「調性音楽」と「無調音楽」
「調性音楽」と「無調音楽」
2014
20世紀の初めに、調性を全く用いない「無調音楽」を発見したシェーンベルク。当初、無調音楽においては作曲のためのルールというものが存在せず、作曲家の感性のみで構築されていた、未成熟の音楽だった。 作曲家の感性のみで構築されていた、未成熟の音楽だった
そんな中、シェーンベルクは無調音楽を理論的に生み出す作曲システムを考案した。 この時代の流れについて、岡田は「ワーグナー、ドビュッシーの響きに慣れてしまった結果、音楽家たちは『もう少し大きな毒が欲しい。もっと強い禁断の実が欲しい』となった。それがエスカレートした結果、このような音楽になったのではないか。しかし、それが健全な精神でないのは確かだし、人間がそういうものを求めるようになったということは世も末だったのかな」と語ると、坂本が「第一次世界大戦の前で、不安な時代でもあったんだよね」と付け加え、時代背景とリンクした無調音楽について解説した。
ワーグナー、ドビュッシーの響きに慣れてしまった結果、音楽家たちは『もう少し大きな毒が欲しい。もっと強い禁断の実が欲しい』となった
ドビュッシー、あっち側なのか、こっち側なのか
ワーグナー、あっち側
アレックス・ロスの新しい書籍は、ワーグナー(ワグネリズム、ワーグナー主義)について Wagnerism: Art and Politics in the Shadow of Music
無調音楽の代表的なものとして、坂本がシェーンベルクの「5つのピアノ曲 作品23 第5曲」を例に挙げて説明。「12音技法」という、1オクターブの中に含まれる12の音の中で、一音一音を重複することなく使用する作曲技法を、「基本形」「逆行系」「反行系」「逆反行系」という4つの技法を使って説明した。
シェーンベルクの「5つのピアノ曲 作品23 第5曲」
この12音技法について、浅田は「12音技法って、聴いていると頭が痛くなる、難しい音楽だって門前払いされてしまうんです。でも、よく聴くと機械的でごちゃごちゃした中にも、すごく強烈な情緒が入っている。絶望であったり、その向こうにある虚無感だったり。実はたまらなくいいものなんですよ」と、12音技法から生まれる世界観について語ると、小沼が「シェーンベルクが12音を平等に考えたことと、ソビエト社会主義共和国連邦が共産主義を唱えたことがパラレルなんですよね」と、時代背景とリンクした音楽の発展について述べた。
シェーンベルクが12音を平等に考えたことと、ソビエト社会主義共和国連邦が共産主義を唱えたことがパラレル
さらに、岡田が「でも、音の世界ではその平等を実現したとたんに、カオスが生まれてくるのって、不思議であり当然のことですよね」と述べると、それに対し坂本が「中心がないわけだから当然なのかもね」と頷いた。
その平等を実現したとたんに、カオスが生まれてくるのって、不思議であり当然
中心がないわけだから