病気になるということ
病気になるということ(原題:On Being Ill)
約100年前、世界各国で大流行したというインフルエンザ。1918年から20年頃にかけては「スパニッシュ・インフルエンザ(いわゆるスペイン風邪)」と呼ばれるインフルエンザが流行り、第一次世界大戦下のヨーロッパとアメリカを中心にパンデミックを引き起こしたといわれています。
ヴァージニア・ウルフもスパニッシュ・インフルエンザに罹患したと推測されています。彼女はその前後の数年のあいだに繰り返しインフルエンザにかかりました。1925年にまたもやインフルエンザにかかった際に、個人的な病気との向き合い方や、病気のときに読むべき本などをエッセイに記し、パンデミックの記憶もまだ新しい当時の人々に提示しました。
本エッセイは、いわゆるパンデミックの惨状を伝えるような文章ではありません。しかし、ヴァージニア・ウルフが生きた20世紀前半と、2020年の現代で、時代は異なるものの「文学と疫病」という大きなテーマで考えた時、新型コロナウイルス感染症の影響下にある日本に生きるわたしたちも、ウルフが考えたことに共鳴する部分があるのではないかと考え、新訳を公開することにいたしました。
「病気になるということ」概要
まずエッセイ自体は一つの文章ですが、今回、読みやすさを考慮し、3つのセクションに分けてお送りいたします。原文にはない改行を加えていることもご承知おきください。3セクションと訳者解説の4記事を公開し、下記にリンクを記します。
セクション1では、病気(インフルエンザ)に罹ったウルフは、その時の意識を綴ったあと、文学が病気をテーマにすることがなかったとして、その理由を述べてゆきます。
セクション2では、インフルエンザ患者の心象風景を描き出し、さらにセクション3では、インフルエンザに罹った時の文学の楽しみ方を紹介しています。