): $ 3\times 3行列を対角化せよ。
問題: (固有値の計算): $ \begin{bmatrix}a&-b\\b&a\end{bmatrix}の固有値と固有ベクトルを求めよ。
(定値): 任意の$ xに対して、多変数関数$ f(x_1,\cdots,x_n)に$ xを代入した値$ f(x,\cdots,x)の符号が等しいことを定値性と呼ぶ。
(正定値): $ f(x,\cdots,x)>0
(半正定値): $ f(x,\cdots,x)\ge0
(半負定値): $ f(x,\cdots,x)\le0
(負定値): $ f(x,\cdots,x)<0
(不定値): ある$ x,yに対して$ f(x,\cdots,x)>0かつ$ f(y,\cdots,y)<0
問題: (定値性と固有値): 正方行列が$ A=P\Lambda P^{-1}と対角化される時、2変数関数$ f(\bm x,\bm y)=\bm x^\top A\bm yの定値性と固有値の関係を求めよ。
ノルムと内積
(距離): 集合$ Sの要素に実数を割り当てる関数$ \mu:S\times S\to\Rが以下の式を満たす時、距離と呼ぶ。
任意の$ \bm a,\bm b,\bm c\in Sについて
(非退化性): $ \mu(\bm a,\bm b)\ge0,\quad\mu(\bm a,\bm b)=0\Leftrightarrow\bm a=\bm b
(対称性): $ \mu(\bm a,\bm b)=\mu(\bm a,\bm b)
(三角不等式): $ \mu(\bm a,\bm b)+\mu(\bm b,\bm c)\ge\mu(\bm a,\bm c)
問題: (極限): 距離関数が定義されることで、極限の議論ができることを確認せよ。
問題: (コーシー列): 距離関数が定義されることで、コーシー列による収束性の議論ができることを確認せよ。
問題: 平面上に適当な三角形を描き、三角不等式の成立を確認せよ。
(ノルム): ベクトル$ Vの要素に実数を割り当てる関数$ \|\bull\|:V\to\Rが以下の式を満たす時、ノルムと呼ぶ。
任意の$ \bm x,\bm y\in Vについて
(独立性): $ \|\bm x\|=0\Leftrightarrow\bm x=\bm 0
(斉次性): $ \|k\bm x\|=|k|\|\bm x\|
(劣加法性): $ \|\bm x\|+\|\bm y\|\ge\|\bm x+\bm y\|
劣加法性の式は三角不等式とも呼ばれる。
問題: 平面上に適当な三角形を描き、劣加法性の成立を確認せよ。
問題: ベクトル$ \bm x,\bm yの差のノルム$ \|\bm a-\bm b\|は距離を成すか?
問題: (座標空間上のノルム1): 二次元平面において、原点$ O=(0,0)と点$ A=(a_1,a_2)の間の距離$ |OA|を求めよ。(その式の正当性を図で示せ)
問題: (座標空間上のノルム2): 三次元空間において、原点$ O=(0,0,0)と点$ A=(a_1,a_2,a_3)の間の距離$ |OA|を求めよ。(その式の正当性を図で示せ)
問題: (座標空間上のノルム3): n次元空間において、原点$ O=(0,\cdots,0)と点$ A=(a_1,\cdots,a_n)の間の距離$ |OA|を求めよ。(その式の正当性を証明せよ)
問題: (座標空間上の距離): 2点$ A=(a_1,\cdots,a_n),\ B=(b_1,\cdots,b_n)の間の距離$ |AB|を求めよ。(その式の正当性を証明せよ)
問題: (垂線の足): 原点$ Oと点$ A=(a_1,a_2,a_3)が成す直線に対して点$ B=(b_1,b_2,b_3)から引いた垂線の足$ Hは直線$ OB上にあるため、$ H=hB=(hb_1,hb_2,hb_3)のように書ける。$ hの値を求めよ。
問題: (垂線の足までの距離): $ |OH|を求めよ。
問題: (垂線の足): 原点$ Oと点$ A=(a_1,\cdots,a_n)が成す直線に対して点$ B=(b_1,\cdots,b_n)から引いた垂線の足$ Hは直線$ OB上にあるため、$ H=hB=(hb_1,\cdots,hb_n)のように書ける。$ hの値を求めよ。
問題: (垂線の足までの距離): $ |OH|を求めよ。
(座標空間上の余弦): 原点$ Oから 2 点$ A,Bに引いた2本の線分の成す角$ \thetaについて、垂線の足までの距離が$ |OH|=|OA|\cos\thetaを成すことを図を描いて確認せよ。また、n次元空間において$ \cos\thetaを$ A,Bの座標を用いて表せ。
問題: $ |OA||OB|\cos\thetaを求めよ。
問題: (座標空間上の余弦定理) n次元空間において、余弦定理を用いて2点$ A,B間の距離$ |AB|を求めよ。
(内積): 実ベクトル空間$ \R^nの2要素に実数を割り当てる関数$ \lang\bull,\bull\rang:\R^n\times\R^n\to\Rが、以下の式を満たす時、内積と呼ぶ。
(双線形性1): $ \lang k\bm a+\bm b,\bm x\rang=k\lang\bm a,\bm x\rang+\lang\bm b,\bm x\rang
(双線形性2): $ \lang \bm x,k\bm a+\bm b\rang=k\lang\bm x,\bm a\rang+\lang\bm x,\bm b\rang
(対称性): $ \lang\bm a,\bm b\rang=\lang\bm b,\bm a\rang
(非退化性): $ \lang\bm x,\bm x\rang=0\quad\Rightarrow\quad\bm x=0
(半正定値性): $ \lang\bm x,\bm x\rang\ge0
問題: (内積): ベクトル$ OAとベクトル$ OBに対して$ \cos\thetaを$ OA,OBの成す角とすると、$ |OA||OB|\cos\thetaは内積の性質をみたすか?
問題: (内積とノルム): 自分自身との内積の平方根$ \sqrt{\lang\bm x,\bm x\rang}はノルムの性質を満たすか?
問題: (平行四辺形): 2本のベクトル$ \bm x,\bm yが成す平行四辺形内にその和$ (\bm x+\bm y)と差$ (\bm x-\bm y)を図示せよ
問題: (中線定理1): ノルムを$ \|\bm x\|^2=\lang\bm x,\bm x\rangで定める時に、$ \|\bm x+\bm y\|^2+\|\bm x-\bm y\|^2=2(\|\bm x\|^2+\|\bm y\|^2)を満たすか?
問題: (内積行列): 双線形写像$ f(\bm x,\bm y)=\bm x^\top A\bm yが内積の条件を満たすための正方行列$ Aはどのような行列か?
(内積): 複素ベクトル空間$ \mathbb C^nの2要素に複素数を割り当てる関数$ \lang\bull,\bull\rang:\mathbb C^n\times\mathbb C^n\to\mathbb Cが、以下の式を満たす時、内積と呼ぶ。
(第1変数に対する共役線形性): $ \lang k\bm a+\bm b,\bm x\rang=k\lang\bm a,\bm x\rang+\lang\bm b,\bm x\rang
(第2変数に対する線形性): $ \lang \bm x,k\bm a+\bm b\rang=\overline k\lang\bm x,\bm a\rang+\lang\bm x,\bm b\rang
(エルミート対称性): $ \lang\bm a,\bm b\rang=\overline{\lang\bm b,\bm a\rang}
(非退化性): $ \lang\bm x,\bm x\rang=0\quad\Rightarrow\quad\bm x=0
(半正定値性): $ \lang\bm x,\bm x\rang\ge0
問題: (複素内積1): 複素ベクトル空間上の内積が実ベクトル空間上の内積を含むことを確認せよ。
問題: (コーシー・シュワルツ不等式): 内積とノルムについて$ \lang\bm x,\bm y\rang\le\|\bm x\|\|\bm y\|が成立するか?
問題: (複素内積2): 複素ベクトル空間上の内積から$ \sqrt{\lang\bm x,\bm x\rang}がノルムの性質を満たすことを確認せよ。また、中線定理の成立を確認せよ。
問題: (複素内積行列): 半双線形写像$ f(\bm x,\bm y)=\bm x^* A\bm yが複素内積の条件を満たすための正方行列$ Aはどのような行列か?
(距離関数、ノルム空間、内積空間): 距離関数をもつ集合を距離空間と呼ぶ。ベクトル空間にノルムや内積を加えたものをノルム空間や内積空間と呼ぶ。また、それらを完備化したものを完備距離空間、バナッハ空間(完備ノルム空間)、ヒルベルト空間(完備内積空間)と呼ぶ。
問題: 距離関数の存在により距離空間、ノルム空間、内積空間についてコーシー列を用いた完備化の議論ができることを確認せよ。
問題: (非ユークリッドノルム): ユークリッドノルム(L2ノルム) $ \|\bm x\|_2=(x_1^2+\cdots+x_n^2)^\frac12に対して$ (x_1^p+\cdots+x_n^p)^\frac1pがノルムの性質を満たすことを確認せよ。
これをLpノルムと呼び、$ \|\bm x\|_pのように書く。
問題: (L∞ノルム): $ \|\bm x\|_\infty=\lim_{p\to\infty}\|\bm x\|_pを求めよ。
問題: (内積0): 2つのベクトル$ \bm a,\bm bの内積が0になる図形的条件を求めよ。
(正規直交基底): 基底$ B=\{\bm e_1,\cdots,\bm e_n\}が以下の性質を満たす時、正規直交基底と呼び、計算しやすい良い性質を持つ。
任意の$ i, j,\ kに対して、
(正規性): $ |\bm e_k|=1
(直交性): $ i\ne j\quad\Leftrightarrow\quad\lang\bm e_i,\bm e_j\rang=0
問題: (係数抽出): 正規直交基底の線形和で表されるベクトル$ \bm x=\sum_{k=1}^n x_k\bm e_kと基底との内積$ \lang\bm e_k,\bm x\rangを求めよ。
問題: (歪んだ基底): 正規直交ではない基底の線形和で表されるベクトル$ \bm x=\sum_{k=1}^n x_k\bm e_kと基底との内積$ \lang\bm e_k,\bm x\rangを求めよ。