立花隆の執筆スタイル
立花隆は、執筆を、予めしっかりとした構想(アウトライン)を作ることなしに行うという。そのような書き方を閃き型と呼び、事前にアウトラインを立てるやり方をコンテ型と呼び、自身の執筆スタイルを前者に位置づける。 とは言え、徒手空拳で臨むのではなく、いくつかの準備は行う。
「閃きメモ」と「材料メモ」
さて、とはいうものの、まるで何もなしで書くというのは、私の場合、普通ではない。普通は簡単なメモを事前に作る。メモには二つの目的がある。一つは、手持ちの材料の心覚え。もう一つは、閃きの心覚えである。前者は事前に作り、後者は随時書き留める。
執筆しながら何かを閃いたが、直後に使えるわけではなくもう少し後の方だったり、あるいは使えるかどうかがよくわからないものをメモに書き留める。それが「閃きメモ」。
材料メモ
書き出す前に、もう一度集めた材料に目を通す。そのとき心覚えのメモを取る。これが「材料メモ」である。これは簡略であればあるほどよい。私は通常原稿用紙を裏にして、それ一枚にすべてがおさまるように書く。「一枚に」というのが重要である。メモに目を走らせたときに、全材料が一瞬のうちに視野に入るようにしておくということである。
ペラ一枚に全材料をメモするためには、メモの内容をギリギリまで削らなければならない。センテンスを書いてはいけない。単語かせいぜい文節どまりで書く。一語一語にできるだけ多くの情報を代表させる。そのためには、事前に材料をよく読み、頭の中に入れておくことが必要である。
執筆の前に、これとこれについて書こう(あるいは書ける)と見出したものをごく短いフレーズで書き留めておくもの。それが「材料メモ」。このセンテンスに留める点、多数の情報を代表させる点は、KJ法における「見出し作り」に呼応する。 材料が多いときは、いきなりペラ一枚にまとめることはせず、作業を二段階に分けて、最初に手持ちの材料をまとめたメモを作り、その後そうして作成したメモのメモを作る。後者をなるべくペラ一枚程度にまとめるようにする。
材料メモは自分が手持ちしている材料のカタログのようなものと考えてよい。
こうしたメモができたら、それを前において、とにかく書き出してみる。
この「前におく」は、デジタルツールだけで完結するとき、どのような扱いになるだろうか。
その他
上記のメモ以外に、インデックス、年表、チャートが執筆の補助装置として『「知」のソフトウェア』では紹介されている。チャートは、KJ法A型(図解)のようなものと理解しておけばよい。