Seedの系譜
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Besiegeを初めて約1年が経過した2022年2月、技術整理を兼ねて80級プロペラ戦闘機を作成。
ウイングパネルを主翼に用いたシンプルかつ古典的な設計と、各種接続学を詰め込んだ練習機という位置付けから、
この機体を"Seed"(種)と名付けて、ここから更に200級レギュに適応させる魔改造を施す事にしました。
本記事では、Seedを起点に開発された店長製の牽引機たちを紹介していきます。
TH14 -Bless-
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魔改造機第1号。プロペラ空戦レギュ適合です。
同時期に俺の方が速い事でお馴染みの不定形生物氏が作成した牽引機・elleに多大な影響を受けた機体で、
店長製のプロペラ空戦機の中で最軽量・最高の旋回性能を持つガチ機となりました。
まず特徴的なのは、67.65という超軽量の本体。
下限ギリギリの150パーツに収め、直付けのコグ圧縮エンジンの採用や、ウイングパネルによる主翼面積の確保により、
機体重量を徹底的に軽量化した事で、最大13Gの加速力と、キレのある旋回性能を実現しました。
続いて、直付けのエンジンについて。
店長はペラと動力部が分かれたブレース伝達エンジンよりも、動力部にペラが直接付いているエンジンを好みます。
理由として、伝達ブレースによる回転ロスが無い分、動力パーツを少なくする事ができ、その結果軽量化と自壊リスクの低減につながる為です。
そこで採用したのは、elleのエンジンを参考に設計したコグ3・ホイール1・丸鋸2の880rpm直列双発エンジンです。
このエンジン最大の特徴は、2基のエンジンがスペック上では回転速度が異なるという点。
内側はコグ2・ホイール・丸鋸で1,080rpm、
外側はコグ1・丸鋸で680rpmというスペックになっています。
しかし、エンジン全開時はブレースで連結した無動力基部が回転して出力差を吸収し、結果的に前後エンジンの出力を880rpmに平均化する構造になっています。
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このように前後で回転速度が異なるのは、2基のペラを極力近づける構造にする為です。
前後が同じ回転数=同じだけ動力パーツを使うとなると、内側のペラがエンジン中央付近に来てしまい、
設計の自由度低下・空力非対称性の増加に加え、二重反転やブレース伝達直列双発と比較して外観を損ねてしまいます。
一方この構造であれば、回転速度が遅い外側のエンジンは動力パーツが少ない為、内側と比べて薄型に組み立てる事ができ、
結果として二重反転に近いような見た目となり、空力的にも外観的にも優れた形にする事ができます。
ここまでして二重反転を使わずに直列双発を採用するのは、伝達ブレースが担う役割が二重反転とはそもそも違う為です。
二重反転は「動力の伝達」にブレースを使う為、回転抵抗によるロスが必ず発生し、前後で回転速度が変わってしまいます。
それを補正する為に内側にもブレース錘を付けたりすると、今度はそのロスを減らす為に動力パーツを増やす必要性が出てくるため、
結果として私がブレース伝達を敬遠するのと同じ理由で、信頼性の低下に繋がりかねません。
一方で直列双発であれば、「無動力基部の連結」にブレースを用いているだけなので回転抵抗が足枷にならず、
本機のように連結基部が回転する前提の構造であったとしても、その想定回転速度も遅いためエンジン性能にほとんど影響を及ぼしません。
機体本体に高速回転するパーツが隣接しない為、自壊リスクがさらに低いのもポイントです。
(エンジンだけでクソ長くなってしまった)
続いての特徴は胴体下にガン積みした長ペラ。これもelleから輸入した構造です。
店長が好きな直付けエンジンを牽引機に採用する場合、機首に空力パーツを仕込めないというデメリットがあります。
ブレース伝達エンジンであれば機体先端の丸太などに縦ペラを仕込んでヨー性能を容易に強化できますが、直付けではそのスペースがありません。
そこで本機では、胴体下に計8枚の長ペラをみっちり詰め込み、機体後方の縦ペラやラダーを削る事で空力中心を無理やり前寄りにしています。
この構造のおかげで、機首に縦ペラが無いにも関わらず、非常に高いヨー性能を獲得できました。
さらに牽引機特有の、尾翼が高い位置にあるせいでヨー旋回時に同方向にロールしがちな癖も、下側にだけ長ペラを積む事で解消できるため、
旋回半径だけでなくロール癖もほとんどない優れたヨー旋回が可能で、結果として操作性の向上に大きく貢献しています。
これらの構造を、拡張性に優れたSeedをベースとして詰め込んだ最初の機体がTH14 -Bless-となります。
軽量・高速で小回りの効く機体に仕上がりましたが、元が80級なので機体剛性が性能にやや追いついていないという側面があり、
速度計により最高速度を1,300kph程度に制限しないと空中分解したりと、まだSeed派生機としての本領発揮とは行きませんでした。
そのため、次の後継機では機体剛性の見直しに着手する予定……だったのですが、
ちょうどこのタイミングで新レギュのシン・リミテッド空戦が提唱され、ペラ空機である本機は無事にレギュ外となり、
新規格に適合させる為の改装を施す方向へ転換する事となりました。
Bless(ブレス):「祝福」の意にして、「芽吹き」というニュアンスもあるらしい。Seed(種)が発芽した姿と、生命の息吹(Breath)という発音に掛けています。
TL01 -Celles-
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TH14をベースにシンリミ仕様に改装し、複数の実戦投入から得たデータを基に各部を微調整した新型機。
エンジン構造はペラ設定を新規定に変えた以外はTH14と同じで、最高速度は950kph程度。
通常のプロペラエンジンを搭載したシンリミ機としては当時最速クラスの機体となりました。
改装点は主に「エルロンのペラ増強」「謎加速ペラ増強」の2点。
エンジン出力が新規定により大きく制限され、それによって低下した最高速度を確保する為に謎加速の搭載が重要になりました。
そこで、主翼端の空いたスペースに謎加速ペラを追加し、それによって下がったロール性能を確保するためにエルロンに長ペラを追加する事で、
エルロンが片側ペラ6枚となり、ロール性能低下を軽減しつつロール安定の向上も実現できました。
これらの改装によりパーツ数が増え、下限の150パーツを確保する為に搭載していた装飾パーツを削る事が出来るようになり、
さらに元々不安のあった機体剛性についても、速度低下により逆に余裕が生まれた事で、ブレースも一部削っても問題ない事が判明。
パーツ数はTH14から変わらず150となり、重量も66.2と更に軽量化する事に成功しました。
また、エンジン出力が全開モードでない際に、ピッチ・ヨー旋回入力に反応してエンジンを一時的に全開にするロジックを新搭載しました。
私のエンジンは全開・丸鋸アイドリング・逆回転(停止)の3段階で回るようになっており、一撃離脱は全開、旋回戦はアイドリングで主に行います。
このアイドリングモード時、失速により旋回性能が低下するのを回避する為、ピッチ・ヨーのキーに反応してエンジンを強制的に全開にするようにしました。
これにより、期待速度を旋回戦がしやすい低速に保ちつつ、相手より素早く旋回して打ち勝てるようになるといいなと妄想しています。
さらに、エンジンの設計に起因していた「止まれない」という欠点を修正。
前後で回転速度が異なる直列双発エンジンであった事で、逆回転によりエンジンを停止しようとした際に、前側のエンジンだけ止まらないという問題が発生。
前側はコグ1・丸鋸1であるため、コグの逆回転だけでは丸鋸のパワーを抑えきれず、TH14はエンジンを停止して着陸しても止まれない機体でした。
そこで、前側のコグのみ自動ブレーキをオフにする事で、逆回転時に両方がほぼ完全に停止する様に変更し、着陸後停止も出来るようになりました。
自動ブレーキのオフは、丸鋸動力のみのアイドリング状態での飛行も多用する私にとっては、ブレーキ後に再加速できないという問題がネックになっていましたが、
本機では内側のエンジンは普通に自動ブレーキオンである為、そちらの推力によって加速する事で自然と前側のエンジンも回ってくれる他、
前述したピッチ・ヨー旋回入力時のみエンジンが自動で全開になるロジックを新搭載した事で、低速戦闘時でも即座に加速キーが入力される為、
自動ブレーキオフ時の問題の解決した上で、エンジン停止も可能となった訳です。
※ちなみにこれらのエンジン停止機能に関しては、新レギュ議論中に「着陸しなければリスポできない」という規制案が出た為に搭載されたものですが、
現在のシンリミレギュではその規制は廃止されており、着陸後に必ずしも停止できる必要はなくなっています。
最後に、動翼20度制限に加えエンジンペラのピッチ角制限により、ピッチ・ヨーの空力中心が後方に移動した事で、TH14と比較して旋回性能が低下した為、
機体後方の造形用縦ペラを一部ブレードに改装し、安定性低下と引き換えに高いヨー性能を獲得しました。
一方ピッチ性能は低くなったままであり、ここをどうするかが次の後継機で改善すべき課題となりました。
しかしながら、軽量で高速というTH14の遺伝子をしっかり引き継げた事で、シンリミ初期の機体のなかでは最高クラスの性能となり、
機体交換空戦にて「使いやすい」「ラダーお化け」「オーパーツ気味な強さ」「加速・旋回・最高速すべてが高レベル」などの評価を頂き、
作者のニチャァって感じの笑みが止まらない、シンリミ世代の店長主力機と相成りました。
Celles(セレス):Bless(祝福)と同義のCelebrateという単語と、大いに参考にした不定形機・elleのスペルを混成して名付けました。
TL03 -Kollé-
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TL01の細部をさらに煮詰めた大規模改修機にして、2022/4現在における店長最新のシンリミ機です。
基本構造はTL01の時点でほぼ完成形(自画自賛)にある為、本機では課題であったピッチ性能の強化と、エンジン設計の見直しを主に行いました。
まずは正対ペラの増強。
TL01では正対ペラが36枚となっており、レギュ上あと4枚余裕があったものの詰め込む場所が無く、そのままにしていましたが、
本機では主翼付け根あたりのペラ配置を最適化し、追加で2組4枚の謎加速正対ペラを搭載し、最高速度がわずかに強化されました。
加えて、主翼付け根の被接続判定を活用し、左右で計6枚の縦置き長ペラを追加搭載。
これを45度ピッチで配置する事で、ピッチ・ヨー性能双方の強化をはかり、特にピッチ性能は前述の追加正対ペラも有効に働き、
TL01と比較して約1.4倍のピッチ性能と、約1.2倍のヨー性能を獲得できました。
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次にエンジン設計の最適化。
本機では直列双発エンジンの無動力基部を連結するブレースを、あえてこのように大きく開いた形に変更しています。
実はこのエンジン、前側の無動力コグと丸鋸をかなり埋め込む事が出来るにも関わらず、近づけすぎるとお互いの被接続判定が完全に被ってしまい、
あえて少し離した上で、無動力コグの被接続判定だけにブレースを付けなければならないという少し勿体ない構造になっていましたが、
前側の無動力コグを45度回すことで、丸鋸の被接続判定が完全に被った状態でもコグの被接続判定だけを外側に少し露出させています。
ここをブレースで掴む事で、エンジンの全長をほんの少しだけ短くする事ができました。
また、直列双発は片側のエンジンペラを喪失した際、連結ブレースが擬似的に錘となる錘式エンジンとして使えるという特性があり、
この状態になった際に錘としての効果を増す事ができるという副次的効果も得られます。
これはTAIYAさんによって撮影されたTL01の戦闘風景の中で、前側のペラが飛んで3枚羽錘式となった状態で戦う自機の様子からヒントを得た要素です。
そして最後に、TL01までエンジン出力モードによって微妙に変わっていた機首の上げ下げ傾向を補正するため、
エンジン自体を少し下側に移動し、重心と出力中心を合わせた事で、エンジン出力に関わらず安定した直進性能を確保しました。
一方で、エンジンの位置を下げた事で離陸時にエンジンペラが地面を擦る事故が発生するようになってしまった為、
店長機伝統のランディングギア自動格納機構に使用している地面検知センサーを、エンジン出力調節ロジックと連携させる機能を新搭載。
エンジン全開モード時でも、センサーが地面を検知している間はアイドリング出力に抑えることで回転径を縮小して事故を防ぎ、
離陸後にギアの自動格納と合わせてエンジンを全開にするようにしました。
これらの改装を行い、ペラ枚数が増えた事と速度・旋回性能共に向上した事により、再び機体剛性の確保が必要になった為、
ブレースの最適な配置を見直して調整を行い、最高速度からのバレルロールでも自壊しない機体強度を確保しています。
しかし、TL01の時と違い追加したプロペラのパーツ分、他のパーツを下限まで削れる余裕がなく、重量が69に微増しています。
謎加速が増えた分、加速性能は最初期がごく僅かに低下したのみで、実用速度域では向上している為、重量増込みでもTL01のほぼ完全上位互換機にはなっていますが、
次の後継機では重量をどのように減らすかという点が課題になると思われます。
Kollé(コレー):ギリシャ神話の女神ペルセポネの別称。冥界に入る前の地上での呼称"コレー"(ギリシャ語で少女の意)より。豊穣神セレス(デメテル)の娘にあたる。
TL01 -Celles-(セレス)の後継機であるためこの名前にしました。