トランプ氏が今も大統領ならプーチン氏を止められたか
トランプ氏が今も大統領ならプーチン氏を止められたか
――ロシアによるウクライナ侵攻から米国が学ぶべき最大の教訓は何でしょうか。
米国と北大西洋条約機構(NATO)がロシアを抑止できなかったと認める必要があります。いまになって制裁や援助をしているだけでは不十分。ウクライナが粉砕されようとしているのだから、ロシア軍が国境を越える2月24日以前が重要でした。もっと真剣にロシアを抑止する努力をしていれば、このような事態は避けられたはずです。
2008年8月にロシアがジョージアに侵攻した後、我々はほぼ何もしませんでした。14年にロシアが初めてウクライナに侵攻した後も、ほとんど何もしなかった。(抑止力は)時間をかけて積み上げていくものなのです。
――いまトランプ氏が大統領だったら、ウクライナ侵攻は阻止できたとの指摘もあります。
それは間違いです。(トランプ政権下で侵攻しなかったのは)彼を恐れていたからではなく、目的を達成するための最も安上がりな方法を探していたからです。
もしトランプ氏が再選し、NATO脱退に動いていたら、ロシアの侵攻はより容易になっていた。20年の大統領選が終わり、再選したトランプ氏に政治的な制約がなくなるのを、プーチン氏は待つ覚悟だったのでしょう。
遠藤乾 (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
考えさせられるのは、「もしトランプ氏が再選し、NATO脱退に動いていたら、ロシアの侵攻はより容易になっていた。20年の大統領選が終わり、再選したトランプ氏に政治的な制約がなくなるのを、プーチン氏は待つ覚悟だった」というくだり。ボルトン回顧録のなかでもトランプのNATO首脳会議出席の下りが一番記憶に残っている。側近として、言動にわなわなし、いかに脱退という愚行を防ぐか腐心するボルトン。だから、トランプ再選とNATO脱退(それを待つプーチン)というシナリオがリアルなのだろう。そうなってきたとき、プーチンが何をしていたのかという反実仮想は、NATO批判、バイデン批判をする前に、一度立ち止まってしておいたほうが良いように思う。