「非営利のインフラ組織は公道を整備するべき」という仮説
引用箇所は、「なぜこのプロジェクト(リモートワークを円滑化するツール)を開発しているのか」(開発理念)
日常業務に必須となりつつあるインフラであるリモートアクセスシステム、テレワークシステムのアプリケーションの分野には、これまで、最終保障の仕組みがまったくありませんでした。つまり、この基礎的通信アプリケーションの分野は、他のインフラ分野にあるようなセーフティネットがありませんでした。
理想的には、すべての ICT 技術のユーザーの方々は、十分な予算を持ち、各種の市場サービスの中から、高性能・高機能・高サポート体制のものを選択して導入することが望ましいといえます。この場合、最終保障は不要です。しかし、理想状態を実現するためには、コストも時間もかかり、一部のユーザーにとっては今すぐの実現が困難です。
本来なら(資本主義)市場にある製品を買うべき
しかし、実際のところは不可能
市場の商用製品は、すべて営利目的で、当然、自由な相対取引です。販売側は、条件を自由に設定したり、変更したりできます。危機に際して、納期が短くできる商品に、高い値段を付けて売ることもできます。買い手がお金をもっていなければ、売り手は、提供を断わることもできます。
「それではいけない」と
すなわち、すべての市販製品の条件が適合しなかったとか、納期が間に合わないといったやむを得ない状態でも、最終手段として頼ることができ、利用できる公的なシステムが、少なくとも、社会に 1 つは存在するべきです。
我々は、その少なくとも 1 つの提供者であると考えます。「最終的には、あのおかしな IPA の周辺にいる技術集団が作っているシステムに頼ることができる」という安心感を、社会に提供し続けることが重要であると考えます。
公道を整備する
サイバー空間上の大地がインターネットであると比喩すると、我々の役割というものは、その大地の上で、無償で、誰でも、誰の承諾もなく、大手を振っていつでも通行できる権利が保障された高速道路 (フリーウェイ) のようなものを提供することです。
https://gyazo.com/79d70691620f2495b9e1162e39e7cd99
無償・無保証なインフラアプリケーション ICT 技術の普及は、国内の ICT 市場全体と市場関係者全員に利益をもたらす
https://gyazo.com/3c681d7a9972953394fe76d798a4da25
市場のすべてのベンダーの製品企画者や開発者たちは、その顧客からの期待に応えるために、自社の製品・サービスの機能・性能・品質を、顧客が期待している最低レベル以上の水準に維持しようという、自主的な努力を継続的に行なう自然なモチベーションが発生することになります。この努力は、比較対象とされた最低レベルの無償・無保証のシステムがなければ、なかなか発生しません。
この力強いポジティブな作用により、市場におけるすべての商用システムが、向上のための足並みを揃えた努力を開始します。その結果、当該領域における製品やサービスは、次第に、極めて良いものになっていきます。
無償・無保証で公開される ICT 技術のレベルがどんどん上がると、有償の製品・サービスを供給するベンダの開発費が高騰し、厳しくなるという懸念はないのでしょうか。幸運なことに、オープンソースの仕組み上、そのおそれはありません。
我々は、国費を (たとえ一部でも) 投入して開発した ICT 技術は、オープンソース化され、すべての方々がこれを自由に改造したり、派生させて任意の製品を作ったりすることができるべきであると考えています。誰でもプログラムをいじれることが、パーソナルコンピュータ (PC) の真の存在意義です。誰でもプログラムを書き、修正し、コンパイルして、新しい作品を作ることができるのです。
「シン・テレワークシステム」や「SoftEther VPN」は、すでにオープンソースか、またはオープンソース化を近く予定している技術です (シン・テレワークシステムは Apache ライセンスでソースコードの公開を予定しています。SoftEther VPN は、すでにオープンソースで、全世界で 500 万人のユーザーを有しています。)。
したがって、市場のすべてのベンダは、これらのオープンソース化されているソフトウェアやシステムをもとに、少なくとも、新たな開発コストをかけることなく、「これら無償のものと全く同じレベル」の製品・サービスを提供することができるようになります。これは、単に技術的だけでなく、費用的、法的にも容易に可能になります。これが Apache や BSD などのオープンソースライセンスの素晴らしい点です。
これらのオープンソースのコードは、そのまま利用することもできますし、既存の他の技術に基づいた製品・サービスに取り込んでいくこともできます。単にコピーして利用するだけではなく、色々な方法で工夫して二次利用することが、イノベーションを誘発します。新しい顧客満足度を高める方法が、多数の事業者によって、分散的に発明されます。
さらには、新規参入者も増えます。現在、一から VPN やテレワークシステムの技術などを構築することは、極めて困難です。しかし、今や、どなたでも、オープンソース化されたコードを利用できるようになり、新たに事業者として参入することもできるのです。
このような形で、次第に時間が経つにつれ、最大化された市場で最大限の多様性が実現され、市場のすべての事業者とすべてのユーザー (顧客) が、利益を受けることになります。
非営利のインフラ組織は公道を整備するべき
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政府がDXした際にこれらは、光ファイバー、生体認証(ID, 銀行)、電子決済。そして最後に単位系API(規格)。