社会契約
社会契約(しゃかいけいやく、英: social contract、仏: contrat social)は、政治学や法学で、ある国家とその市民の関係についての契約を指す用語。
社会/国家に関する市民/民衆(や王家)の「黙契」や「立法・誓約」としての社会契約の思想的萌芽は、プラトンの『クリトン』や『国家』第2巻や『法律』第3巻などにすでに表現され、歴史的にはマグナ・カルタ、アーブロース宣言などに、権力の基礎が「人民の同意に基づく」という契約論的な考え方としては、16世紀のスペイン、フランス、イタリアのジェスイット派やカルバン派の神学者・法学者・政治学者の主張に発見することができる。 ジョン・ロールズは、社会契約説を、自然法、自然権という古典的概念を回避して、一般化抽象化し、国家が成立する前の仮定的な社会について、次のような思考実験を行なう。ロールズは、その社会は、合意後に成立する国家に関する情報については、その構成員全員が全て公正に「無知のヴェール」に覆われた「原初状態」にあるとした上で、その状態の下では、自由・平等で道徳的な人は、利己的で相互に無関心な性向を持つ人々であっても、合理的な判断として、人々が公正に最悪の状態に陥ることを最大限回避する条件で合意するはずであるとして構成員の合意による国家の成立を導き出し、かつ、その条件が実現している理想的な社会を「秩序ある社会」とした上で、その条件を可能ならしめる原理を公正としての正義の原理として、格差原理、マキシミン原理という正義に関する五つの価値原理を導き出した。