C4t3g0ry 論 雑メモ
タイトルが変なのは「圏論」とか「Category Theory」とか書くと怖い人や怪しい人が寄ってたかってくるため。
圏・関手・自然変換
小さな圏, 局小な圏
圏$ \mathscr{A}の全ての射のあつまり$ \mathrm{Mor}(\mathscr{A})が有限のとき、$ \mathscr{A}は有限であるという。
圏$ \mathscr{A}の全ての射の集まり$ \mathrm{Mor}(\mathscr{A})が集合になる程度に小さいとき$ \mathscr{A}は小さいと言う。
圏$ \mathscr{A}の任意の対象$ X, Y \in \mathscr{A}に対し$ \mathrm{Hom}(X, Y)が集合程度に小さいとき$ \mathscr{A}は局小であると言う。
コンマ圏
$ P, Qを下の図式のような関係の関手とする。
https://gyazo.com/ffce6e9c7d5d78acff52682e195d6879
このときコンマ圏$ P\downarrow Qとは次のような圏である。
対象は$ (A, h, B)である。ここで$ A\in\mathscr{A}, B\in\mathscr{B}, h\in\mathscr{C}(P(A), Q(B))
$ (A, h, B)から$ (A', h', B')への射とは次の図式を可換にするような射の組$ (f, g)である。
自然同型
自然変換$ \alpha:F\Rightarrow Gの各成分が同型射なとき、もしくは同値なこととして$ \alphaが圏$ \mathscr{A}^{\mathscr{B}}の射として同型射であるとき、$ \alphaを自然同型といい$ \alpha:F\cong Gと書く。また、このとき
$ A について自然に$ F(A)\cong G(A)
と表現することもある。
例:
$ V\in\mathbf{FDVeck}_kについて自然に$ V\cong V^{**}
$ X\in\mathbf{Top}について自然に$ \mathscr{O}(X)\cong \mathscr{C}(X)
$ A, B, C\in\mathbf{Set}について自然に$ (A^B)^C\cong A^{B\times C}
圏同値の特徴付け
選択公理の元で、
$ F:\mathscr{C}\to\mathscr{D}が圏同値を与える$ \iff$ F:\mathscr{C}\to\mathscr{D}は忠実充満で本質的に全射。
(証明)
$ (\Rightarrow)$ F:\mathscr{C}\to\mathscr{D}, G:\mathscr{D}\to\mathscr{C}を関手とし、圏同値$ \epsilon:GF \cong 1_{\mathscr{C}},\ \eta:1_{\mathscr{D}} \cong FGが与えられたとする。
本質的に全射であること
まず、対象$ D\in\mathscr{D}を任意に選択する。自然同型$ \eta:1_{\mathscr{D}} \cong FGより$ D\cong FG(D)。よって$ Fは本質的に全射。
忠実であること
$ \mathscr{C}の射$ f, g:C\rightrightarrows C'に対し$ Ff=Fgとする。自然変換$ \epsilon:GF\cong 1_{\mathscr{C}}より
https://gyazo.com/4909be32013842910564e2838301651b
が可換。よって、$ f = \epsilon_{C'} \circ Gf \circ \epsilon_C^{-1} = \epsilon_{C'} \circ Gg \circ \epsilon_C^{-1} = gとわかる。ゆえに$ Fは忠実。
また、対称性から同様に$ Gも忠実である。
充満であること
$ k:F(C)\to F(C')と仮定する。このとき自然同型$ \epsilon:GF\cong 1_{\mathscr{C}}より次の図式が可換になるような$ h:C\to C'が一意的に存在する。
https://gyazo.com/6354b7c7795e4f5daf138cbd8ef4146a
このとき$ Gk = GFh($ hに対する$ \epsilonの可換図式を考える)。よって$ Gの忠実性から$ k = Fh。ゆえに$ Fは充満。
$ (\Leftarrow)関手$ F:\mathscr{C}\to\mathscr{D}は忠実充満で本質的に全射とする。選択公理と$ Fが本質的に充満であることから$ D\in\mathscr{D}に対して同型射$ \eta_{D}:D\cong FG(D)が存在するような$ G(D)\in\mathscr{C}を取れる。$ \mathscr{D}の射$ l:D\to D'に対し、同型射$ \eta_D:D\cong FG(D),\ \eta_{D'}:D'\cong FG(D')から、次の図式が可換となるような$ \mathscr{C}の射$ FG(D)\to FG(D')が一意的に存在する。
https://gyazo.com/a3ebb9d3a87f086fb4f35bb02768f4b4
ゆえに$ Fの忠実充満性から$ !\exist\ G(D)\to G(D')。これを$ G(l)とする。上の図式が可換なので$ \eta:FG\cong 1_{\mathscr{D}}は自然同型。よってあとは$ Gが関手であることを確かめ、自然同型$ \epsilon:1_{\mathscr{C}}\cong GFを定義すれば良い。
$ Gが関手であること
$ l = 1_Dとする。このとき下の可換図式が成り立つ。
https://gyazo.com/4661694276571efe0fc2675a70c7275f
($ FG1_Dは$ Gの定義から、$ F1_{G(D)}は実際に当てはめると可換になる)
左の射は一意的だから$ F1_{G(D)}=FG1_D。よって$ Fの忠実性より$ G1_D = 1_{G(D)}
また、$ l':D'\to D''を$ \mathscr{D}の射とすると
https://gyazo.com/aa0c0b840603c8ad79cb1b4363366166
左の射は一意的だから$ Fの忠実性より$ G(l''\circ l) = Gl'' \circ Gl。
以上より$ Gは$ \mathscr{D}から$ \mathscr{C}への関手。
自然同型$ \epsilon:1_{\mathscr{C}}\cong GFを定義する
対象$ C\in\mathscr{C}に対し同型射$ F\epsilon_C:F(C)\cong FGF(C)を$ F\epsilon_C:=\eta_{F(C)}^{-1}で定義する。
$ Fは忠実充満なので同型射射$ \epsilon_C:C\cong GF(C)が一意的に存在する。
今、$ f:C\to C'を$ \mathscr{C}の射とし、次の図式を考える。
https://gyazo.com/a8ffd8359b44ffe0a759c5d375b51abc
まず、素朴に計算することで外側の長方形が可換であることがわかる。また右側の正方形は$ \eta:FG\Rightarrow 1_{\mathscr{D}}が自然変換であることから可換である。よって右下の射$ \eta_{F(C')}が同型射(特にモノ射)であることから左の正方形も可換であるとわかる(図式の節を参照)。
よって$ Fが関手であることと合わせて$ F(\eta_C \circ GFf) = F(f\circ \eta_{C'})とわかる。よって$ Fは忠実であるから$ \eta_C \circ GFf = f \circ \eta_{C'}すなわち、$ \epsilon:1_{\mathscr{C}}\Rightarrow GFは自然変換。$ \square
上の定理を使うと圏同値が同値関係なことや任意の体$ kに対して$ \mathbf{Mat}_{k} \simeq \mathbf{FDVeck}_{k}であることが簡単に示せたりする。(嬉しい)
図式
モノ射・エピ射
$ h:B\to Cがモノ射$ :\iff$ \forall f,g:A\rightrightarrows Bに対して$ hf=hg \implies f = g
$ f:A\to Bがエピ射$ :\iff$ \forall f, g:B\rightrightarrows Cに対して$ gf=hf\implies g=h
同型射$ \impliesモノかつエピ射
$ f:X\to Yは同型射とする。このとき$ fはモノ射及びエピ射。
注意: 逆は必ずしも成り立たない。
図式の定義
定義域が小さな圏である添え字圏$ Jから圏$ \mathscr{A}への関手$ F:J\to\mathscr{A}を圏$ \mathscr{A}における図式と言う。
関手は可換性を保存する
関手は可換図式を保存する。
(証明)
$ \mathscr{A}における図式とは定義域が小さい圏である関手$ F:J\to\mathscr{A}である。関手$ G:\mathscr{A}\to\mathscr{B}が与えられたとすると合成$ GF:J\to\mathscr{B}は$ \mathscr{B}における図式を定義する。$ \square
始対象・終対象
対象$ I\in\mathscr{A}が任意の対象$ X\in\mathscr{A}に対して一意的な射$ I\to Xが存在するとき$ Iを始対象という。
対象$ T\in\mathscr{A}が任意の対象$ X\in\mathscr{A}に対して一意的な射$ X\to Tが存在するとき$ Tを終対象という。
具体圏
圏$ \mathscr{A}が忠実な関手$ U:\mathscr{A}\to\mathbf{Set}を持つとき$ \mathscr{A}は具体圏であるという。
忠実な関手によるダイアグラムチェイス
$ U:\mathscr{A}\to\mathscr{B}は忠実とする。このとき$ \mathscr{A}における任意の図式が$ Uによる像で$ \mathscr{B}において可換ならば$ \mathscr{A}で可換。
(証明)
$ f_1,f_2,\dots,f_nと$ g_1,g_2,\dots,g_mが$ \mathscr{A}において並行な合成可能列で$ \mathscr{B}において
$ Uf_n\dots Uf_1 = Ug_m\dots Ug_1
を満たすとする。このとき$ Uの関手性と忠実性から$ \mathscr{A}において$ f_n\dots f_1=g_m\dots g_1。$ \square
上の命題から特に具体圏において可換性を証明するときには、出発する対象$ A\in\mathscr{A}の元$ aをとり、それが各経路$ f_1,\dots, f_nや$ g_1,\dots,g_mを通った末のゴール$ f_n\cdots f_1(a)や$ g_m\cdots g_1(a)が一致することを示せば十分になる。
長方形図式の可換性
図式
https://gyazo.com/7c5959de393b5da37517275ca0d0ecba
の外側の長方形が可換とする。このとき、次のどちらかの条件により上の図式は可換となる。
1. 右の正方形が可換で$ mはモノ射
2. 左の正方形が可換で$ kはエピ射
(証明)
2つ条件は双対であるから 1. のみ示す。1. を仮定すると外側の可換性と右側の可換性から$ mkg=ljf=mhf。$ mはモノ射だから$ kg = hfを得る。$ \square
随伴
関手$ F:\mathscr{A}\to\mathscr{B}が関手$ G:\mathscr{B}\to\mathscr{A}の左随伴関手(同様に$ Gは$ Fの右随伴関手であるといいF⊣Gと表記)であるとは
$ A\in \mathscr{A}, B\in\mathscr{B}について自然に$ \mathrm{Hom}(F(A), B) \cong \mathrm{Hom}(A, G(B))
が成り立つことを言う。
自然同型であるという条件を書き下す。そのために$ g\in\mathrm{Hom}(F(A), B)に対し自然同型による写り先を$ \overline g\in\mathrm{Hom}(A, G(B))と表記する。同様に$ f\in\mathrm{Hom}(A, G(B))に対し自然同型による写り先を$ \overline f\in\mathrm{Hom}(F(A), B)と表記する(この操作を転置という)。このとき、同型の自然性は次の2つの等式
$ \overline{F(A) \xrightarrow{g} B\xrightarrow{q} B'} = A\xrightarrow{\overline g} G(B)\xrightarrow{Gq} G(B')
$ \overline{A' \xrightarrow{p} A \xrightarrow{f} G(B)} = F(A')\xrightarrow{Fp} F(A)\xrightarrow{\overline f} B
と等価である。
もちろん、これは$ \mathscr{A}と$ \mathscr{B}が locally small ならば自然同型
https://gyazo.com/605ce5c453628d80a54dac357149c445
が存在することと同じ意味であり、これは上下の$ \mathrm{Hom}集合の濃度が等しく、$ Aおよび$ Bをそれぞれ片方ずつ固定することで生み出される関手から関手への変換が自然であることと同値である。
なお、転置を取る操作、すなわちバーを付ける操作は冪等である。つまり$ \overline{\overline{f}} = fである。
随伴の例
たいていの場合、自由関手は忘却関手の左随伴関手
$ D:\mathrm{Set}\to\mathrm{Top}を集合に離散位相を入れる関手、$ I:\mathrm{Set}\to\mathrm{Top}を集合に密着位相を入れる関手、$ U:\mathrm{Top}\to\mathrm{Set}を忘却関手とする。このとき
$ D\dashv U\dashv I.
$ \mathbf{Set}の自己関手$ A\times -は自己関手$ (-)^Aの左 (もしかしたら右) 随伴関手
体からの忘却関手は随伴を持たない
忘却関手$ U:\mathbf{Field}\to\mathbf{Ring}($ \mathbf{Ring}の部分はより大きい圏 に置き換えても良い e.g. $ \mathbf{Grp}や$ \mathbf{Set})は自身に対する左随伴関手および右随伴関手を持たない。
(証明)
$ Fを$ Uの左随伴関手とする。一意に存在する環準同型$ f:\mathbb{Z}\to U(\mathbb{Q})および$ g:\mathbb Z\to\mathbb F_2を考える。$ F, Uは随伴関手のペアなので体の準同型$ \overline f:F(Z)\to\mathbb Qおよび$ \overline g:F(Z)\to \mathbb F_2が存在する。しかし、体の間の準同型は標数を保存するため$ 0 = \mathrm{char} F(\mathbb Z) = 2となり矛盾。故に$ Uの左随伴関手は存在しない。右随伴関手の存在に関しても同様。$ \square
始対象・終対象は随伴
$ Iを$ \mathscr{A}における始対象とし、関手$ I:\mathbf{1}\to\mathscr{A}を$ I(*)=Iとすることで$ Iと同一視することにする。このとき$ Iは一意的な関手$ \mathscr{A}\to\mathbf{1}の左随伴である。同様に終対象$ T\in \mathscr{A}は関手$ \mathscr{A}\to\mathbf{1}の右随伴関手である。
随伴の合成
二つの随伴関手の組
https://gyazo.com/e55e2b92aad17354781a39e1b4aa14c6
を仮定する。このとき、
https://gyazo.com/d55975ff17dbffc7d0b825d9ef5d6b5e
がなりたつ。
(証明)
$ A\in\mathscr{A},C\in\mathscr{C}について自然に
$ \mathrm{Hom}_{\mathscr{A}}(A, GG'(C)) \cong \mathrm{Hom}_{\mathscr{B}}(F(A), G'(C)) \cong \mathrm{Hom}_{\mathscr{C}}(F'F(A), C) \hspace{1em} \square
単位・余単位
$ F\dashv Gとする。このとき各$ A\in\mathscr{A}, B\in\mathscr{B}に対し
$ \left(A\xrightarrow{\eta_A} GF(A)\right) := \overline{1_{F(A)}}
$ \left(FG(B)\xrightarrow{\epsilon_B} B\right) := \overline{1_{G(B)}}
で定まる自然変換$ \eta:1_{\mathscr{A}}\to GF,\ \epsilon:FG\to 1_{\mathscr{B}}をそれぞれ随伴$ F\dashv Gの単位、余単位という。
($ \eta, \epsilonが自然変換であること)
$ \etaについて見る。ゆえに$ f:A\to A'に対する次の図式が可換かどうかを見ればよい
https://gyazo.com/6d2d5e8842776e8cbab4c9da9752558f
それぞれの経路の転置を考える。
まず、$ GF(f)\circ\eta_A = A\xrightarrow{\eta_A}GF(A)\xrightarrow{GF(f)}GF(A') = \overline{F(A)\xrightarrow{1_{F(A)}}F(A)\xrightarrow{F(f)}F(A')} = \overline{Ff}
一方、$ \overline{\eta_{A'}\circ f} = \overline{A\xrightarrow{f}A'\xrightarrow{\eta_{A'}}GF(A')} = F(A)\xrightarrow{Ff} F(A') \xrightarrow{1_{F(A')}}F(A') = Ff
よって、転置の冪零性から$ GF(f)\circ \eta_A=\eta_A'\circ fとなり$ \etaは自然変換である。$ \epsilonは双対なので従う。$ \square
単位・余単位と三角等式
$ F\dashv Gとし、その単位・余単位を$ \eta, \epsilonとする。このとき次の2つの図式は可換。
https://gyazo.com/3e8043cac1b26cb54b33bfed657d03c8
(証明)
左の図式について示す。$ A\in\mathscr Aとすると$ \overline{1_{GF(A)}} = \epsilon_{F(A)} = (\epsilon F)_Aより
$ 1_{F(A)} = \overline{\eta_A} = \overline{A\xrightarrow{\eta_A} GF(A)\xrightarrow{1} GF(A)} = F(A)\xrightarrow{F(\eta_A)} FGF(A) \xrightarrow{\epsilon_{F(A)}} F(A) =(\epsilon F)_A\ \circ (F\eta)_A.
右の図式の可換性は双対より従う。$ \square
上の図式の可換性から来る等式「$ \epsilon F \circ F\eta = 1_F,\ G\epsilon \circ \eta G = 1_G」を三角等式と言ったり言わなかったりする。
転置は単位で表せる
$ F\dashv Gとし、$ \etaと$ \epsilonを単位と余単位とする。このとき任意の$ g:F(A)\to Bおよび$ f:A\to G(B)に対し、
$ \overline g = G(g)\ \circ\ \eta_A,
$ \overline f = \epsilon_B\ \circ\ F(f).
(証明)
$ g:F(A)\to Bとする。このとき、
$ \begin{aligned} \overline{F(A)\xrightarrow{g}B} &= \overline{F(A)\xrightarrow{1} F(A) \xrightarrow{g} B} \\ &= A\xrightarrow{\eta_A}GF(A)\xrightarrow{G(g)}G(B). \end{aligned}
$ f:A\to G(B)は双対性から従う。
随伴と三角等式は同値
圏及び2つの関手$ F:\mathscr{A}\to \mathscr{B},\ G:\mathscr{A}\leftarrow\mathscr{B}を取る。このとき次の二つには一対一対応がある。
1. $ Fと$ Gの間の随伴($ Fは左随伴、$ Gは右随伴とする)
2. 三角等式を満たす自然変換の組$ \left( 1_\mathscr A\xrightarrow{\eta} GF,\ FG\xrightarrow{\epsilon} 1_\mathscr B\right)
(証明)
1. から 2. が生み出されることは既にみた。今度は 2. から 1. が生み出されることを見る。
$ (\eta, \epsilon)を三角等式を満たす自然変換とする。転置は単位で表せるから随伴が存在すれば一意的である。 随伴の存在性
$ g\in\mathrm{Hom}_\mathscr B(F(A), B)に対し$ \overline g=G(g)\circ \eta_Aによって転置$ \mathrm{Hom}_\mathscr B(F(A), B)\to\mathrm{Hom}_\mathscr A(A, G(B))を定義する。同様に$ f:A\to G(B)に対し転置$ \mathrm{Hom}_\mathscr A(A, G(B))\to\mathrm{Hom}_\mathscr B(F(A), B)を$ \overline f = \epsilon_B \circ F(f)で定める。
三角等式および$ \epsilonが自然変換であることから次の図式が可換となる。
https://gyazo.com/c6bdc897a538351e754d09ec22a7eae6
$ F(A)から$ FGF(A), $ FG(B)を通り$ Bにたどり着く合成射を見ると
$ \epsilon_B\circ FG(g)\circ F\eta_A = \epsilon_B\circ F(\overline g) = \overline{\overline g},
であり、可換図式からこれは$ gに等しい。双対性から$ \overline{\overline{f}}=fも分かる。これらから転置は全単射であることが分かる。
さらに、この全単射が$ A, Bについて自然である必要がある。実際、
$ \begin{aligned} \overline{F(A)\xrightarrow{g}B\xrightarrow{q}B'} &= G(F(A)\to B\to B')\circ \eta_A \\ &= G(q)\circ G(g) \circ \eta_A \\ &= A\xrightarrow{\overline g}G(B)\xrightarrow{G(q)}G(B') \end{aligned}
であり双対性から$ \overline{A'\xrightarrow{p} A\xrightarrow{f} G(B)} = F(A')\xrightarrow{F(p)}F(A)\xrightarrow{\overline f}Bも分かる。よって、転置による全単射は自然であり、ゆえに随伴を与える。
最後に、この随伴の単位・余単位が$ \eta, \epsilonであることを示す必要がある。実際、$ Aにおける単位は
$ \overline{1_{F(A)}} = G(1_{F(A)})\circ\eta_A = 1_{GF(A)}\circ \eta_A = \eta_A,
であり、余単位については双対性から従う。$ \square
随伴と始対象
2つの関手$ F:\mathscr{A}\to\mathscr{B}, G:\mathscr{A}\leftarrow \mathscr{B}を取る。このとき次の1対1対応がある。
1. $ Fと$ Gとの間の随伴($ F\dashv Gとする)
2. 全ての$ A\in\mathscr{A}に対して$ \eta_A:A\to GF(A)が$ A\downarrow Gの始対象となるような自然変換$ \eta:1_\mathscr{A}\to GF。($ Aは関手$ \mathbf{1}\to\mathscr{A}で$ A(*) = Aを満たす。)
また、関手$ G:\mathscr{B}\to\mathscr{A}に対して、$ Gが左随伴を持つことと各$ A\in\mathscr{A}に対して圏$ A\downarrow Gが始対象を持つことは同値である。
表現可能関手と米田の補題と普遍性
米田埋め込み
$ \mathscr{A}を locally small な圏とする。各対象$ A\in\mathscr{A}に対して関手$ H_A:\mathscr{A}^{\mathrm{op}}\to\mathbf{Set}を$ H_A(B) := \mathrm{Hom}(B, A)および、射$ f:B'\to Bに対して$ H_A(f)を$ fを先に合成する写像として定める。
さらに、関手$ H_\bullet:\mathscr{A}\to\lbrack \mathscr{A}^{\mathrm{op}}, \mathbf{Set}\rbrackを対象$ A\in\mathscr{A}に対して$ H_\bullet(A) = H_A、射$ f:A\to A'に対して$ H_\bullet(f) = H_f:H_A\to H_{A'}を$ fを後から合成することで定める。この関手$ H_\bulletを米田埋め込みという。
米田の補題
$ \mathscr{A}を locally small な圏とする。このとき、各対象$ A\in\mathscr{A}と各関手$ X\in\lbrack \mathscr{A}^{op}, \mathbf{Set}\rbrackに対して自然に
$ \lbrack \mathscr{A}^{\mathrm{op}}, \mathbf{Set}\rbrack(H_A, X) \cong X(A)
が成り立つ。
米田の補題から米田埋め込みが忠実充満なことや$ H_A \cong H_{A'}\iff A\cong A'が分かる。
表現可能関手
関手$ F:\mathscr{A}^\mathrm{op}\to\mathbf{Set}が表現可能とは、ある対象$ A\in\mathscr{A}が存在して$ F\cong H_Aが成り立つことをいう。この対象$ Aと同型射$ \alpha:F\tilde{\to} H_Aの組$ (A, \alpha)を関手$ Fの表現という。
※$ \mathscr{A}^{\mathrm{op}}を$ \mathscr{A}に置き換えた双対バージョンの定義も存在する。(米田埋め込みも双対バージョンのものにする必要アリ)
普遍性
対象$ A\in\mathscr{A}の普遍性とは、$ Aによる表現可能関手$ F:\mathscr{A}\to\mathbf{Set}と普遍要素$ u\in F(A)の組である。ここで普遍要素とは米田の補題における自然同型$ \lbrack \mathscr{A}^{\mathrm{op}}, \mathbf{Set}\rbrack(H_A, F) \cong F(A)によって、同型$ H_A\cong Fを誘導する要素である。
極限と余極限
錘
$ D:\mathbf{I}\to\mathscr{A}を図式とする。$ A\in\mathscr{A}を対象とし、全てを$ Aに送る関手$ A:\mathbf{I}\to\mathscr{A}と同一視する。このとき自然変換$ \gamma:A\to Dを$ Aを頂点とする$ D上の錘という。自然変換の各成分$ (\gamma_I:A\to D(I))_{I\in \mathbf{I}}は錘の足という。
逆に自然変換$ \sigma:D\to Aを$ Aを頂点とする$ D上の余錘という。
https://gyazo.com/9143306aa6ee4136d9a5b9d441981e2b
$ \gammaの自然性より$ \mathbf{I}における各射$ u:J\to Kに対して上の図式は可換となる。
極限
任意の図式$ D:\mathbf{I}\to\mathscr{A}に対して$ \mathrm{Cone}(A, D)の$ Aを頂点とする$ D上の錘の集まりとする。これにより関手
$ \mathrm{Cone}(-, D):\mathscr{A}^{\mathrm{op}}\to \mathbf{Set}
が定まる。このとき図式$ Dの極限とは関手$ \mathrm{Cone}(-, D)の表現である。
米田の補題から、極限は自然同型
$ \mathscr{A}\left(-, \lim_{\leftarrow\mathbf{I}}\right) \cong \mathrm{Cone}(-, D)
を定める対象$ \lim_{\leftarrow \mathbf{I}} D\in\mathscr{A}と極限錘と呼ばれる普遍錘$ \gamma:\lim_{\leftarrow\mathbf{I}}D\to Dからなる。
余錘に対しても同様に余極限の概念が定まる。
https://gyazo.com/ab7598f7f2318f09a30e430bf2f775c7
$ \left(\lim_{\leftarrow \mathbf{I}}D, \gamma\right)が表現であるということは、これが前層$ \mathrm{Cone}(-, D)に対する普遍要素$ \left(\lim_{\leftarrow\mathbf{I}}D, h\right)が存在するということであり、これは上の図式を可換にする射$ h:A\to \lim Dが唯一つ存在することを意味する。この錘の頂点$ Aから$ \lim Dへの可換にするような射が唯一つ存在するという条件を普遍性と呼ぶ。
極限は同型を除いて一意
2つの極限錘$ \gamma:L\to D,\ \gamma':L'\to Dがあったとする。このとき、それぞれの極限錘の足と可換になるような唯一の同型$ \gamma\cong \gamma'が存在する。
(証明)
$ \gamma, \gamma'にそれぞれ対応する普遍要素$ (L, f), (L', g)が存在する。これにより下の二つの図式は可換である。(可換性ok)
https://gyazo.com/11b08b6ed5d2d1e759ce9bd9d9112472
また、下の2つの図式は可換であるため、$ (L', 1_{L'})の普遍性から$ f\circ g = 1_{L'}が分かる。同様に$ g\circ f=1_Lであることも$ (L, 1_L)の普遍性から分かる。よって$ f, gは互いに逆の同型射であり、普遍性からこれらはそれぞれ唯一である。
https://gyazo.com/7d0ed70b37f599770151266d3fc5162f$ \square
上の命題により、各極限に専用の記号を与えることに整合性が出る。
極限に記号を与える場合は錘の足を無視して対象にのみ記号を与えることが多い。
終対象・積・イコライザ・引き戻し
$ \mathbf{I}が空圏のとき、それに付随する図式$ D:\mathbf{I}\to\mathscr{A}の極限$ \lim Dを終対象と言う。
$ \mathbf{I}が離散圏のとき、それに付随する図式$ D:\mathbf I\to\mathscr{A}の極限$ \lim Dを積といい、$ \prod_{I\in\mathbf I}D(I)で表す。$ \mathbf{I} = \{X, Y\}のときは$ X\times Yと表すこともある。
例)・ $ \mathbf{Set}, \mathbf{Grp}などにおいては直積
・$ \mathbf{Top}においては積空間
・$ \mathbf{Vect}_kにおいては直和
$ \mathbf{I}の対象が一つしかない場合は$ \prod D(I) = D(I)である。
$ \mathbf{I}=\{I\rightrightarrows J\}(恒等射は省略)のとき、それに付随する図式$ D:\mathbf{I}\to Dの極限$ \lim Dをイコライザという。
例)・$ \mathbf{Set}などの大抵の場合において、次のような図式に対するイコライザは$ E = \{x\in X\mid s(x)=t(x)\}である($ Eから$ Xへの射は包含写像)。
https://gyazo.com/f093780d4a9dd4eee297c1a26e6a0b99
・$ f:G\to Hを群準同型、$ e:G\to Hを全て$ Hの単位元$ eに送る群準同型とする。このとき$ f, e:G\rightrightarrows Hのイコライザは$ \ker fである(上の例の特殊例)。
$ \mathbf{I} = \{I\to K \leftarrow J\}(恒等射は省略)のとき、それに付随する図式$ D:\mathbf{I}\to Dの極限$ \lim Dを引き戻しという。$ Aが引き戻しということは次のような図式が可換であって、さらに普遍性を持つことを言う。
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例)・上の図式が$ \mathbf{Set}における物だった場合、$ A=\{(x, y)\in X\times Y\mid f(x)=g(y)\}であり、$ q(x, y) = x,\ p(x, y) = yである。
・特に$ Y_1, Y_2\sub X、$ f:Y_1\to X, g:Y2\to Xが共に包含写像のとき、引き戻しは共通部分$ Y_1\cap Y_2である。
任意の極限は積とイコライザで記述できる
圏$ \mathscr{A}が$ \mathbf{I}型の極限を持つとは、任意の$ \mathbf{I}型の図式$ D:\mathbf{I}\to\mathscr{A}に対する極限$ \lim_{\leftarrow \mathbf{I}}Dが存在することを言う。
また、極限が有限であるとは図式の型$ \mathbf{I}が有限圏であることを言う。
$ \mathscr{A}を任意の圏とする。このとき次が成り立つ。
1. $ \mathscr{A}が任意の積とイコライザを持つならば、$ \mathscr{A}は全ての極限を持つ
2. $ \mathscr{A}が終対象、二項積、イコライザを持つならば$ \mathscr{A}は全ての有限極限を持つ。
(証明)
(1. )$ \mathscr Aを任意の積とイコライザを持つ圏とする。$ D:\mathbf{I}\to \mathscr Aを$ \mathscr Aにおける図式とする。ここで2つの射
$ s, t:\prod_{I\in\mathbf I}D(I) \rightrightarrows \prod_{J\xrightarrow{u} K \text{ in } \mathbf I} D(K)
を与えられた$ u:J\to Kに対し$ sの$ u成分を合成$ Du\circ pr_J:\prod_{I\in\mathbf{I}} D(I)\to D(J)\to D(K)、$ tの$ u成分を射影$ pr_K:\prod_{I\in\mathbf I}D(I)\to D(K)で定める。
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($ u成分がウンヌンカンヌンというのを定めることで普遍射$ \scriptstyle \prod D(I)\to \prod(DK)が定まることを表した図)
$ p:L\to\prod_{I\in\mathbf I}D(I)を$ s, tに対するイコライザとし、$ pの$ I成分を$ p_Iとおく。このとき$ \left( L\xrightarrow{p_I} D(I)\right)は$ D上の極限錘であることを示す。
錘であること
まず、$ p_I = pr_I\circ pである。よって、$ Lが錘の頂点であること、すなわち$ p_K = Du\circ p_Jであることと$ Du\circ pr_J\circ p = pr_K\circ pであることは同値である。今、$ Du\circ pr_J = s_u,\ pr_K = t_uであるから、示したい等式は$ p\circ s_u = p \circ t_uとなり、これは$ Lがイコライザであることから満たされる。
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普遍性
$ \left(A \xrightarrow{f_I} D(I)\right)_{I\in\mathbf{I}}を$ D上の錘とする。今$ \prod_{I\in\mathbf{I}}D(I)は積だから、その普遍射$ A\xrightarrow{f}\prod_{I\in\mathbf{I}}D(I)が存在する。
($ fの$ I成分を$ f_I = p_I\circ fとおく。)
このとき、$ s\circ f = t\circ fである。なぜなら、$ (s\circ f)_u = Du\circ pr_J\circ f = Du\circ f_J、$ (t\circ f)_u = pr_K\circ f = f_Kであり、$ \left(A \xrightarrow{f_I} D(I)\right)_{I\in\mathbf{I}}は錘だから$ Du\circ f_J = f_Kである。よって$ s\circ f = t \circ f。
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よってイコライザ$ Lの普遍性から普遍射$ h:A\to Lが一意的に存在して$ f = p\circ hを満たす。今、$ f_I = pr_I\circ f = pr_I\circ p\circ h = p_I \circ hとなるから$ \left( L\xrightarrow{p_I} D(I)\right)は普遍性を持つ。
https://gyazo.com/d1dc50c3c0ebc95884a6c8620ef35df1
よって、$ \left( L\xrightarrow{p_I} D(I)\right)は$ Dの極限。
(2. )$ \mathscr{A}を終対象、2項積、イコライザを持つ圏とする。有限図式$ D:\mathbf{I}\to\mathscr{A}に対して(1. )における2つの射
$ s, t:\prod_{I\in\mathbf{I}} D(I) \rightrightarrows \prod_{J\xrightarrow{u}K\text{ in }\mathbf I}D(K)
を作れればよい。よって、任意の有限積が存在することを示せば十分である。$ \mathbf{J}を離散圏とし、$ \mathbf{J}の対象の数に関する帰納法で示す。対象の数が0個、1個、2個のときに極限が存在することは明らかである。$ \mathbf{J}の対象の数は3個以上とし、それより少ない数の積は存在していると仮定する(帰納法の仮定)。
積の構成
$ X\in\mathbf Jとし、$ \mathbf J^- = \mathbf{J}\setminus\{X\}とおく。このとき、帰納法の仮定と2項積の存在から$ \prod_{J\in \mathbf J^-}D(J)および$ P = X\times \prod_{J\in\mathbf J^-}D(J)が存在する。この状況は次のような図式を招く。
https://gyazo.com/45a72c6ee5a7ceefbe538aecdc86ac7b
(一意的な射は$ pr_{\prod D(J)}とおく。)
つまり、射の族$ pr = (P\to D(J))_{J\in\mathbf J}が定まる。
積の普遍性
今、$ f = \left(A\xrightarrow{f_J} D(J)\right)_{J\in\mathbf{J}}が与えられたとする。このとき各$ I\in\mathbf{J}^-に対して$ \prod_{J\in\mathbf J^-}D(J)の普遍性から$ f_I = pr_I\circ gとなるような射$ g:A\to\prod_{J\in\mathbf J^-}D(J)が唯一つ存在する。よって、射の組$ \prod D(J) \xleftarrow{g}A \xrightarrow{f_X} Xが存在しているから$ Pの普遍性から$ g = pr_{\prod D(J)}\circ h,\ f_X = pr_X\circ hを満たすような射$ h:A\to Pが唯一つ存在する。
https://gyazo.com/0bd5de458e32ef34bcf87a789053eae7
(普遍性の議論をまとめると上の図式が可換であるということになる。)
以上より$ P \cong \prod_{J\in\mathbf J}D(J)。$ \square
モノ射と引き戻し
$ f:X\to Yがモノ射であることと
https://gyazo.com/d70b07ec5d439274d0b4f2e72cb78a84
が引き戻しであることは同値。
(証明)
$ f:X\to Yはモノ射だと仮定する。$ Aが次の図式を可換にするとする。
https://gyazo.com/56326ba915670cab3270b99744ca6fbd
$ fはモノ射なので$ k_1 = k_2となる。以降$ k_1, k_2を$ kと置く。
$ A\to Xの射として$ kを採用すると次の図式は可換。
https://gyazo.com/bdbeaaa88d129952b6320f74884b1e08
点線の射として$ k':A\to Xが存在したとすると、$ k = 1_X\circ k' = k'より上の図式を可換にする射$ A\to Xは一意的。ゆえに
https://gyazo.com/051a7da98fb2f1915a7f84f4e0fecafe
は引き戻し。
逆に下の図式が引き戻しだと仮定する。
https://gyazo.com/051a7da98fb2f1915a7f84f4e0fecafe
任意の射の組$ k_1, k_2:A\to Xに対して$ f\circ k_1 = f\circ k_2とする。ゆえに次の図式は可換。
https://gyazo.com/e3540ac9b36b5eed0c4dc6b87621df01
引き戻しの普遍性から次の図式を可換にする射$ k:A\to Xが唯一つ存在する。
https://gyazo.com/866ee3430448825ee4847adbf5f5409a
よって可換性から$ k_1 = 1_X\circ k = k_2。よって$ fはモノ射。$ \square
極限を保存する関手
1. $ \mathbf Iを小圏とする。関手$ F:\mathscr A\to \mathscr Bが$ \mathbf I型の極限を保存するとは、全ての図式$ D:\mathbf I\to\mathscr Aとその極限錘$ \gamma:\lim_{\leftarrow \mathbf I} D\to Dに対して水平合成$ F\gamma:F(\lim_{\leftarrow \mathbf I}D) \to FDが$ \mathscr Bにおける図式$ F\circ Dの極限錘となることを言う。
2. 関手$ F:\mathscr A\to\mathscr Bが全ての小圏$ \mathbf Iに対して$ \mathbf I型の極限を保存するとき、関手$ Fは極限を保存するという。
3. $ D上の各錘$ \gamma:A\to Dに対して$ F\gammaが$ \mathscr Bにおける$ F\circ Dの極限錘ならば$ \gammaも$ \mathscr Aにおける$ Dの極限錘であるとき$ Fは極限を反映するという。
4. 関手$ F:\mathscr A\to \mathscr Bが常に$ \mathbf I型の図式$ D:\mathbf I\to\mathscr Aに対して、図式$ F\circ Dの極限錘$ \beta:B\to FDに対して$ F(A)=Bおよび$ F\alpha = \betaを満たす唯一の$ D上の錘$ \alpha:A\to Dが存在し、それが$ D上の極限錘であるとき、関手$ Fは($ \mathbf I型の)極限を創出するという。
余極限に対しても極限の保存や極限の反映を同様に定義をする。
極限の創出と保存
$ F:\mathscr A\to \mathscr Bを関手とし、$ \mathbf Iを小圏とする。
$ \mathscr Bは$ \mathbf I型の極限を持ち、$ Fは$ \mathbf I型の極限を創出すると仮定する。このとき$ \mathscr Aは$ \mathbf I型の極限を持ち、$ Fは極限を保存する。
(証明)
$ D:\mathbf I\to\mathscr Aを図式とする。仮定より極限$ \lim_{\leftarrow \mathbf I}FDが存在し、これに対し$ F\left(\lim_{\leftarrow \mathbf I}D\right) = \lim_{\leftarrow\mathbf I}FDとなる$ Dの極限$ \lim_{\leftarrow\mathbf I}Dが存在する。よって$ \mathscr Aは$ \mathbf I型の極限を持ち、$ Fは$ \mathbf I型の極限を保存する。