いったい進歩とは発展とは何であろうか
民俗学者の宮本常一は、『民俗学の旅』で次のように述べている。
この言葉は自分の中に常にあり、物事を見極める時に常に考えている。
(中略)
いったい進歩というのは何であろうか、発展というのは何であろうかということであった。
すべてが進歩しているのであろうか。
停滞し、退歩し、同時に失われてゆきつつあるものも多いのではないかと思う。
失われるものがすべて不要であり、時代遅れのものであったのだろうか。
進歩に対する迷信が、退歩しつつあるものをも進歩と誤解し、
時にはそれが人間だけでなく生きとし生けるものを
絶滅にさえ向かわしめつつあるのではないかと思うことがある。
進歩の影に退歩しつつあるものをも見定めてゆくことこそ、
今われわれに課せられているもっとも重要な課題ではないかと思う。
(P.234)