正義の二原理
第一部 第二章 「正義の諸原理」
11 正義の二原理
本節では、原初状態で合意されると思われる〈正義の二原理〉を、暫定的なかたちで提示するとしよう。
二原理の最初の定式化はあくまで試行的になされる。本書の論述の進展に伴っていくつかの定式化が検討され、かなり後になって〔第46節で〕与えられる最終的な言明へと一歩ずつ近づいていく。
第一原理
各人は、平等な基本的諸自由の最も広範な〔=手広い生活領域をカバーでき、種類も豊富な〕制度枠組みに対する対等な権利を保持するべきである。ただし最も広範な枠組みといっても〔無制限なものではなく〕他の人びとの諸自由の同様〔に広範〕な制度枠組みと両立可能なものでなければならない。
第二原理
社会的・経済的不平等は、次の二条件を充たすように編成されなければならない。
(a) そうした不平等が各人の相対的利益になると無理なく予期しうること
かつ
(b) 全員に開かれている地位や職務に付帯する〔ものだけに不平等をとどめるべき〕こと
二つの原理は、第一原理が第二原理に先行するという逐次的順序に従って配列されなければならない。
この順序づけは、第一原理が保護する平等な基本的諸自由の侵害は、社会的・経済的な相対的利益の増大によって正当化されえない(あるいは補正されえない)ということを意味している。
これらの自由には中枢をなす適用範囲があり、その範囲内では他の基本的な自由と対立する場合にのみ、自由が制限・削減されうる。自由が相互に衝突するときには制限を受け入れるのであるから、基本的諸自由のどれひとつとして絶対的なものではない。