断面回転半径
梁断面の物理量において標準偏差に相当する指標
$ k_{cyy}:=\sqrt{\frac{I_{cyy}}{A}}
$ I_{cyy}:図心まわりの断面2次moment
$ A:断面の面積
細長比を計算するときに使う
共分散に相当する一般的な言い回しはないようだtakker.icon
相乗回転半径という言い回しにしておこう
あるかどうかわからなかったのでGemini 2.5 Pro.iconに聞いてみたら見つかった
22:00:09 この後『ゼロから学ぶ土木の基本 構造力学』を探し直したら断面2次半径と名付けて使われていた
まあ断面回転半径でいいや
takker.icon
梁の断面$ Aの図心は、下向きにy軸、奥行にz軸としたとき、それぞれ次のように計算できます
$ y_c=\frac{\int_A y\mathrm dy\mathrm dz}{\int_A\mathrm dy\mathrm dz}
$ z_c=\frac{\int_A z\mathrm dy\mathrm dz}{\int_A\mathrm dy\mathrm dz}
また、図心まわりの断面二次モーメント$ I_{cyy},I_{czz}は
$ I_{cyy}=\int_A(y-y_c)^2\mathrm dy\mathrm dz
$ I_{czz}=\int_A(z-z_c)^2\mathrm dy\mathrm dz
となります。
ここで統計学の類似する概念と比較すると、
図心:平均
$ \bar{y}=\frac1N\sum_{1\le i\le N}y_i
断面二次モーメント:分散 * データ数
$ {\sigma_{yy}}^2=\frac1N\sum_{1\le i\le N}(y_i-\bar{y})^2
と対応できることがわかります。
さて、図心はそのまま平均に対応できますが、断面二次モーメントは少し違い、正確には
$ \frac{I_{cyy}}{A}=\frac{\int_A(y-y_c)^2\mathrm dy\mathrm dz}{\int_A\mathrm dy\mathrm dz}
が対応することがわかります。
このように、梁理論において分散に相当する物理量は存在するのでしょうか?
Gemini 2.5 Pro.icon
はい、存在します。ご指摘の通り、梁理論において統計学の分散に相当する物理量は断面回転半径 (radius of gyration) の2乗です。
分散に相当する物理量:断面回転半径の2乗
ご自身の考察は非常に鋭く、完全に正しいです。断面二次モーメント $I$ を断面積 $A$ で割った物理量 $\frac{I}{A}$ は、まさに統計学における分散($\sigma^2$)の連続体バージョンと言えます。
この物理量は、断面回転半径 $k$ (または $r$, $i$ とも表記されます) を用いて次のように定義されます。
$$I = A k^2$$
これを変形すると、ご提示の式そのものになります。
$$k^2 = \frac{I}{A} = \frac{\int_A (y-y_c)^2 , dA}{\int_A , dA}$$
つまり、分散に直接対応するのは断面回転半径の2乗 ($k^2$) です。そして、その平方根である断面回転半径 ($k$) は、統計学における標準偏差 ($\sigma$) に相当します。
断面回転半径とは?
断面回転半径 $k$ は、ある軸からの距離を表す幾何学的な量です。物理的には、「もし断面積 $A$ 全体をある一点に集中させるとしたら、元の断面二次モーメント $I$ と同じ値になるのは、回転軸からどれくらいの距離に置いたときか」を示す値です。
$k$ が大きい: 断面積が図心から遠くに分布している(=曲げや座屈に強い形状)。
$k$ が小さい: 断面積が図心の近くに集中している(=曲げや座屈に弱い形状)。
統計学とのアナロジー整理
table:_
統計学 (Statistics) 梁理論 (Beam Theory) 式
平均 (Mean) 図心 (Centroid) $\bar{y} \Leftrightarrow y_c$
分散 (Variance) 断面回転半径の2乗 ($k^2$) $\sigma^2 \Leftrightarrow k^2 = \frac{I}{A}$
標準偏差 (Standard Deviation) 断面回転半径 (Radius of Gyration) $\sigma \Leftrightarrow k = \sqrt{\frac{I}{A}}$
構造力学における重要性
断面回転半径は、特に柱の座屈 (buckling) を評価する上で非常に重要な役割を果たします。柱の座屈しやすさを示す指標として細長比 (slenderness ratio) $\lambda$ があり、これは以下の式で定義されます。
$$\lambda = \frac{L_k}{k}$$
ここで、$L_k$ は柱の有効座屈長、そして $k$ が断面回転半径です。この細長比が大きいほど、柱は座屈しやすくなります。このように、断面形状が座屈にどう影響するかを直接的に示すパラメータとして、断面回転半径は不可欠な存在です。
takker.icon
ありがとうございます。
ちなみに統計学では共分散$ {\sigma_{yz}}^2の概念があります。これは断面相乗momentを断面積で割ったもの$ \frac{I_{cyz}}{A}に相当しますが、これにも何らかの用語はあるでしょうか?
Gemini 2.5 Pro.icon
はい、非常に鋭いご質問です。
結論から言うと、断面二次モーメントを断面積で割ったものが「断面回転半径の2乗」という明確な用語を持つのに対し、ご指摘の断面相乗モーメントを断面積で割ったもの ($\frac{I_{cyz}}{A}$) には、広く定着した特定の用語はありません。
統計学とのアナロジーと用語の現状
おっしゃる通り、統計学とのアナロジーは完全に成り立ちます。
table:_
統計学 (Statistics) 梁理論 (Beam Theory) 用語
分散 ($\sigma_{yy}$) $\frac{I_{cyy}}{A}$ 断面回転半径の2乗 ($k_y^2$)
共分散 ($\sigma_{yz}$) $\frac{I_{cyz}}{A}$ (定着した用語なし)
この「共分散」に相当する物理量には、なぜか特定の名前が与えられていないのが現状です。教科書や文献によっては、この概念を説明するために便宜的に「相乗回転半径の2乗 ($k_{yz}^2$)」のような表現を使う例も稀にありますが、これは一般的な用語ではありません。
通常は、「単位面積あたりの断面相乗モーメント (product of inertia per unit area)」のように、そのまま文章で説明されます。
なぜ用語がないのか?(考察)
これは、構造力学における断面相乗モーメント ($I_{yz}$) の使われ方に理由があると考えられます。
1. 主軸の計算がゴール: 断面相乗モーメントが重要になるのは、主に主軸 (principal axes) を見つける場面です。主軸とは、断面相乗モーメントがゼロ ($I_{yz}=0$) になるような図心を通る直交軸のことで、この軸の周りの断面二次モーメント(主断面二次モーメント)が最大値・最小値をとります。
2. $I_{yz}$自体の値が重要: 計算過程では、$I_{yz}$ の値そのものを使い、主軸の傾き ($\theta_p$) を以下の式で求めます。
$$\tan(2\theta_p) = \frac{2I_{yz}}{I_z - I_y}$$
この計算において、$I_{yz}$ をわざわざ面積 $A$ で割る必要性が薄いため、$\frac{I_{yz}}{A}$ という物理量に独立した名前が与えられなかったと推測されます。
つまり、$\frac{I_{yy}}{A}$ (断面回転半径の2乗) が柱の座屈計算などで「細長比」という形で直接的に使われるのに対し、$\frac{I_{yz}}{A}$ はそのような形で直接使われる場面が少ないのです。
まとめ
あなたの着眼点は非常に正しく、統計学的な視点から見れば「共分散」に対応する美しい物理量です。しかし、残念ながら現在の構造力学の分野では、それに相当する一般的な用語は存在しない、というのが答えになります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/断面回転半径
radius of gyration
その他の言い回し
断面2次半径
『ゼロから学ぶ土木の基本 構造力学』
断面の回転半径
構造と連続体の力学基礎 熊でもわかる変形できる物体の力学
#2025-07-15 21:46:13