2024-02-15のセッションより
私と赤い圓筒形は、橋を渡り終へ、對岸に辿り著く。
振り返ると、重さが掛らなく成った橋がゆっくりと透明な狀態から半透明な狀態に戾って行く。
ランタンの御蔭で橋を渡る事が出來た。
===此處迄前囘===
橋を渡った側にも線路が眞っ直ぐに延びてゐる。
南に向ってゐる。
周圍は夜である。
私は、左手に、黃色く光る圓筒形を納めた青い金屬で出來たランタンを持ってゐる。
赤い圓筒形が後ろを付いて來てゐる。
綠色の服を著てゐる。
懷に綠色のレンズを持ってゐる。
左手には紫色の水が染み込んでゐる。
夜の線路に沿って南に向って進んで行く。
周りは赤い砂原である。
砂原の中に赤い砂利が盛られてゐて、其の上に線路が敷かれてゐる。
其の上をジャリジャリと步いて行く。
黃色い圓筒の光で道を照らし乍ら進んで行く。
赤い圓筒形は後ろを付いて來る。
周りはすっかり夜で、見た事の無い星が光ってゐる。
月は無い。
私が延々と步いてゐると、或る時、私が前に足を出すのに合せて左手側の星がスッスッと右に向って動くのが判る。
時閒が經過してゐるのだらうか。
私がスタスタスタと前に向って步くと、左手の星もスッスッスッと右に向って動く。
左手の方に昴の樣に列なった五つの星が、スッスッスッと南中すると、其處で星は動きを止める。
其處からは、パララックスの樣に、私が步くのに合せて星團がスッスッスッと大きく成って近付いて來る。
星團は天から私の方にどんどん近付いて來て、遂には五つの大きな光る球體或いは圓盤の樣に成って、私に眩しい光を投げ掛けて來る。
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綠のフード付きローブを著た私が五つの光る球體に照らされて眩しがってゐる樣子の圖。
私は餘りに眩し過ぎて、其れ以上前に進めなく成る。
其處に於て、問ひが發せられる。
星:「汝は花園に至る者にや?」
應へ無くては成らない。
私:「花園に向ふ者です。」
何故『至る者』と應へなかったのだらうか。
再び問はれて了ふ。
星:「花園に向ふ者は花園に至る者か?」
私:「私は花園に至りたい者、花園に至らんとする者です。」
復たしても問はれて了ふ。
星:「花園に至らんとする者は、花園に至る者か?」
何故素直に花園に至る者ですと言へなかったのだらうか。
私は、花園に至りたいと思ってゐるが、だからと言って必ずしも花園に至れるとは限らないと思ってゐるのだった。
私の心裡を先讀みして更に問はれて了ふ。
星:「花園に至るか判らない者は、花園に至る者か?」
私は、『花園に至るか判らない者は、花園に至るか判らない者なのだ。』と云ふ事を覺知する。
私は、應へ直す事にする。
私:「私は花園に至る者です。」
星:「花園に至る者は、花園に至る者である。」
私は、意を決して星の光に目を開き乍ら、前に向って進む。
すると愈々星の圓盤は大きく成って近付き、光も強まる。
次第に五つの圓盤は互ひに重なり合って一つの大きな光の球を成す。
球の中に足を踏み入れると、顏を炭酸水に突っ込んだ樣なシュワシュワとした刺戟感が感ぜられる。
眩しくて何も見えない。
暫くすると、西から柔らかな風が吹いた樣な氣がして、視界に景色がゆっくりと明らかに成る。
何時の閒にか晝に成ってゐる。
赤い砂原の前方に線路の終點があり、其の先には青々と茂る植物の垣根が見える。