『詩学』は生物学者によって書かれた演劇論
『詩学』は生物学者によって書かれた演劇論
「ピュラー海峡」 CIV
全集は畏敬すべき「完全性」の体系を与えてくれる。このすばらしさは、その多くが生物学によるものだ。アリストテレスが研究し生涯を捧げた、世界中のすべてのものの中で、もっとも注意を傾けるべき価値ありとしたのは生物だった。
その他のものにも──彼の形而上学、原因に関する体系、自然哲学、化学、気象学、宇宙論、政治学、倫理学、詩学にさえ(※4)──ほとんどすべてにこの志向の痕跡が見られる。
(※4)
芸術家たちはしばしば、アリストテレスの『詩学』を読んでは落胆の表情を浮かべる。そして叫ぶ。なぜアリストテレスはわれわれに、美がどのようにして存在しているのかを教えてくれないのか? 彼は語っていない。
なぜならそれは、この本が詩人によって書かれた美学論ではなく、生物学者によって書かれた演劇論だからである
目次より「ピュラー海峡」という章への補足
彼の遺産はなぜかくも徹底的に忘れ去られたのか。一七世紀の科学革命にまでさかのぼり、アリストテレス評価の変遷とその妥当性を再考する。