ERC725
public.icon
現在、あらゆるプレイヤー(金融機関を始めとする、個人情報を必要とするサービス・プロバイダー全般)がそれぞれで断片的な個人情報を取得し、ユーザーの本人確認を行っている。規格を導入することにより、あらゆるプレイヤーが自動チェックを行うことができるため、権利の発行者を信用する限り、詳細な個人情報を保持しておく必要がなくなる。現在、ユーザーの個人情報を過剰に取得してしまっている状況にあるのは、適切なシステムがないからだ。
先行する金融機関の取り組み
金融機関は詳細かつセンシティブな情報を大量に保持し、権威ある機関だと広く一般に認知されている。これは裏を返せば、提供するサービスの性質上、入念なKYCが求められるということだ。金融機関は取引主体を一意に識別できる取引主体識別子 (LEI) というコードを使って取引を行っているが、2018年1月、EUにおいて金融サービスに対する規制が厳格化され、取引を行うすべての法人やファンドにLEIを取得することが義務付けられた。しかし、UBSを中心とする一部の大手金融機関は、各金融機関がLEIの確認を個別に行うとなると非効率的になるという課題感から、それぞれが持つデータを相互利用できるようなプロジェクトを始めた。 そのプロジェクトはMADREC (Massive Autonomous Distributed Reconciliation) と呼ばれるもので、MicrosoftのクラウドであるAzure上で各金融機関が持つLEIの確認結果をEthereumブロックチェーンに書き込む形で融通し合うというものだ。そのため、LEI自体はそれを保持している金融機関の外には出て行かず、金融機関の間で共有されるわけではない。Ethereumブロックチェーンに記録される参照データもハッシュ化され、匿名性やプライバシーは担保される。