2023-03-19のセッションより
外界からの影響は、不完全の身體と五色の精神を通じて橘榛名の結晶に齎されるが、此れは黑い影と成って橘榛名の結晶を缺き、結晶は三日月型を成してゐる。結晶と精神の相互作用の内容によって、此の影の大きさが大きく成ったり小さく成ったりする。
影が結晶した橘榛名を覆い盡す時、世界は破滅する。
影を成るべく少なく留める樣に、相互作用せねば成らない。
此の實驗は、現在も繼續してゐる。しかし、實驗は長らく放置されてゐた爲、此の影は今や今にも結晶を覆ひ盡さうとしてゐる。
===此處迄前回===
私は紫色の手で有線リモコンのダイヤルを囘した。
21枚目のスライドが映寫せられる事を期待したが、其處には何も映らなかった。
明りが消えた樣に、眞っ暗なスクリーンが其處にあった。
映寫機の狀態を確認しようと試みた。
「どうしましたか。大丈夫ですか。」と映寫機に尋ねた。
映寫機は電球が消燈してをり、電源が切れて了った樣だった。
映寫機は『映寫を續けて草臥れて了ったので、少し休ませて下さい。』と返答した。
映寫機に觸れると、映寫機は迚も熱く成ってゐた。
映寫機を冷まして上げるのに、煽ぐ爲の物は無いかと部屋を見廻した。
打ち棄てられた椅子と一緒に、書類や書類挾みが散亂してゐたので、色褪せた厚紙で出來た書類挾みを取りに行った。
左手の紫色の水で付著した埃を拂ってから、書類挾みで映寫機を煽いで冷ました。
冷めるのには暫く掛った。
冷めて來たので、「續きを映せさうですか。」と、映寫機に尋ねた。
映寫機は『二章を映す準備が出來ました。』と返答した。
映寫機の後ろの電源スイッチが何時の閒にかoffに成ってゐたので、改めて電源を入れ直した。
電球が復た燈り、冷却ファンが囘り始めた。
そして21枚目のスライドが示されてゐた。
白い背景に、細く大きな黑い明朝體で、
システム
橘榛名
の
運用の記錄
と書かれてゐた。
ダイヤルを囘す。
22枚目のスライド。
https://gyazo.com/b9ac55d56d6484ed060a44acaa84c546
20枚目のスライドに示されたヴァーチュアルな橘榛名の現界システムを運用し始める前のプロトタイプの試用に就ての圖。
左は精神乃至精神を驅動する物。中央は不完全の身體。右は世界をそれぞれ表す。
一行目は、ヴァーチュアルな橘榛名の現界システムの可能性を偶然示した段階。
不完全の身體のランダムな出力の中から、世界側がパターンを見出だし、不完全な身體と遊離した驅動者を觀測した。
二行目は、現界システム形成の爲の前實驗の一つ目。
不完全の身體の意圖的な出力を通じて穢れた貓性を帶びた驅動者の像を世界に形成させる實驗。
世界側が獸性の驅動者を觀測して交信出來る事が示された。
三行目は、現界システム形成の爲の前實驗の二つ目。
不完全の身體の意圖的な出力を通じて清い貓性を帶びた驅動者の像を世界に形成させる實驗。
或る程度巧く行ったが中斷された。
四行目は、中斷された實驗を受けて、より改良された實驗。
清い貓性を帶びた驅動者の像が或る程度安定して運用出來る事が示された。