フィレンツェ
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教養がなさすぎてこんなに面白い街であることを知らなかったwtkgshn.icon*3
ローマから電車で1時間半
イタリアのフィレンツェに行ったら是非とも食べてみたい料理がある。フィレンツェ風ビフテキ(ビステッカ・ア・ラ・フィオレンチーナ)というやつだ。フィレンツェの町のレストランのメニューにはたいがい載っているだろう。店先に掲げたメニューに BISTECCA ALLA FIORENTINA とあって、そのあとにたとえば ETTO 800 LIRE などと値段が書いてある。これは一〇〇グラム八〇〇リラという意味で、そのすぐ横に〝一人前三〇〇グラム以上に限る〟と但し書きがついているのがふつうである。つまり一人前三〇〇グラム以上、あとは一〇〇グラム単位でいくらでも大きいやつを焼いてやろう、というわけだ。 大きく切った牛肉に塩をして、よくおこった炭火の上にかざして焼く。ただそれだけのことだ。 焼き上がった牛肉は、強い炎に焙られて表面のところどころが炭の香りを残して焦げ、中にはおいしい肉汁をたっぷりと含んでいる。それをポンと皿にのせ、レモン一個を四つ切りにしたものを添えて客のテーブルに運ぶ。客は焼きたての肉にレモン汁をしぼりかけて食べる。
玉村豊男. 料理の四面体 (中公文庫) (p.34). Chuokoron-shinsha,Inc.. Kindle 版.