超球帯とか超球冠とかもろもろ
名称・記号について
名称の多くは私案。ただし、「超」を抜いたものはどれも3次元空間内の図形をさす既存の語。
英語も多くは私案。hyper を抜いたものは既存の語。
球台と球帯、球欠と球冠は区別しないこともある。(それぞれ後者に両方の意味をもたせる流儀)
以下の記述では共通してもととなる超球の座標を原点中心に固定しておく。半径$ R>0の……
超球体$ B_4(R): x^2+y^2+z^2+w^2 \le R^2
超球面$ S_3(R): x^2+y^2+z^2+w^2 = R^2
また、2つの実数$ a, b ~(-1 \le a < b \le 1)を用意する。
超球台
読み:ちょうきゅうだい
英語:hyperspherical segment
$ B_4(R)のうち、$ aR \le w \le bRを満たす(すなわち2つの超平面に挟まれた)点からなる領域を超球台と呼ぼう。
これは4次元体積をもつ。
適当な球柱か球錐台の“側面”を少しふくらませたような形。 表面は超球帯と高々2つの球体。
超球欠
読み:ちょうきゅうけつ
英語:(hyperspherical cap ?) ※英語で球冠と球欠を呼び分ける語を未見
超球台の定義においてとくに$ b=1であるものを超球欠と呼ぼう(でも、あまり呼びたくない)。
2次元弓形の4次元版。
表面は超球冠と高々1つの球体。
超球帯
読み:ちょうきゅうたい
英語:hyperspherical zone
$ S_3(R)のうち、$ aR \le w \le bRを満たす(すなわち2つの超平面に挟まれた)点からなる領域を超球帯と呼ぼう。
これは(曲がった)3次元体積をもつ。
超球台の“側面”。
超球冠
読み:ちょうきゅうかん
英語:hyperspherical cap
超球帯の定義においてとくに$ b=1であるものを超球冠と呼ぼう。
超球欠の“側面”。
超球面幾何学における測地的な“球体”。
超球扇(形)、超球分
読み:ちょうきゅうせん(けい)、ちょうきゅうぶん
英語:hyperspherical sector
超球冠の各点ともとの超球の中心を結ぶ線分の和集合としてできる領域を超球扇、超球扇形または超球分と呼ぼう。これは4次元体積をもつ。
超球欠に適当な球錐を足す(a>0)か削る(a<0)かしたものともいえる。 2次元扇形(おうぎがた)の4次元版。
以上の求積
これらの4次元体積または体積を求めよう。ここで HV は hypervolume(超体積)の意で用いた。
求めやすい順序がある。
超球台(および超球欠)の4次元体積は
code:latex
\begin{align*}
HV_{\textrm{台}} &= \int_a^b \frac{4}{3} \pi \left( 1-t^2 \right)^{3/2} dt \cdot R^4 \\
&= \frac{1}{2} \pi \left[
\frac{2}{3} t \left( 1-t^2 \right)^{3/2}
+ t \left( 1-t^2 \right)^{1/2}
+ \arcsin t
\right]_a^b \cdot R^4
\end{align*}
である。(積分のヒント:u=arcsin t と置換して部分積分せよ)
超球欠に球錐を加減して、超球扇の4次元体積が得られる。(次の式では、高さを表す因子 a の正負で加減が表せていることに注意)
code:latex
\begin{align*}
HV_{\textrm{扇}} &= HV_{\textrm{台}} \Big|_{b=1} + \frac{1}{4} a \cdot \frac{4}{3} \pi \left( 1-a^2 \right)^{3/2} R^4 \\
&= \frac{1}{2} \pi \left[
t \left( 1-t^2 \right)^{1/2}
+ \arcsin t
\right]_a^1 \cdot R^4
\end{align*}
超球扇の4次元体積を半径で微分すると超球冠の(曲がった)体積が得られる。超球帯の体積はすぐに従う。
code:latex
\begin{align*}
V_{\textrm{冠}} &= \frac{d}{dR} HV_{sec} \\
\end{align*}
これで紹介した5つの図形はすべて求積できた。
特殊な場合として、超球の4次元体積および3次元表面積はそれぞれ
code:latex
\begin{align*}
HV(B_4) &= HV_{\textrm{台}} \Big|_{a=-1,~ b=1} = HV_{\textrm{扇}} \Big|_{a=-1} = \frac{1}{2} \pi \left \arcsin t \right_{-1}^1 \cdot R^4 = \frac{1}{2}\pi^2 R^4, \\ V(S_3) &= V_{\textrm{冠}} \Big|_{a=-1} = V_{\textrm{帯}} \Big|_{a=-1,~ b=1} = 2 \pi \left \arcsin t \right_{-1}^1 \cdot R^3 = 2\pi^2 R^3 \\ \end{align*}
と求められる。
おまけで超球帯の体積の高さあたりの変化率を見てみよう。
code:latex
\begin{align*}
&\phantom{=} \frac{d}{d(tR)} \left( V_{\textrm{帯}} \Big|_{a=-1,~ b=t} \right) \\
&= \frac{dt}{d(tR)} \frac{d}{dt} \left( V_{\textrm{帯}} \Big|_{a=-1,~ b=t} \right) \\
&= \frac{1}{R} \cdot \frac{d}{dt} 2 \pi \left( t \left( 1-t^2 \right)^{1/2} + \arcsin t \right) \cdot R^3 \\
&= 4 \pi \left( 1-t^2 \right)^{1/2} \cdot R^2
\end{align*}
球帯ではこれが t に依存しない値 2πR だったおかげで正積円筒図法が成り立った(cf. アルキメデス・ランベルトの円柱投影定理)が、超球帯では t に依存している。正積円筒図法の単純な高次元化はできなさそうだ。
文献
矢野健太郎, ほか: 『数学小辞典』第2版, 共立出版(2010)
球台、球帯、球欠、球冠、球扇形
H. Gieck, 太田博(訳): 『工学公式ポケットブック』, 共立出版(訳書1987)
球帯、球冠、球分。ただし球帯や球冠は体積をもつ立体として定義。
4次元は載っていません(あたりめーだ)
前原濶, 桑田孝泰: 『知っておきたい幾何の定理』, 共立出版(2011)
アルキメデス・ランバートの円柱投影定理