夜と霧
夜と霧
「夜と霧」の著者は、強制収容所から奇跡的な生還を果たしたユダヤ人のヴィクトール・フランクルです。精神科医だったフランクルは、冷静な視点で収容所での出来事を記録するとともに、過酷な環境の中、囚人たちが何に絶望したか、何に希望を見い出したかを克明に記しました。
収容所という絶望的な環境の中で希望を失わなかった人たちの姿から、人間の“生きる意味”とは何なのかを探ります。そして苦境に陥った時の“希望”の持ち方について考えていきます。
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『夜と霧』には、池田香代子訳の「新版」(2002年刊)と霜山徳爾訳(初版1956年刊)のふたつの版があります。両方が並行して版を重ねるというたいへん異例の出版です。
新版は、この永遠の名著を21世紀の若い読者にも伝えつづけたいという願いから生まれました。フランクル自身が大幅な改訂をほどこした1977年のドイツ語版にもとづく、真新しい翻訳です。 いっぽう霜山徳爾訳は、終戦から11年めの1956年夏の初版以来、日本でながく読みつがれてきました。当時、ホロコースト(ショアー)やアウシュヴィッツのことはまだよく知られていませんでしたので、ドイツ語版にはない解説や写真資料を日本で独自に加えて編集されました。
2001年のことだったろうか。1997年に亡くなられたフランクルの要望にしたがって、写真も解説もなく、別のヴァージョンの『夜と霧』を刊行すべく、新訳者の池田香代子さんといっしょに、霜山先生宅をたずねた。「今まで本当にお世話になりました。これを機会に、将来の若い読者のことも考え、新訳を出したいと思います」。それまでの言い尽くせないほどの先生への恩義を考えると、とても無礼であることは承知していた。しばしの沈黙のあと「わかりました。そうされてください」との先生のお言葉があった。そして、冒頭に記した文章まで頂戴したのである。
結果、『夜と霧』は旧版と新版がバトンタッチするのではなく、二種類の『夜と霧』がいまでも読み継がれている。読者の好みもあるのだろうが、それだけ特権的な本だということの証かもしれない。
死と愛
『死と愛』は、大学で教える資格を得るための論文のもとになった学術書で、そのなかの「強制収容所の心理」の部分を拡大して一気に口述筆記したのが、『夜と霧』である。ヴィクトール・フランクル(1905-1997)の第二次大戦後の出発点となった重要な著書である。最初の本と二冊目の本というだけでなく、これを書いたとき、フランクル自身が「生きることと苦悩の意味を求めてもがく人」だった、という点で重要である。
『死と愛』の原著はこのあと大幅に改訂されており、最終形といえる第十一版をもとにした翻訳が『人間とは何か 実存的精神療法』という題名で2011年に出ている(山田邦男監訳、春秋社)。第十一版は、本書のもとになった第六版の1.7倍の頁数がある。読み比べてみると、かなり書き換えられていることがわかるし、フランクルの戦後の原点に近い本書をこうして読み継ぐことができる貴重さもわかる。
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悪名高いアウシュビッツに収容される過程と苛酷な環境を生き抜いた中で経験した著者の体験をつづった本であり、想像を絶する内容で胸が削られる素晴らしい本だ。
とにかく不気味というテーマだったので、本に記載されていた、極限状態における人の奇妙な状態が頭に残っており、そのエピソードを紹介した。
夜と霧(独: Nacht und Nebel, NN)は、1941年12月7日、アドルフ・ヒトラーにより発せられた命令で「ライヒおよび占領地における軍に対する犯罪の訴追のための規則」になっている。詳細は省くが、とにかく酷い、酷い命令だ。 その命令がこの本のタイトルになっている。
そしてもっとも「不気味」な事は、「夜と霧」というフレーズは、作曲家リヒャルト・ワーグナーの作品から引用されている事である。 夜と霧(よるときり、独: Nacht und Nebel, NN)は、1941年12月7日、アドルフ・ヒトラーにより発せられた命令(独: Erlass)である。命令名は「ライヒおよび占領地における軍に対する犯罪の訴追のための規則」。いわゆる総統命令の一つ。
「夜と霧」というフレーズは、ヒトラーが愛聴にしていたリヒャルト・ワーグナーの作品『ラインの黄金』の第3場「ニーベルハイム」から直接引用したものである。ここでは、隠れ蓑(頭巾)(英語版)「ターンヘルム(英語版)」を被った登場人物のアルベリヒが、„Nacht und Nebel, niemand gleich!“(「夜と霧になれ、誰の目にも映らないように!」)という呪文(独: Zauber, 英: spell)を呟く。