十四段
歌の道のみいにしへに変らぬなどいふ事もあれど、いさや。今も詠みあへる同じ詞(ことば)・歌枕も、昔の人の詠(よ)めるは、さらに、同じものにあらず、やすく、すなほにして、姿もきよげに、あはれも深く見ゆ。 兼好は後に「和歌四天王」と呼ばれるほどに和歌に詳しい人だったようです おそろしき猪(ゐ)のししも、「ふす猪(ゐ)の床(とこ)」と言へば、やさしくなりぬ。
八雲御抄という本で次のようにあるのを踏まえているそうです 歌のやうにいみじきものなし。ゐのししなどいふおそろしき物も、ふすゐの床などいひつれば、やさしきなり 昔はそこらじゅうに猪がいたのだろうか? 増井俊之.icon 神戸の山中とかは今でもいるけどそれほど恐れられてはいないような
されど、この歌も、衆議判(しゆぎはん)の時、よろしきよし沙汰(さた)ありて、後にも、ことさらに感じ、仰せ下されけるよし、家長(いへなが)が日記には書けり。