正義論
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『正義論』(せいぎろん、A Theory of Justice)は、1971年にジョン・ロールズにより著された政治哲学の著作。
1921年に生まれ、ハーバード大学で教鞭をとっていたロールズは本書で正義理論を展開することで、それまで停滞していた戦後の政治哲学の議論に貢献した。公民権運動やベトナム戦争、学生運動に特徴付けられるような社会正義に対する関心の高まりを背景とし、その後の社会についての構想や実践についての考察でしばしば参照されている。
正義論、以前の版と改訂版がある
原典は1971
日本語版
1979の底本は1975ドイツ版の元になった英語テキスト(原典版への批判に対して改訂を行ったもの)
2010の底本は1999英語版(他国版の変更分を反映したもの)
改版の経緯はキンドル版のプレビューで「改訂版への序文」を読むとそこに書かれている
1979はずっと廃盤、入手困難で価格が高騰してたっぽい
2010
813ページある
1979
2段組で482ページある
https://gyazo.com/d6962106f46cf208f6ac64c03c495d3e
ガイドマップ
「序文」にてジョン・ロールズ自身が、この本は膨大なのでココとココを読むとイイ、と「手引き」を紹介している
本理論の最も基本的な部分
本書は頁数だけではなく内容も膨大である。 そこで、読者の便宜のために簡単な手引きを紹介したい。
正義論についての基本的で直観的な考え方は、第一章の §1~4 に提示されている。ここから制度のための正義の二原理が論じられている第二章の §11~17 へ、そして原初状態 (original position) を説明している第三章全部へと読み進むことも一つの方法である。
なお第一章の §8 「優先順位の問題」をよく知らない方は、 この節に目を通すことも必要であろう。
次に、第四章の §33~35 の平等な自由と §39~40 の自由の優先性の意味およびカント的解釈を読めば、第三部の 概要が得られる。
ここまででおよそ三分の一に当り、本理論の最も基本的な部分を構成している。
第一部 第一章 §1~4
正義論についての基本的で直観的な考え方
1 正義の役割
2 正義の主題
3 正義の理論の中心理念
4 原初状態と正当化
第一部 第二章 §11~17
制度のための正義の二原理
11 正義の二原理
12 第二原理の複数の解釈
13 デモクラティックな平等と格差原理
14 公正な機会均等と純粋な手続き上の正義
15 予期の基礎としての社会的基本財
16 関連する社会的地位
17 平等を求める傾向
第一部 第三章 全部
原初状態 (original position)
20 正義の諸構想の擁護論の性質
21 複数の選択候補の提示
22 正義の情況
2つの条件がある
「人間の協働を可能かつ必要にする客観的・客体的な情況」
「協働の諸主体、すなわち一致協力している人々に関する側面に相当する、主観的・主体的な情況」
「(客観的な情況のううちの)〈適度な希少性〉という条件と(主観的な情況のうちの)〈利害関心の衝突〉という条件を強調する」
23 正の概念の形式的諸制約
一般的( general )、普遍的( universal )、公示性( publicity )、最終性( finality )
24 無知のヴェール
「定言命法の手続き上の基準が定義される仕方と、カントがそれを利用する仕方の両方を見れば、それがわかる」 25 当事者たちの合理性
「互いの利害に関心を持たないこと」と「無知のベール」という2つの想定の組み合わせ
26 正義の二原理にいたる推論
マキシミン・ルール
最大の最小値
ウィリアム・ボーモル『経済分析と OR 』
27 平均効用原理にいたる推論
2つの効用原理
古典的な原理(総効用の最大化)
功利主義との関係
平均効用原理
効用とは欲求の充足のこと
28 平均原理にまつわるいくつかの難点
29 正義の二原理を支持するいくつかの主要根拠
30 古典的功利主義、不偏性、そして厚意
古典的功利主義は正義の二原理、平均原理とは異なる起源を持つ
古典的見解における〈不偏・公平で共感能力のある観察者〉という概念の直感的基礎
第一部 第一章 §8
優先順位の問題
8 優先順序の問題
理解するのに §5~§7 を読む必要があった
結局その次の §9 も読んだ
第一章は全部読むべき
第二部 第四章 §33~35
平等な自由
33 良心の自由の平等
これもその前の §30~§32 を読んだ方が良かった
そして §32 にはアイザイア・バーリンの自由の概念が出てくる
34 寛容および共通の利益
35 不寛容派に対する寛容
第二部 第四章 §39~40
39 自由の優先権の定義
40 <公正としての正義>に関するカント的解釈
正義論を誤解なく理解するために
しかしながら、第三部を考慮しないと正義論を誤解するおそれがある。特に第七章の §66~67 の道徳的価値、自尊心、および関連諸概念、第八章の §77 の平等の基盤、第九章の §78~79 の自律と社会連合 (social union) §82 の自由の優先順位、 §85~86 の自我の統一および適合性の諸節を強調したい。これらの節を加えても、まだ半分に遠く及ばない。
第三部 第七章 §66~67
道徳的価値、自尊心、および関連諸概念
66 善の定義を人びとに適用する
67 自尊、卓越および恥辱
第三部 第八章 §77
平等の基盤
77 平等の基礎
第三部 第九章 §78~79
自律と社会連合 (social union)
78 自律と客観性
79 社会連合という理念
第三部 第九章 §82
自由の優先順位
82 自由の優先権の諸根拠
第三部 第九章 §85~86
自我の統一 および 適合性の諸節
85 自我の統一性
86 正義感覚の善
補足
各節の見出しと各章の前文、そして索引などが本書の内容の方向を示している。筆者は長々とした方法論的な議論を避けたということを述べておく以外に、このことについて注釈を加えること余分であるように思う。 §9 では道徳論の本質について、§4 と §84 では正当化について簡単な考察を試みた。また、「善」の意味について §62 に短い余談を記した。
第一部 第一章 §9
道徳論の本質について
9 道徳理論に関するいくつかの所見
第一部 第一章 §4
正当化について簡単な考察
4 原初状態と正当化
第三部 第九章 §84
正当化について簡単な考察
84 選択の一方法としての快楽主義
第三部 第七章 §62
「善」の意味について
62 意味に関する覚え書き
時に方法論的注釈を述べたり、本論から外れたりしたところもあるが、大部分は正義の実質理論を樹立するように努めた。他の理論との比較や対照、また時おりその批判、特に功利主義に対する批判を行なったが、この比較対照・批判はこの目的に対する手段なのである。
本書の基礎的部分に第四章から第八章の大半を含めなかったからといって、これらの章が末梢的あるいは単なる適用であるというわけではない。それよりむしろ正義論の重要な試練は、その理論が広範囲のさまざまな問題にわたるわれわれの慎重な判断に、 どれくらいうまく秩序とシステムを導入できるかということにある。したがって、これらの章の話題は取り上げられる必要があったのであり、その結論は、順次、提示された説を修正することになる。しかしこの点については、読者は自由に好みに応じて、関心の強い問題を考察してほしい。
基礎的部分に第四章から第八章の大半を含めなかった
第二部 諸制度
第四章 平等な自由
第五章 分配上の取り分
第六章 義務と責務
第三部 諸目的
第七章 合理性としての善さ
第八章 正義感覚
読者は自由に好みに応じて、関心の強い問題を考察するべし
目次
序文
第一部 理論
第一章 公正としての正義
1 正義の役割
2 正義の主題
3 正義の理論の中心理念
4 原初状態と正当化
5 古典的功利主義
6 付随する複数の相違点
7 直観主義
8 優先順序の問題
9 道徳理論に関するいくつかの所見
第二章 正義の諸原理
10 諸制度と形式上の正義
11 正義の二原理
12 第二原理の複数の解釈
13 デモクラティックな平等と格差原理
14 公正な機会均等と純粋な手続き上の正義
15 予期の基礎としての社会的基本財
16 関連する社会的地位
17 平等を求める傾向
18 個人に関する原理―公正の原理
19 個人に関する原理―自然本性的な義務
第三章 原初状態
20 正義の諸構想の擁護論の性質
21 複数の選択候補の提示
22 正義の情況
23 正の概念の形式的諸制約
24 無知のヴェール
25 当事者たちの合理性
26 正義の二原理にいたる推論
27 平均効用原理にいたる推論
28 平均原理にまつわるいくつかの難点
29 正義の二原理を支持するいくつかの主要根拠
30 古典的功利主義、不偏性、そして厚意
第二部 諸制度
第四章 平等な自由
31 四段階の系列
32 自由の概念
33 良心の自由の平等
34 寛容および共通の利益
35 不寛容派に対する寛容
36 政治的正義と憲法
37 参加原理に対する諸制限
38 法の支配
39 自由の優先権の定義
40 <公正としての正義>に関するカント的解釈
第五章 分配上の取り分
41 政治経済学における正義の概念
42 経済システムに関する若干の所見
43 分配的正義の後ろ盾となる諸制度
44 世代間の正義の問題
45 時間選好
46 優先権に関する追加的なケース
47 正義の諸指針
48 正統な予期と道徳上の功績
49 混成構想との比較
50 卓越性原理
第六章 義務と責務
51 自然本性的な義務の原理の擁護論
52 公正の原理の擁護論
53 正義にもとる法を遵守する義務
54 多数決ルールの位置づけ
55 市民的不服従の定義
56 良心的拒否の定義
57 市民的不服従の正当化
58 良心的拒否の正当化
59 市民的不服従の役割
第三部 諸目的
第七章 合理性としての善さ
60 善の理論の必要性
61 いっそう単純な事例に即した善の定義
62 意味に関する覚え書き
63 人生計画に即した善の定義
64 熟慮に基づく合理性
65 アリストテレス的原理
66 善の定義を人びとに適用する
67 自尊、卓越および恥辱
68 正と善との間のいくつかの相違点
第八章 正義感覚
69 秩序だった社会という概念
70 権威の道徳性
71 連合体の道徳性
72 原理の道徳性
73 道徳的情操の特徴
74 道徳的態度と自然本性的態度との結びつき
75 道徳心理学の原理
76 相対的安定性の問題
77 平等の基礎
第九章 正義の善
78 自律と客観性
79 社会連合という理念
80 嫉みの問題
81 嫉みと平等
82 自由の優先権の諸根拠
83 幸福と有力な人生目的
84 選択の一方法としての快楽主義
85 自我の統一性
86 正義感覚の善
87 正当化に関する結語